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万年を生きる平和主義ヴァンパイア、いつの間にか世界最強に ~俺が魔王軍四天王で新たな始祖? 誰と間違ってんの?~  作者: 葉月双
アマラントスの花束を君に

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6話 そわそわサビナ


 俺はオッサンたちを引き連れて天元の森を訪れた。

 なぜって?

 天元の森の片隅に、オリュンポス山への転移門があるらしいから。


「どうしてぼくちんまで……」


 ヤギ頭のサタナキアがうなだれた様子で言った。

 俺もお前は誘ってねぇけどな!


「うるせぇ、神々の残滓と戦える機会なんて滅多にねぇぞ。堪能しろ」


 ケイオスがサタナキアの足を蹴っ飛ばし、サタナキアが半泣きになった。


「おいオッサン、あんまいじめるなよ」俺が言う。「そいつ見た目はアレだけど、めっちゃ弱いんだぞ? なんなら人魚すら支配できないレベルだぞ」


 俺はすでにサタナキアのことを思い出していた。

 自分より弱い女を支配できるけど、エレノアさえ支配できない弱者男性だ。


「神々か、懐かしい」


 エクスがオッサンの姿のまま遠くを見るように言った。

 とりあえず俺たちは転移門の方へと歩いている。

 こっちにあるってドライアドたちに聞いたのだ。


 ちなみに、今はドライアドたちの気配すら感じない。

 ああ、分かってる、あいつらはオッサンが嫌いなのだ。

 俺はオッサンを三人も引き連れているので、たぶんドライアドたちは森の奥に隠れているのだろう。


 いやしかし酷い絵面だ……。

 恰幅のいい王様みたいな服を着たオッサンと、上半身裸でマッチョなオッサンが二人。

 しかも一人は頭がヤギだもんなぁ。


 ニナと行動している時は酷い絵面だとは思わなかったので、ニナって実は割と華やかだったんだなぁ。

 あとエレノアも。


「楽しみだぜ」


 ケイオスがニヤニヤと嬉しそうに言った。

 俺がオリュンポス山に同行しないかと言ったら、オッサンは最初キョトンとしていた。

 でも神々の残滓が宝を守っているかもって話をしたら、即オッケーしたんだよ。

 ケイオスの目的は宝ではなく、それを守っている者と戦うことだ。


 うーん、やっぱ戦闘狂!

 そんなことを考えていると、古びた転移門が見えたので、俺たちは立ち止まった。

 転移門というのは、ある特定の場所を繋ぐ門のこと。


「ほぉ、こいつはすげぇ」ケイオスが言う。「神の力をビンビン感じるぜ」


 マジで!?

 普通の転移門とそんな差があるように見えないけど!?

 いやそもそも転移門自体が珍しく、実は俺もあんま知らないんだよな。


 だってどこかに行きたければ魔法の【ゲート】を使えばいいわけで。

 知らない場所なら別に飛んでいけばいいし、急ぐなら【アクティブサーチ】からの【ショートゲート】で行ってもいい。


「これが転移門か……ぼくちん初めて見た」とサタナキア。


 だよなぁ!

 珍しいもんな!

 てか、こいつ一人称が『ぼくちん』なの割とキモイんだが!?

 その見た目で『ぼくちん』って!


