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万年を生きる平和主義ヴァンパイア、いつの間にか世界最強に ~俺が魔王軍四天王で新たな始祖? 誰と間違ってんの?~  作者: 葉月双
アマラントスの花束を君に

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7話 アルト、真実に気づきそう


 頂上を目指して飛んでいる最中、俺はアマラントスを見落とさないように山肌を見ていたのだけど、それらしい赤色は見えなかった。

 そしてアマラントスを発見できないまま雲を突き抜け頂上に到達。

 頂上は窪んでいて、そこが湖のようになっている。


 いわゆるカルデラっていう地形だと思う。

 確かカルデラは火山噴火でできるへこみだったと思うけど、この山のカルデラもそうなのかは分からない。

 なんせ神々が関わっているので、単にへこませて水を入れただけの可能性も。


「神殿があるな」とケイオス。


 その神殿は湖の中心に建てられていて、なんというか、ザ・神殿って見た目の神殿だ。


「行ってみようぜ」


 そう言って、ケイオスがさっさと神殿へと飛ぶ。

 俺たちもあとに続く。

 神殿の周囲は綺麗な庭になっていて、無数のアマラントスが咲き誇っていた。


 俺は複数のアマラントスを根っこから引き抜いて異次元ポケットに仕舞う。

 ドライアドたちの話では、アマラントスは食べられるらしい。

 なので、庭で生産しようかなって。


「花なんてどうすんだ? 嬢ちゃんにでも贈るのか?」


 ケイオスが不思議そうな表情で言った。


「確かに贈り物だけど、エレノアにじゃねぇよ」

「……そうか……嬢ちゃん……頑張れ……」


 ケイオスは苦い表情を浮かべていた。

 一体、エレノアに何を頑張って欲しいのか!


「とりあえずお前たち」エクスが言う。「強そうな鎧たちが寄ってきているが?」


 その言葉で神殿の入口を見ると、剣を持った蒼い鎧たちが俺たちの方へと歩いていた。

 俺はサッと二歩後退した。

 任せたぜケイオスとエクス!


「ほう、こいつが神の残滓か」ケイオスがニヤッと笑う。「確かに神の力を感じるぜ。もっとも、戦力は半神程度だがな!」


 ケイオスは言い終わったと同時に鎧たちの方へと突っ込んだ。

 本当に好戦的だなおい!

 でも半神の力なんてあるとは思えないけど!?

 この鎧がそれぞれサビナぐらい強いとか有り得ないと思うんだが!?

 その証拠に、鎧たちはケイオスの蹴りやパンチで崩壊していた。


「ふむ」エクスがケイオスを見ながら呟く。「戦力だけならすでに神の領域か……」


 誰が!?


「ぼくちん超怖い!」


 サタナキアが俺の背中へと回った。

 いやいやいやいや!

 俺の背中に隠れるの無理だから!

 お前の方がデカいから!


「情けないことを言ってないで」エクスがサタナキアを持ち上げて、そしてケイオスと鎧たちの方へと放り投げた。「お前も戦わんかい!!」


「いやああああああああ!!」


 サタナキアは乙女みたいな悲鳴を上げた。

 そして鎧の一体に空中でパシンと叩かれて、こっちに飛んで戻って来た。

 着地すら!

 させてもらえなかっただと!?


 サタナキアがこっちの地面をゴロゴロと転がった。

 そしてそのまま気を失う。

 よ、弱すぎんだろ!


 いくらなんでもお前!

 弱すぎんだろ!

 さすがのエクスも「……マジか」と呟いている。

 俺も言いたいよ、「マジか!」って!


「ふはははははは! 悟ったぞぉぉぉぉ!!」


 突如ケイオスが叫び、その魔力が膨れ上がった。

 おおおおお!?

 なんだなんだ!?


 空気が震え、そして次に訪れたのは静寂だった。

 ケイオスはもう魔力を放出していないし、鎧たちは動かなかった。

 ケイオスはとっても落ち着いた様子で鎧に近寄り、デコピンをした。

 そうすると、鎧が砕けた。


 なんかケイオスが強くなったぁぁぁぁぁ!!

 マジで何か悟ったの!?

 ニルヴァーナ……ではなさそうだけど、あれか、武道的な何かを悟ったと?


「はははははははは! これが! 神の領域か!」


 ケイオスは笑いながら残りの鎧たちを粉砕した。

 確かにここは神の領域だけど!

 俺たち転移門潜ってきたよな!?

 そんな分かり切ったことをどうして今更!?


「今、悟る要素あったか?」とエクスが首を傾げた。


 確かに、なんで悟ったんだ?

 転がるサタナキアを見て?


