第8章 手紙②
母の手紙を見つけたあと、私は治験について調べ始めた。
とはいえ、私ひとりですべてを調べ上げることはできなかった。
公開されている論文や過去の記事を読み漁り、断片的な情報を集めるのが精いっぱいだった。
それでも、いくつか分かったことがある。
私は母の仏壇の前にいた。
線香に火をつけ、香炉に供える。
静かに手を合わせ、母の遺影を見つめた。
「……お母さん」
声に出してみても、返事が返ってくるはずもない。
しばらくの間、私は何も考えず、ただ母の写真を見つめていた。
やがて、私はゆっくりと目を閉じた。
母の死について、今、私が知っていること。
①治験を行なった場所は大和大学病院
②治験の責任者は鈴木奏。
そして過去の記事などを調べてわかったこと。
③大和大学病院で新しく発見された成分=ネフタソリタミン成分
④こちらの発見者も鈴木奏。
現時点で、私が把握しているのは、この四つだけだった。
母の手紙に書かれていた内容と、自分で調べた情報を照らし合わせても、それ以上のことは分からなかった。
治験で何が行われる予定だったのか。
そして母の死と、ネフタソリタミンには、本当に何の関係もなかったのだろうか。
考えれば考えるほど、分からないことばかりだった。
もちろん、母が事故で亡くなったという事実を、今さら覆せる証拠があるわけではない。
それでも、どうしても確かめずにはいられなかった。
私は再び目を開け、母の遺影を見つめた。
「お母さん、ごめんね……」
自然と、そんな言葉が口からこぼれた。
母が信頼していた人を疑うことになるかもしれない。
母が希望を託した研究に、疑いの目を向けることになるかもしれない。
それでも――。
「私、やっぱり真実が知りたい」
私は、しばらく母の写真を見続けた。




