第20章 疑惑
「……なな姉!?」
花子ちゃんが、彼女を見てつぶやいた。
「花子ちゃん、知り合いかい?」
俺が尋ねると、花子ちゃんは戸惑った様子で答えた。
「近所のお姉さんで、綾瀬奈々さんって言います。なな姉が浩太を……!?」
花子ちゃんは、信じられないといった表情で奈々さんを見つめていた。
そんなとき、綾瀬奈々さんに付き添っていた男性が、申し訳なさそうに口を開いた。
「すみません。彼女、雨の中を傘も差さずに歩いていたんです。かなり濡れてしまっているので、先にタオルか何かを貸していただけませんか。それと、温かい飲み物もいただけるとありがたいんですが……」
「わかりました。すぐに用意します」
そう答え、俺は受付にいた吉川さんに声をかけた。
「吉川さん、タオルと温かい飲み物を用意してもらえますか?」
「はい、わかりました」
吉川さんが奥へ向かうのを見送り、俺は改めて奈々さんに向き直った。
「私、亀山と申します。先ほど受付の者から話を聞いたのですが、佐藤浩太君の死に関わっているというのは事実ですか?」
そう尋ねると、奈々さんは言葉を発することなく、小さくうなずいた。
その様子を見て、花子ちゃんはさらに動揺したようだった。
ほどなくして、吉川さんがタオルと、紙コップに入った温かいお茶を持ってきてくれた。
「お待たせしました。こちら、どうぞ」
「ありがとうございます」
俺はそれらを受け取り、奈々さんに差し出した。
「綾瀬さん、まずはこれで身体を拭いてください。風邪をひいてしまいますから」
「……ありがとうございます」
奈々さんはタオルを受け取ると、濡れた髪や顔をそっと拭き始めた。
俺は、その様子を静かに見守った。
この女性が、佐藤浩太君を死なせたというのか……?
今の段階では、まだ何もわからない。
とにかく、詳しい話を聞いてみなければ。
しばらくして、奈々さんがタオルで身体を拭き終えたのを見届けると、俺は静かに声をかけた。
「少しは落ち着きましたか? それでは、詳しいお話を別室で聞かせていただけますか。付き添いの方は、こちらでお待ちください」
そう言って、俺はロビーの長椅子へと手を向けた。
「わかりました」
男性はそう答えた。
「花子ちゃんはどうする? もう聞きたいことは聞けたし、帰ってもらっても構わないけど」
俺が尋ねると、奈々さんの姿を見つめながら答えた。
「ここで待っています」
「わかった」
きっと、奈々さんのことが心配なのだろう。
「では、綾瀬さん、こちらへどうぞ。お茶はそのままお持ちください」
奈々さんは小さくうなずき、紙コップを手にした。
俺は彼女を取調室へと案内した。
彼女を席につかせ、俺も向かいの席に座る。
綾瀬奈々さん。
その苗字には、覚えがある。
綾瀬……。
そう、10年前の事故死の被害者の名字。
俺は向かい側の椅子に座る彼女に視線を向けた。
俺は一度、手元の資料に目を落とした。
「お名前は、綾瀬……奈々さんですね?」
「……はい」
彼女は、消え入りそうな声で答えた。
「一つ、確認してもいいですか。もしかして、綾瀬みさえさんとはご関係がありますか?」
奈々さんは、わずかに顔を上げた。
「綾瀬みさえは……私の母です」
「……お母さん?」
思わず声が漏れた。
やはり、そうだったのか。
俺は少し驚いたものの、すぐに気持ちを切り替え、話を続けた。
「そうでしたか。わかりました。では、早速本題に入らせていただきます」
俺は彼女の目を見つめた。
「佐藤浩太君を死に追いやった、とおっしゃっていましたね。具体的に、何があったのか教えていただけますか?」
奈々さんは、すぐには答えなかった。
うつむいたまま、両手をぎゅっと握りしめている。
その指先には、強い力がこもっていた。
やがて、意を決したように顔を上げた。
「まずは、母のことと……今の私がどうしてここにいるのか、その経緯から説明させてください。そのほうが、わかりやすいと思います」
