8話 俺、どうやら魔神だったようです
これは仮の話だけど。
そう、仮の話だけども。
俺がマジで魔神だったとするじゃん?
だとすると、俺の今までの言動って……。
色々と思い出して顔から火が出そうになった。
そもそもロキやヘイムダルのことを自称神って言ってめちゃバカにしてたぁぁぁぁ!!
あと、そりゃ俺が魔神なら魔王軍四天王でも最強よ!
当然だろ神なんだから!
てかなんで神の俺が四天王やってんだよ!
おかしいだろ!
神ならもう俗世から離れて隠居してろよ!
ってしてたわぁぁぁぁ!!
もうこれ本当、神っぽいわぁ!
俺結構、神っぽいわぁ!
でもそうなると、いつ神になったの俺?
それ気付かないとかあるぅ!?
いやあるか?
俺ってば基本、引きこもりだし、比べる相手いないし……。
あああああ、どうであれ、マジで俺がいつの間にか魔神になっていたのなら、色々と思い出して恥ずかしいんだが!?
穴があったら引きこもりたいのだが!?
あ、あるぞ穴!
サビナだ!
違う、サビナの穴だと変な言葉になっちまうけど、そうじゃなくて、サビナの地下帝国!
あれまさに穴じゃね!?
もう『新婚だから一緒に過ごしたい』って言ってほとぼりが冷めるまで地下帝国に引きこもるか!
1000年ぐらい!
「おいこいつマジでどうしたんじゃ?」
ヘイムダルが悶えている俺を見て、心配そうに言った。
「さぁ、あんたが眩しすぎるんじゃねぇか?」ケイオスがテキトーに言う。「こいつヴァンパイアだから、明るいのが苦手なんだろ」
「ん? それはすまんかった……って、んなわけあるかい!」
ヘイムダルがケイオスの脇腹に手刀を叩き込んで突っ込んだ。
「うおおお、痛ぇぇぇぇ!!」
ケイオスが普通に呻いた。
「す、すまん、本気で入れてしもーた」
「いや、躱せなかった俺様が悪い……気にするな」とケイオス。
「そうか。では忘れよう」
ヘイムダルがケロッと言った。
俺はコホン、と咳払いして姿勢を正す。
「ちょっと真面目に聞きたいんだが、俺ってどれぐらい強いと思う?」
「ふむ……」
ヘイムダルが俺の足先を見て、それから頭まで視線を動かす。
それから空を指さして言う。
「魔力砲を空に向けて撃ってみぃ」
「本気で?」
「いや、1割程度でよかろう」
「分かった」
俺は素直に1割程度の魔力砲を空に放った。
俺の魔力砲は雲を突き抜けてどこまで飛んでいき、やがて見えなくなった。
「どうだ?」
俺はヘイムダルを見下ろした。
ヘイムダルはまん丸くした目をパチパチしている。
可愛いなおい。
「……妾は1割の力で、と言ったのじゃが?」
「今の1割だぞ」
「…………」
ヘイムダルが沈黙した。
なんだよ?
えっと、今までの俺なら『神から見たら弱すぎて呆れているのか?』と思考するけど……。
いや、やっぱり弱いのか?
神にしては弱いのか、それとも俺が魔神ってのは誤診みたいなもんで、やっぱ神じゃなかったとか?
「ま、まぁ、まぁまぁかな……。妾ほどでは……ないが、神の中では……まぁまぁかのぉ……」
ヘイムダルが目を逸らしながら言った。
まぁまぁなんだ!?
マジの女神から見て、神の中でまぁまぁってことは!
じゃあ俺やっぱ神ってこと!?
◇
こいつやべぇぇぇぇ!
ヘイムダルは心の中で叫んでいた。
さっきアルトが撃った1割の魔力砲は、今のヘイムダルの全力と遜色ないレベルだった。
だが素直にそう言ってしまったら、長らく生き残っている神としての威厳が!
最後の女神としての威厳が!
損なわれてしまう!
そう思ったヘイムダルは「まぁまぁ」と評価した。
幸いにも、アルトが自分の実力をちゃんと理解していない様子だったので。
そもそも自らの力を知っていたら「どのぐらい強いか」なんて質問はしないけれど。
(ぶっちゃけロキより強いじゃろこいつ! てか、力が戻った妾でも敵わんぞ! なんでこんなやべぇ魔神が生まれておるのじゃぁあ!?)
◇
そっかぁ、俺、実は魔神だったのか……。
衝撃の事実すぎて、受け止めが難しいな……。
あれもしかして、グリムの奴も本当にグリムリーパーだったとか……。
いやまさかな……さすがにあいつは……違う……よね?
自信が、ないっ!
落ち着け。
とりあえず驕ってはいけない。
俺は魔神になったとはいえ、きっと平均的な魔神だ。
まぁ平均的な魔神でも地上の生命体より強いだろうけど。
……じゃあ何か?
エレノアってマジで普通の視点ならめっちゃ強いの?
俺が神視点で見てたから弱いと思ってただけ?
