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【第二章開幕】エンド・オブ・クロニクル 〜神話へと続く旅路〜【2000PV突破】  作者: 百瀬 三月
第二章 大会編

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2-1-3 試合直前

さっきの口論騒ぎを見届けると、一回戦開始が迫っていた。

そそくさと大会前の控え室までの道を辿る。


会場では選手の性別や人種によって合わせて色々と用意されている関係、ラヴェンツァとは別行動をすることになる。

それぞれ別れ道から、控え室へ向かう。


道中には、大会に参加するであろう他学術院(アカデミー)の生徒を数人見かけた。


一人は黒人でいかにもパワー系と言った風貌。

もう一人は華奢でテクニカル系のような高身長。

最後に小さくて奇襲を得意としそうな人まで。


様々な人が集まっていることを再確認した。

同時にこんな人たちと戦うのかというのも同時に感じる。


ガチャ。

控え室の扉を開ける。

空調が効いた部屋からは冷たい空気が流れ込んでくる。

だが、中には誰もいなかった。


空いているロッカーを一つ選び、荷物を中に入れた。

制服を脱ぎ、鞄から戦闘着を出して着替える。

そして、肝心の魂の武器(ソウルアーマメント)の顕現を確認する。


「ふっ……!」

いつもよりソウルの出力を高めた。

手のひらに意識を送ると、二刀が顕現した。

「よし……!」

異常なく顕現できたことに安心感を覚えた。

それを確認して、すぐに顕現を解いた。


なんとなく気が抜けて、座っている椅子に体重を預ける。

そして精神統一をするかのように目を閉じた。


大会出場への不安。

大勢の観客に見られながらの戦闘。


なにより——。

自分の中に潜む、異常な力。


あの日以降、考えないようにして生きてきたが、大会中は嫌でも意識せざるを得ない。

これがもし、大会中に出てしまったら。

これが原因で、対戦相手を傷つけてしまったら。


ラヴェンツァを負傷させてしまったら。

嫌な不安しか脳裏に浮かばない。

ネガティブな思考は良くないと思いつつも、自分に付き纏うこの力は向き合うしかな

い。

それは自分が一番わかっている。


「ああもう!」

別のことを考えようと、さっきまでの思考をクリアにする。

だが、控え室の誰もいない空気が逆に緊張を煽り、不安を増長させる。

ムッと感じて目を開けてしまった。


防音対策がされているのか、外にいた時の歓声や騒がしい音は聞こえない。

代わりに時計がカチカチと鳴っている。

その音を辿るように掛け時計に視線を送る。

一回戦開始まで残り五分を切っていた。


さっきの口論騒ぎとは一転、控え室の静寂が指先を震わせる。

それを鎮めるように拳をギュッと握った。

だが、それでも治る気配がない。

心臓の脈拍が速くなり、大会出場への実感が自然と湧いてくる。


一度、落ち着かせるために大きく息を吸う。

「すぅぅ……」

そして、大きく息を吐く。

「はぁぁ……」

少しは緊張がほぐれたような気がした。

気休め程度であっても、今の自分にとってはこれ以上ないリラックスだ。


そっと会場までの扉に手をかける。

ガチャ。

出た先は選手通路だった。

会場からの光が差し込み、無骨な床を照らしている。

選手通路からは、奥の観客席に座る無数の人が見える。


選手通路の側面には、ラヴェンツァが壁を背にして座っていた。

ドレスを地面につけて、どうにもらしくないように感じる。

どうやら、さっきの扉の音で彼女は気づいていたらしい。

「遅かったわね」

見向きもせずにこちらに声を掛けてきた。

そして彼女は立ち上がった。

ただ、いつものような強気な語気が感じられない。

「ごめんね」

謝罪が咄嗟に出てしまった。

これも緊張のせいだろうか。

「謝れなんて一言も言ってないわ」


その言葉に何て返せばいいかわからなくなってしまった。

もう一度謝罪をすると同じ言葉が返ってくるだろうし。

かといって何も言わないのは若干失礼なんじゃないのかと。


そんな考えを巡らせていると、彼女が目を合わせてくる。

それはどこか儚げに感じられた。

「……どう?緊張してる?」

普段はこんな問答はしないのに、急に来た質問で不意を突かれた。

素っ頓狂な顔を晒してしまったに違いない。

「ふふっ」

それを見て彼女が微笑んだ。

少しピリッとしていた場の空気が和らいだ気がした。


「当たり前だよ、今にも心臓が飛び出そうで」

思っていたより率直な答えが出た。

今までの魂絆選定セレクションや、訓練などでは感じられなかった緊張感が身体中を巡る。

それと同時に、高揚感もあるのかも知れない。

その二つの感覚があるのがどこか不思議に感じる。


彼女はそれを聞いて、天井を見上げた。

「奇遇ね、私も同じよ」

予想していなかった回答に一瞬たじろぐ。

彼女を信用しているからこその感情だろう。


なんでもできる。

なんでもやれる。

そんな彼女が緊張している状況。


それぐらい、彼女にとっては大事なことなのかもしれない。


彼女の言葉を聞いて、フッと笑いが溢れた。

「なんか意外かも」

それを見た彼女は、鼻に抜けていく苦笑が漏れていた。


「あのねぇ……」

彼女は頭を抱えていた。

「私も普通の人間だっての」


なんとなく見合って、二人の間には静寂が通る。

しかしその静寂はすぐに過ぎ去り、なぜか笑いが生まれた。

試合前の他愛もない光景が、今はなんだか心地よく感じた。

不思議と緊張が和らいでいった。


すると、選手通路に設置してあるスピーカーから声が聞こえてきた。

『次の試合に出る生徒、二名』

『キース・ラヴェント、ラヴェンツァ・ヴェイル』

『アリーナへと入場してください』

その声に、再び現実へと戻された。

ついに始まる実感が、体を震わせる。


「さぁ、行くわよ」

首を縦に振り、アリーナへと続くコンクリートに同時に足を踏み入れた。

固い地面が足裏に直で伝わってきた。


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