「わかりました。では、お願いします」
「ありがとうございます」
奈々さんは小さく頭を下げると、ゆっくりと話し始めた。
「少し、時間をさかのぼります」
部屋の片隅では、書記官が彼女の言葉を一つひとつ記録している。
俺は余計な口を挟まず、静かに耳を傾けた。
「先ほどもお話ししたとおり、綾瀬みさえは私の母です。私が高校一年生の頃、母は駅の階段から転落して亡くなりました」
淡々とした口調だった。
しかし、その声の奥には、長い年月を経ても消えることのない悲しみがにじんでいるように感じられた。
「その日、母は大和大学病院の治験に参加するため、家を出ました。そしてその日、私は母が死んだと知らせを受けました。だから母の死と治験に何か関係があるのではないかと考えました」
「それで、警察にも相談したんですね?」
「はい。母の死について、もっと詳しく調べてほしいとお願いしました。でも、当時の状況から事故死と判断されてしまって……」
彼女は一度、言葉を切った。
「ただ私も、少しずつ母の死を受け入れて、前を向かなければと思うようになったんです。まだ完全に気持ちの整理がついたわけではありませんでしたが……」
そこで、奈々さんは視線を落とした。
「そんなある日、母の手紙を見つけました」
「手紙?」
「はい。その手紙は……『私は死んでしまうかもしれない』という内容から始まっていたんです」
俺は思わず眉をひそめた。
自分の死を予感させるような手紙。
それが、母親の遺品から見つかったというのか。
奈々さんは、当時の記憶をたどるように話を続けた。
「手紙を見つけてから、私は大和大学病院について調べ始めました。そして、鈴木奏という医院長がいて、彼は母の治験の責任者でもあることがわかりました」
鈴木奏。現在の大和大学病院の理事長だ。
俺は頭の中で情報を整理しながら、彼女の話を聞き続けた。
「さらに調べていくうちに、鈴木医院長が麻酔に関する研究をしていたことも知りました。そして、その研究の過程で、偶然ネフタソリタミンという成分を発見したということも……」
この話は柳田室長より聞いた内容と相違はない。
引き続き綾瀬さんの話を聞く。
「私は思ったんです。もしかしたら、この成分と母の死には何か関係があるんじゃないかって」
奈々さんは、まっすぐ前を見つめた。
「それから、私は必死に勉強しました。母の死の真相を知りたい。ただ、その一心でした。そして、ようやく大和大学病院の研究室に入ることができたんです」
「大和大学病院の研究室に……?」
「はい。鈴木医院長――いえ、現在の理事長のそばにいれば、何か手掛かりがつかめるんじゃないかと思ったんです」
母親の死の真相を突き止めるために、そこまでしたというのか。
当時の彼女の執念は、並大抵のものではなかったのだろう。
「最初は新人ということもあって、周りの方々と連携を取るのに精いっぱいでした。でも、少しずつ仕事にも慣れ、信頼してもらえるようになってからは、自分の裁量で動けることも増えました。そこで、仕事の合間を縫って、ネフタソリタミンの研究も進めるようになったんです」
彼女は、かすかに苦笑した。
「でも結局、この成分に関して、思うような成果を出すことはできませんでした。いくら研究を続けても、母の死につながるような手がかりは見つからなかったんです」
奈々さんは、両手を見つめながら続けた。
「そしていつしか、母の死の真相を追うのをやめ、日々の研究に集中しようと考えを改めるようになりました。せっかく医療に携わる仕事に就けたのだから、その発展に貢献すべきだと思ったのです。」
彼女は顔を上げた。
「なるほど……」
俺は静かにうなずいた。
「つらい経験をされながらも、前を向いて歩こうとされたんですね。立派な考えだと思います」
彼女の生き方を否定するつもりなど、俺にはなかった。