待って待って、勇者であるニナは!?
勇者と神なら普通に神の方が強いよな?
てことはだ、俺ってニナより強いんじゃねぇの!?
つまり、俺は自分より弱い存在に「護衛して」って言ってたの!?
……ダメだ、やっぱり穴(地下帝国)に入ろう。
「……帰るか……」
俺が呟くと、ヘイムダルが「え?」という表情をした。
なんだ?
「も、もう少しいても、いいのじゃぞ?」ヘイムダルがもじもじしながら言う。「妾も別に……やることないし……いや、女神として、その、回復中で暇……というわけではないのじゃが、じゃが……」
これ絶対暇なやつぅぅぅ!!
「俺様らのこと、生意気な邪神竜とか生意気な魔神とか言ってなかったか?」とケイオス。
「そりゃお主らが、いきなり暴れていたからであって! 妾を守る神兵も根こそぎぶっ壊しおってからに!」
あの鎧、神兵って名前なのか。
「あ、そうだ!」
俺は小さく手を叩いた。
その音で、ヘイムダル、ケイオス、エクスが俺に視線を向けた。
「ヘイムダルさん、アイギスの盾持ってんじゃねぇの?」
「うむ。妾とともにあるが?」
「見せてくれよ!」
そう、アイギスの盾はヘイムダルが使ってたんだよ。
子供の頃に見たことある。
「まぁ、構わんぞ。ではついてまいれ!」
ヘイムダルが踵を返し、神殿へと向けて歩き始める。
俺はそれに続き、ケイオスとエクスも続いた。
サタナキアは……まだ気絶しているし放置しておくか。
神殿の中に入って通路を進み、ヘイムダルがとある部屋の前で立ち止まる。
「ここじゃ」
そう言って、ヘイムダルが扉を開ける。
その部屋は少女の部屋って感じの部屋で、壁と天井にロキの姿絵が飾ってあった。
「ここじゃなかったぁぁぁ!!」
ヘイムダルが慌てて扉を閉めた。
なんか、ロキの絵にハートとか書いてたけど、お前ら実は仲良しなんじゃ……。
「さっきの絵、ロキじゃねぇか」とケイオス。
「みみみ、見間違いじゃ! ってお主、ロキを知っておるのか? 奴は妾の手で永遠に葬ったはずじゃが?」
「生きてるぞ」と俺。
「生きてる!?」ヘイムダルが驚いて少し跳ねた。「ほほう! あやつめ! まだ生きておったか! ゴキブリ並みにしぶとい女じゃな! ふはははは! 回復したら早速退治しに行かねば!!」
なんかめっちゃ嬉しそうだなおい!
殺し合いするほど仲がいいってやつか!?
「それでアイギスは?」と俺。
「うむ、こっちじゃ」
ヘイムダルが隣の部屋を開けた。
そこは宝物庫のようで、色々なアイテムが仕舞ってあった。
でもだいたいは俺の家の宝物庫にもあるような品だな。
そんな中、壁にかけられたアイギスの盾だけがキラキラと輝いて見えた。
本当に光っているわけじゃなくて、いい品だからそう見えたって意味。
「こいつが最強の盾ってやつか」ケイオスが言う。「ちょいと殴ってみてもいいか?」
「好きにせい」
ヘイムダルが言ったその瞬間、ケイオスが全力でアイギスの盾をぶん殴った。
かなり大きな音と衝撃波が起こったけど、アイギスの盾には傷一つ付いていない。
さすが最強の盾!
「我が輩も斬っていいか?」
言いながら、エクスが剣に変身。
いや、剣の姿が本当だから、剣に戻ったて言う方がいいのか?
どっちでもいいか!
「よかろう」
ヘイムダルが頷き、エクスがアイギスの盾に斬りかかる。
なんだかカーン、といういい感じの音が響いた。
しかし盾には傷一つ付いていない。
「我が輩の刃が欠けるかと思ったぁぁぁぁ!」
エクスがブルブルっと震えながら言った。
「よぉし、俺もやってみようかな!」
俺がルンルンで言った。
そうすると、
「お主はダメ! 絶対ダメ!」
ヘイムダルが俺の前で短い手を振って俺を阻止する。
「なんで俺はダメなんだよ!?」
「お主が殴ったら壊れるかもしれんじゃろうが!」
「ええええ!?」
「神の攻撃を連続で受けたらいくらアイギスの盾でも! 壊れるかもしれんという意味じゃ!」
「そ、そうか……じゃあ日を改めるか」
邪神竜のケイオス、神剣のエクス、そして魔神の俺。
確かに壊れるかも……?
とはいえ神話の盾なので、どうせ壊れても回復するだろうけど、持ち主が嫌がってるからなぁ。
◇
(お前、神の中でも異常な強さじゃからな? たぶんアイギスの盾がぶっ壊れる)
ヘイムダルは心の中でそう言った。
――あとがき――
アルトも真実に気づきましたので、ボチボチ完結すると思います!