「そういやエクスはオリュンポスに行ったことあるのか?」と俺。

「存在は知っているが、吾が輩も行ったことはない」とエクス。


「そうか」


 意外と謎に包まれてるな、オリュンポス。

 まぁ神話の時代から存在する場所だしな。


「いいから行ってみようぜ」


 ケイオスがさっさと一人で転移門を潜った。

 俺たちもケイオスを追うように転移門を潜る。


◇


 その頃のサビナ。


「そわそわそわそわそわそわ!」


 地下帝国の自分の部屋でグルグル歩き回りながらそう呟いていた。


「あの、サビナ様、ご用は何でしょう?」


 サビナの眷属であるマイルズが少し引いた様子で言った。


「ああ、マイルズ……エレノアはアルト君を説得できたと思う?」

「さ、さぁ、どうでしょうか」

「あああ! 不安だよぉ! わたしは不安だよぉ!」

「お、落ち着いてくださいサビナ様」

「だってマイルズ、わたし、告白もしてないのにフラれる可能性があるんだけど!?」


 グルグル、グルグルと部屋を歩き回るサビナ。


「あの、サビナ様、でしたら告白してはいかがです?」

「え?」

「告白せずにフラれるのが嫌なら……」

「告白してフラれろって……そう言うの?」


 ウルッとサビナが瞳に涙を溜める。


「違います違います。どうして悪い方に考えるのでしょう? アルト様はサビナ様を嫌っていませんし、たぶん普通に大丈夫だと思うのですが……」


「本当に!? 本当にそう思う!?」

「近い近い、サビナ様ちょっと離れて」


 サビナは神速でマイルズに詰め寄ったので、マイルズはすごく驚いた。


「あ、ごめん……」


 サビナがススっと後退。

 コホン、とマイルズが咳払い。


「とにかく、一度告白してみてはいかがです?」

「でもわたし……万年片思い女だよ……?」

「何を心配してるんですか!?」

「うぅ……世界中探しても、万年片思いしてるのって……わたしだけだよぉ……」

「でしょうね!」


 他にいてたまるか、とマイルズは思った。


「……キモくない?」

「キモくないですよ! 大丈夫です! 自信を持ってください!」

「……告白って……どうすればいいの?」

「気持ちをぶつけるのが良いかと」

「アルト君抱いてぇぇぇぇ!!」


 言いながらサビナはベッドにダイブし、アルトっぽい抱き枕を抱きしめてゴロゴロと転がり始めた。


「それはダメです! サビナ様それはダメ! 確かにサビナ様の気持ちでしょうけど! それはダメ!」


 マイルズが慌てて言った。

 なんでこの人、万年も生きてて恋愛経験値がゼロなんだ、と思いながら。


「む、難しいよマイルズ……」


 サビナはゴロゴロするのを止めて言った。


「他の気持ちもあるでしょう?」

「どうして万年も抱いてくれないのぉぉぉぉぉ!!」

「ダメですダメです! 問い詰めちゃダメですサビナ様! 本当にそう思っているのでしょうけど、それは聞いちゃダメです!」


 アルト様きっとドン引きです、とマイルズは思った。


「ぐす……一体どうすれば……」


 サビナが半泣きで言った。


「ヴァンパイアって普通どうするんですか?」

「気に入った相手を押し倒して既成事実を作って、結婚を宣言する」


 うーん、実にヴァンパイアらしい、とマイルズは思った。


「でもアルト君を押し倒すのは無理だし……」

「強いですからね……アルト様の方が」

「てゆーか、恥ずかしくて無理……」


 サビナが頬を染めながら言った。

 うーん、実にヴァンパイアらしくない、とマイルズは思った。


(反社のアルト様に惚れるだけあって、サビナ様も十分に反社! あ、でも人間社会なら普通! だから二人とも領地に人間を住まわせているのか!)


◇


 転移門を抜けた場所は、巨大な山の麓だった。


「マジかよ、てっぺんが見えねぇぞおい」とケイオス。


 俺もその巨大な山を見上げたが、上の方は雲を突き抜けているようだ。

 てか、どこだよここ。

 この世界にこんなデカい山は存在してない。

 亜空間なのか?

 それとも別世界……だったりするのか?


「裾野の果てすら見えんが?」


 エクスがキョロキョロしながら言った。


「えーっと、確か聞いた話では」俺が言う。「オリュンポスの裾野は600キロに及ぶとか及ばないとか」


「600キロ!?」


 エクスが仰天して言った。


「高さは2万7千メートルって言ってたかな……ドライアドたちが」


 そんな山が本当にあるわけねぇ、って俺は思ってた。

 うん、2700メートルの間違いだろ、とか思ってた。

 疑ってごめんねドライアドたち!


「それにしても、心地よい……」とサタナキア。


 確かにこの場所は天元の森と同質の心地よさがある。

 草木が生い茂っているが、なぜか動物の気配はない。

 空を見上げると、太陽が少し遠いように見える。


 あれ?

 マジで太陽遠くね?

 しかも光がいつもより白っぽい。


 気温も低めか?

 凍えるほどじゃねぇけど。

 いや、周囲に魔力が満ちているからあまり感じないだけか?

 マジでどこだよここ。


「ちっ、神々の住処って感じだぜ」とケイオス。

「ここは別世界か?」とエクス。


 俺も同じことを思っていた。


「だろうな」ケイオスが言う。「ちっ、有り余る神々の力で作ったんだろう」


「いや、神々といえどそこまでの力はない」エクスが言う。「これほど巨大な別世界は作れん。故に、元々あった別世界を住処にしたのだろう」


「どっちでもいいさ」俺が言う。「とりあえず上を目指すか」


 俺が浮くと、3人のオッサンも宙に浮いた。

 よし、アマラントスを見落とさないように上に行ってみよう。


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