母親を突然失い、その死の真相を追い求め、それでも最後には人を救うために努力しようとした。
簡単にできることではないだろう。
そんなことを考えていると、奈々さんが再び口を開いた。
「そんなふうに考えを改め始めた頃でした。疲れた様子の私を見た同僚、先ほど私をここに連れてきてくれた彼、林君から促されたんです。息抜きをしたらどうかと。その提案に乗り、休息をとろうとしたとき、浩太君が私の家を訪ねてきました」
「浩太君が!?」
思わず声が大きくなった。
「はい」
奈々さんはうなずいた。
「私はもともと、浩太君や花子ちゃんとは幼い頃からの知り合いだったんです。二人とも、私にとっては弟や妹のような存在でした」
「なるほど。そういう関係だったんですね。それで、浩太君は何をしに来たんですか?」
「花子ちゃんのことで悩んでいるようでした。だから、話を聞いてあげたんです」
奈々さんは、少し寂しそうに微笑んだ。
「話を聞いているうちに、浩太君が花子ちゃんのことを好きだというのがわかりました。でも、花子ちゃんには一二三君という彼氏ができてしまった。それでも二人のことが大切だから、どうすればいいのかわからない……そんなふうに浩太君は悩んでいました」
俺は黙ってうなずいた。
浩太君が花子ちゃんに思いを寄せていたことは、すでにわかっている。
しかし、彼女の口から当時の様子を聞くと、改めて浩太君の苦悩が伝わってくるようだった。
「それで、ちょうど休暇を取ろうと思っていたこともあって、浩太君を元気づけてあげようと、一緒に出かけることにしたんです。少しでも気晴らしになればと思って……」
「それで、浩太君は元気を取り戻したんですか?」
「はい。少しは気持ちの整理ができたみたいでした」
彼女は、ほんの一瞬だけ表情を和らげた。
「そして、浩太君は決心したんです。花子ちゃんに告白しようって。きちんと自分の気持ちを伝えて、それで振られたら、前に進もうって」
「そうでしたか……」
「そして結果は……やっぱり、振られてしまったようでした」
奈々さんの声が、再び沈んだ。
「その直後だったと思います。私が浩太君と会ったのは」
浩太君と花子ちゃんが分かれた直後、ということだな。
俺は静かに続きを聞く。
「私は研究室の室長から頼まれていた仕事で帰りが遅くなってしまって……。あの公園のそばを通りかかったとき、浩太君を見かけたんです」
俺は事件当夜の状況を頭の中で思い描く。
「私は浩太君に歩み寄り声をかけました。そして彼は花子ちゃんに告白して振られたといいました。だから私は『よく頑張ったね』ってほめてあげました。自分の気持ちを伝えるのは勇気がいることだから」
奈々さんは、膝の上で両手を握り直した。
「それから、一緒に帰ろうと誘いました。でも、浩太君は、もう少しここにいたいと言ったんです」
「それで、どうしたんですか?」
「まだ若い子を、そのまま一人で残して帰るのも心配でした。どうしたら元気づけてあげられるだろう……そう考えていたとき、ふと思いついたんです」
彼女は、そこで一度言葉を止めた。
何かを思い出すように、ほんの少し視線を落とす。
「自分が持っていた漢方薬を、飲ませてあげようって」
「……漢方薬?」
俺は思わず聞き返した。
「はい。日頃から私が愛用していた、市販の漢方薬です。同じ研究室の方から、疲労回復に効くと勧められたものでした。気持ちを落ち着かせる効果もあると聞いていたので……」
奈々さんの声が、かすかに震えた。
「失恋したばかりの浩太君にも、少しは役に立つんじゃないかと思ったんです。それで、勧めてしまいました」
彼女は唇をかみしめた。
「まさか……あんなことになるなんて、思ってもいませんでした」
俺は、思考を巡らせた。
市販の漢方薬。
その中に、ネフタソリタミン成分が含まれていたのだろうか。
いや、そんなことがあり得るのか?
