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万年を生きる平和主義ヴァンパイア、いつの間にか世界最強に ~俺が魔王軍四天王で新たな始祖? 誰と間違ってんの?~  作者: 葉月双
アマラントスの花束を君に

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最終話 愛すべきガキども


 俺はいつものように安楽椅子でユラユラと揺れながら、ワインを楽しんでいた。

 窓から光が差し込んでいて、外がよく晴れているのが分かる。

 俺とサビナは1年ごとに地下帝国に住んだり村に住んだりしている。

 今は俺の村のターン。


 今日は平和な一日になりそうだとか思ったのだけど。

 突然、窓を破って二つの影が部屋に侵入してきた。

 俺は驚いてワインを落としそうになった。

 あっぶねぇ!

 高いやつなんだぞこれ!


「手を上げろ腑抜けヴァンパイアめ!」

「あげろー!」


 子供二人が体術の構えを取って真面目な表情で言った。

 この子たちは双子なので、顔がまったく同じである。

 見た目の年齢は人間だと12歳ぐらいだろうか。

 初めて会った時のエレノアと同じような感じだ。

 手を上げろと言った方が女の子で、もう片方は男の子。


「いやいやいや! 特殊部隊ゴッコはやっちゃダメってママ言ってたよな!?」


 俺はワインをサイドテーブルに置いてから言った。


「うるさいっ! ママなんて怖くないぞ!」

「ないぞー!」


 子供たちは二人とも黒髪なのだが、毛先がピンクのグラデーションになっている。

 俺とサビナの髪色が合体したみたいだ。


「おいおい、この前もママにお尻叩かれて泣いてただろお前ら」


 俺はやれやれと肩を竦めた。


「私のお尻は不死身!」

「僕だって!」


 二人はイキってそう言ったけど、ちょっとビクッとなったのを俺は見逃さなかった。

 ちなみに俺とサビナの子はこの二人だけ。

 エレノアはバンバン増やして欲しいと言ったけど、俺たちは断った。


 理由は単純で、ヴァンパイアのガキが増えたら俺たち心労で死ぬんじゃね? ってことで無闇に増やさないことにしたのだ。

 英断だったと思う。

 なんせこの双子だけでも大変なのだから。

 と、サビナが【ショートゲート】で出現。


「こらぁ! 窓が割れる音がしたよ!?」


 サビナが腰に手を当てて怒った風に言った。


「まずいぞ弟! 撤収だ!」

「撤収!」


 子供たちは【ゲート】を使用。


「帰ったらお尻千叩きだからね!!」とサビナ。


 子供たちが【ゲート】で消える寸前にビクッとなったのが見えた。

 ちなみに千叩きと言っても、魔神の手を振る速度なら割とすぐに終わる。

 サビナも100年ほど前に無事、神の領域に到達した。


「くっ……逃げ足の速さは誰に似たの……」


 サビナが呆れ顔で呟いた。

 たぶんエレノアじゃね?

 あいつも逃げるの早いからなぁ。


「被害が窓だけで済んで良かったと思おうぜ」


 あいつら前に羽々斬と叢雲を振り回して(振り回されて?)無人島を消し飛ばしたことあるからなぁ。


「……アルト君、あの子たちが割った窓の数、覚えてる?」


 覚えてるわけねぇぇぇぇ!!

 人生で食べたパンの枚数ぐらい分からねぇ!!


「……たくさん、だな」

「そう、たくさん、なの」


 サビナがやれやれと首を振った。


「ま、まぁ、ほら、俺が直すから!」


 俺は割れた窓を修理するために立ち上がる。

 最近の俺の趣味は大工なんだよなぁ。

 村中の家を俺の手で建て直したのは10年前だったか?


「ねぇアルト君、あの子たち、どこ行ったと思う?」

「うーん、エレノアのとこかケイオスのとこだろ」


 ケイオスって実は子供には優しいんだよな。

 エレノアも小さい頃仲が良かったような気がする。

 今も交流があるとかないとか。


「じゃあ、しばらく帰らないね!」


 サビナが俺をジッと見詰める。


「ああ、そうだ……」


 俺の言葉が終わる前に、サビナは神速で俺の服を脱がした。

 うーん、なんだかんだ今日も平和だな!