「くくくっ、最高の気分だぜアルト」


 オッサンが軽やかに俺の前へと移動した。


「よく分かんねぇけど、良かったな。おめでとう」


 俺は笑顔で言った。

 とりあえず祝福しとけばいいだろ。


「早速だが、一戦やろうや!」


 ケイオスが俺に殴り掛かる。


「なんでそうなるんだよ!」


 俺はその拳を躱したけど、確かにケイオスの攻撃速度は前に戦った時より遥かに速くなっている。

 本当に何か悟ってやがるぞこいつ!


「この状態でも! テメェにはまだ及ばねぇってのか!」


 言いながら、ケイオスが連続で攻撃を仕掛けてくる。

 俺はそれを受けたり躱したりした。


「おいオッサン、ちょっといい加減に……」


 とりあえずケイオスを殴ろうと思ったその時、神殿の入口が光り輝いた。

 エレノアがいたら灰になりそうなぐらい眩い光だった。

 さすがのケイオスも戦うのを止めて、神殿を振り返る。


 光が消えると、そこには幼女が立っていた!

 両手を腰にあてて、頬を膨らませている。

 え? なんで幼女?

 俺は頭が混乱した。


 ケイオスもそうだったようで、ポカンとしている。

 幼女の髪の毛はキラキラと輝くプラチナブロンドで、ウェーブがかかっている。

 瞳の色は金色で、顔立ちは可愛い系。


 同じ子供でもエレノアとは方向性が違っている。

 ちなみに見た目の年齢はエレノアより少し低そう。

 10歳とか11歳とか、そのぐらいか。


「妾の眠りを妨げるとは!」幼女がよく通る声で言う。「生意気な邪神竜と魔神めが!」


 すごく怒っているようだけど、声も顔も可愛らしい。

 てかなんか、この子、誰かに似てる気がするんだよなぁ、誰だっけなぁ。


「は……はははははは!」突然ケイオスが笑う。「本物の神じゃねぇか! しかも善神か!?」


「いくら妾が回復の途中といえど、貴様ら如きは一瞬で消せるのだぞ?」


 幼女がすごく偉そうな感じで言った。

 やっぱなんか可愛い。


「そいつは言いすぎだぜテメェ」ケイオスが言う。「だがかなり上位の神だな? その状態で今の俺様と互角か……」


「おいエクス」俺は小さな声で言う。「あの子マジの神なの?」


「うむ。間違いなく神だ」とエクスが頷く。


「ほう」幼女が一瞬でエクスの前に移動した。「神剣エクスカリバーか。なぜ邪悪な存在とともにある?」


「我が輩の目的は世界の王の選定。そこに正邪は関係ない」


「そういえばそうだったか」幼女が小さく肩を竦めた。「そしてこの魔神……」


 幼女は俺を見つめた。

 俺のこと魔神だと思ってんの?

 なんで?


「どこかで見た覚えが……」


 うーん、と幼女が首を傾げる。


「いや実は俺もお前……じゃなくて、あなたに見覚えがある……」


 神様を怒らせてもいいことはないので、下手に出ておこう!

 そして幼女はハッと目を見開き、俺を指さす。


「ああああああああ! ロキと仲が良かったクソガキ軍団の一人じゃああああああああ!!」


 ロキの名前が出て、俺はようやくこの子が誰なのか察した。

 ロキと相打ちになった自称光の女神にして風紀委員!


「ヘイムダルさんか!?」


 まぁ俺の知ってるヘイムダルはもっとお……姉さんなのだが!

 えっと、あれか、ロキと相打ちになって力を失って回復中ってことか?

 生きてたのか!


 俺はそこで一つの考えが頭をよぎった。

 え?

 あれ?

 ちょっと待って。


 マジの神なの?

 自称じゃなくて?

 うーん?

 あれ?


 じゃあロキもマジで邪神なのか?

 うーーーーーん?

 あっれぇぇ?

 俺、ロキより強い自信あるんだけど……。


 えっとぉぉぉ?

 そういや、ロザンナが時々俺のことを「魔神」って言ってたなぁ。

 他にも言われた覚えがあるなぁ。

 最近だとドライアドたちに。


 いやまさかな……。

 まさか俺……本当に魔神だったりするの?

 万年を生きた平和主義の平均的なヴァンパイアの俺が……?

 いつの間にか世界最強にって?


 いやいやいや、落ち着け俺、深呼吸だ、深呼吸をしてよく考えろ!

 これ勘違いだったらめちゃ恥ずかしいぞ!


「おい、どうしたのじゃ?」


 幼女ヘイムダルが心配そうに俺を見上げた。

 なんか変な汗出てきたぞぉぉ。


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