そもそも、ネフタソリタミン成分は、これまでの研究論文でも有効な薬理作用が確認されていないとされていたはずだ。
そんな成分を、わざわざ市販薬に配合する理由があるだろうか。
奈々さんは、うつむいたまま話を続けた。
「浩太君の様子がおかしくなり、次第に息をしなくなったことに、私は怖くなってしまったんです。どうしていいのかわからなくて……。結局、その場から逃げるように立ち去ってしまいました」
彼女の目から、再び涙がこぼれ落ちた。
「医療に携わる人間として、恥ずべき行為です。助けを呼ぶことだってできたはずなのに……。本当に、申し訳ありませんでした」
奈々さんは深くうなだれた。
その姿からは、自分のしでかしたことを悔やみ、責任を感じている様子が伝わってきた。
俺は、しばらく彼女を見つめていた。
まてよ、彼女がその場を立ち去ろうとしたとき、浩太君の息はもうなかったと証言している。
じゃ、あの数式は誰が書いたのか……!?
「綾瀬さん。お話はわかりました」
できるだけ穏やかな声で、俺は言った。
「確かに、浩太君が倒れた時点で救急車を呼んでいれば、助かった可能性はあったかもしれません」
「……はい」
「でも、いざというとき、人間は必ずしも冷静に判断できるとは限りません」
俺は言葉を選びながら、静かに続けた。
「恐怖で頭が真っ白になって、どうすればいいのかわからなくなってしまうことだってあります。あなたがあの場から立ち去ってしまったことは、決して軽い問題ではありません。ただ、今のお話を聞く限り、あなたが最初から浩太君を傷つけようとしていたとは思えません」
俺は一度言葉を切り、彼女の様子をうかがった。
「もちろん、あなたがしたことの責任については、これからきちんと調べていく必要があります。でも、今ここで、あなたを一方的に責めるつもりはありません」
「うっ……ううっ……」
奈々さんは手で顔を覆い、こらえきれなくなったように声を漏らした。
それでも、俺にはまだ確認しなければならないことがあった。
彼女が落ち着くのを少し待ってから、俺は静かに尋ねた。
「綾瀬さん。二つ、聞かせてください」
「……はい」
「【50+50+20+3】という数式に心当たりはありますか?」
「……えと、なんのことでしょう?」
奈々さんは涙ぐみながら戸惑った様子で答えた。
知らない…か。
彼女の顔を見る限り嘘を言ってるようには思えなかった。
「すみません、いまの問いは忘れてください。ではもう一つ。あなたは、浩太君が亡くなった原因は何だと思っていますか?」
奈々さんは、涙をぬぐいながら答えた。
「たぶん……私が飲ませた漢方薬が、浩太君の体質に合わなかったんだと思います。アレルギーのような反応を起こしてしまったのかもしれません……」
「そうですか……」
その可能性は、確かにあるのかもしれない。
でも、それよりも、疑わしい浩太君が亡くなった死因は他の要因。
浩太君の遺体から検出された、あの成分。
ネフタソリタミン。
もし、奈々さんが飲ませた漢方薬に含まれていたのだとしたら、事件の見方は大きく変わってくる。
俺は、核心に触れる質問を口にした。
「ちなみに、その漢方薬に、ネフタソリタミン成分は含まれていましたか?」
「え……?」
奈々さんは、不思議そうに顔を上げた。
「あの漢方薬に、ですか?」
「はい」
奈々さんは、記憶をたどるように、しばらく考え込んだ。
「最初に購入したとき、配合されている成分は確認しました。でも、その成分は入っていなかったはずです」
彼女は首を横に振った。
「そもそも、ネフタソリタミンなんて、まだ有効性も確認されていない成分。そんなものを薬に配合するなんて、普通に考えたら……」
そこまで言いかけたところで、奈々さんの表情が変わった。
「……え?」
何かに気づいたように、目を見開く。
「ま、まさか……!」
俺は、彼女の目を見つめた。