◇


 600歳になったエレノアの見た目は、人間でいう15歳ぐらいにまで成長していた。

 しかし胸は少しも大きくならなかった。


「新しい勇者が生まれ、魔物狩りをしていると聞いたが?」


 エレノアが淡々と言った。

 ここは魔王城の会議室。

 エレノアはすでに魔王軍四天王の一人となっていた。

 もちろんアルトの後任である。

 そのアルトはというと、魔王軍特別最高顧問とかいう謎の役職に就いている。


「きゃは♪ 今回の勇者は~、当時のニナちゃん並みの強さって噂よぉ♪」


 妖精女王のビビが無駄に身体を揺らしながら言った。

 その時に大きな胸がブルンブルンと揺れ、エレノアは少しイラっとした。


「ニナをぶつけるのもありだね」


 相変わらずロザンナの参謀をやっているアスタロトが真面目に言った。


「えー? あたし?」


 魔王軍四天王の座に収まっているニナが面倒くさそうに言った。

 アルトの眷属となったニナは、20歳前後の姿から変わっていない。

 ちなみに、ニナはジョージの後任だ。

 ジョージはヴァンパイアほど寿命が長くないので、年老いて普通に引退した。

 そして今は魔物たちに戦い方を教えている。


「いいんじゃない? 元勇者対現勇者」ロザンナが薄く笑う。「まぁニナの圧勝だろうけど」


 ちなみに魔王軍は特に領土を増やしたりはしていない。

 ロザンナがもうあまり世界征服に興味を示さなくなったからだ。

 しかし人間たちとは相容れず、今も紛争が絶えない。

 ドラゴンたちとも折り合いが悪く、こちらもいつ暴発するか分からない。


「ロロはどう思う?」とエレノア。


「……ロロは、応援するー」


 自分の尻尾を噛みながらロロが気の抜けた声で言った。

 と、双子が会議室にゲートアウトしたので、みんなそっちに注目した。


「クイーン! ママが怒る!」

「助けてクイーン!」


 双子たちがエレノアに駆け寄って、両サイドから抱き着く。


「落ち着け、アルビー、ルトナ」


 エレノアが双子の頭を撫でながら言った。

 ちなみにお姉ちゃんの方がアルビーで、弟の方がルトナだ。


「ノアちゃんってなぜか子供に人気あるよね」


 ニナが昔のことを思い出しながら言った。

 ちなみにエレノアは今でもアルトの村の子供たちと仲良しだ。


「黙れ眷属の分際で!」

「分際で!」


 アルビーとルトナがニナを指さして偉そうに言った。


「よせ二人とも!」エレノアが強い口調で言う。「敬意を払え。ニナは魔王軍四天王の一人だ」


「ご、ごめんなさいクイーン」

「ごめんなさい……」


 双子がしゅんとなって謝った。


「謝るのはわたくしにではないだろう?」


 エレノアが言うと、双子がニナに視線を向ける。


「ごめんなさい……ニナさん」

「ごめんなさい……」

「いいよ、ノアちゃんの子供の頃と比べたらマシな方だし」

「お、おい! わたくしは昔から礼儀正しかったぞ!」


 ニナが笑いながら言って、エレノアが焦って言い返した。


「そういえば似たような光景を……」とアスタロト。

「300年ぐらい前に見たよん♪」とビビ。


「それであんたたち」ロザンナが鋭い声で言う。「会議に乱入するなってぼく前に言ったよね?」


 ロザンナが魔力を放出しながら威圧したので、双子が半泣きになってエレノアの椅子の後ろに隠れた。


「魔王様、この子たちはまだ子供です」エレノアが言う。「威圧は許してあげてください」


 双子はお漏らしする寸前だった。

 双子は300歳当時のエレノアより強いけど、ロザンナにはまだまだ及ばない。


「……今のセリフもなんかデジャブなんだけど……」


 ロザンナが苦笑いしながら言った。

 ロロが突然席を立って、トテトテ走って双子に近寄る。

 そして自分の尻尾を差し出す。


「食べて……落ち着くから」


 ロロはとっても真剣に言った。


「え、遠慮するかな私は……」

「僕も……」


 双子はビクビクしながら断った。


「……そう……ロロの尻尾、美味しいのに……」


 そう言って、ロロはまたトテトテ走って自分の席に戻った。

 こんな感じのロロだけど、今この場にいる者たちの中で一番強く、そして一番長生きだったりする。


「それじゃあ、勇者をどうするか話を続けようか」とアスタロト。


「その子たちをぶつけたら面白いんじゃなーい?」


 きゃるるるん、って感じでビビが言った。


「いやいや待て」エレノアが言う。「アルト様もサビナも平和主義だぞ? この子たちを使ったらわたくしが怒られる可能性が……」


 この300年で、エレノアはアルトとサビナの性格をちゃんと理解していた。


「勇者とか面白そう! 私やる!」

「僕もやりたい!」


 双子がノリノリで言った。


「……実にヴァンパイアらしいじゃない?」ロザンナが肩を竦めた。「いいよ。責任はエレノアが取るからぶつけてみよう」


「そ、そんなぁぁぁぁ!!」


 エレノアの嘆きが会議室に反響した。


(やっぱりわたくし、ロザンナ嫌いだぁぁぁ! 早くヴァンパイアだけの万年王国を作って魔王軍なんか出て行ってやるぅぅ! サビナに子供を催促しよう! そうしよう!)




これでアルトは完結となります!

最後までお付き合いありがとうございました!


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すごく面白いしキャラも可愛いのでぜひ買ってみてください!

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― 新着の感想 ―
とても楽しくて、あっとゆーまに読んでしまいました。
完結おめでとうございます。面白かったです。
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