「はい。浩太君の遺体から、ネフタソリタミン成分が検出されています」
「えっ……!?」
奈々さんの顔から、みるみる血の気が引いていった。
俺は、さらに言葉を続けた。
「そして、綾瀬さん。あなたはまだ知らないようなので、お伝えしておきます。本来、捜査上の情報を一般の方にお話しすることはできません。しかし、今回の件については、あなたにも知っておいていただく必要があると判断しました」
奈々さんは、息をのんだまま俺を見つめていた。
「実はあなたのお母さま、綾瀬みさえさんからも、そのネフタソリタミン成分が検出されてるんです」
「ええっ!!!」
奈々さんは、驚きのあまり声を上げた。
その顔から、さらに血の気が引いていく。
先ほどまで涙に濡れていた目が、大きく見開かれていた。
しかし、不思議なことに、彼女はもう泣いていなかった。
何かを必死に考えるように、視線を宙に向けている。
やがて、その表情が少しずつ変化していった。
悲しみに暮れていた女性の顔から、研究者・医師として、目の前の事実を分析しようとする顔へと。
奈々さんは、ゆっくりと口を開いた。
「……待ってください」
その声には、先ほどまでとは違う力が宿っていた。
「もう一度、確認させてください。浩太君の遺体と母の遺体からは、ネフタソリタミンが検出されたんですね?」
「ええ。間違いありません」
俺が答えると、彼女はしばらく黙り込んだ。
母親の死と、浩太君の死。
一見、何の関係もないように思えた二つの出来事が、同じ成分によって結びつこうとしている。
奈々さんの中でも、これまで別々だった何かが、少しずつつながり始めているのかもしれない。
やがて彼女は、何かを確かめるように、鋭い眼差しで俺を見つめた。
「すみません、刑事さん。こんな立場で、こんなお願いをするのはわがままだということは、十分わかっています。でも、どうしても確認しなければならないことができたんです」
奈々さんは一度言葉を切り、意を決したように続けた。
「一人で行こうなんて思っていません。お願いします。私を大和大学病院に連れて行ってくれませんか!」
その言葉に、俺はすぐには答えられなかった。
刑事として考えれば、彼女を自由に行動させることには慎重にならざるを得ない。
捜査上の問題もあるし、何より、彼女自身が事件に関わっている可能性も否定できない。
だが、母親の死と浩太君の死。
その二つを結びつける手掛かりが、大和大学病院にあるのだとしたら……。
彼女を連れて行くことが、事件の真相に近づくきっかけになるかもしれない。
俺はしばらく考えた末、ゆっくりと口を開いた。
「……わかりました。同行します。ただし、勝手な行動はしないでください。いいですね?」
奈々さんは、強くうなずいた。
「ちょ、亀山さん!?」
それまで黙ってやり取りを記録していた書記官が、思わず声を上げた。
「わかってるんですか? あなたがやろうとしていることは、警察官として到底許される行動じゃありませんよ!」
そんなことは、百も承知だった。
刑事として、こんな判断が許されるはずがない。後でどんな責任を問われることになるのかも、わかっている。
それでも――。
こうすることでしか、彼女は救われないかもしれない。
母親を亡くした十年前から、真相を追い求めてきた彼女。
その長い年月にわたる苦しみと、真実を知ろうとしてきた思いを、ここで途絶えさせるわけにはいかなかった。
「俺が責任を取る!」
俺はそう言い切ると、綾瀬さんの手を取り、取調室を後にした。
「綾瀬さん、会うのは鈴木理事長ですよね」
「はい!」
彼女は迷いなく答えた。
いろいろな情報が、今、一本の線となってつながり始めていた。
数式の謎は残ってるものの、その線をたどった先に浮かび上がる人物は、ただ一人。
――鈴木理事長。
十年前の事件と今回の事件。その二つの真相が、間もなく明らかになろうとしていた。




