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【第一章】エンド・オブ・クロニクル 〜神話の世界に紡がれる、少年少女の叙事詩〜  作者: 百瀬 三月


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第二十六話 実践訓練

学長から出場打診を受けた翌日。

今日からはコンビでの実践訓練へと移行する。

ヴァンガード・フェスティバルに出る人たちは、通常講義をパスして訓練をすることになっている。

キースやラヴェンツァ、アリスやデイジーも例外ではない。


四人が訓練場へ向かう廊下を歩いている。

「講義受けなくていいってのは聞こえがいいんだけどさ…」

「それ以上に訓練しろってことだよな…」

「当たり前でしょ」

ラヴェンツァが前を向いたまま答えた。


「出るからには結果を出す」

「それだけよ」

「流石だなラヴェンツァ」

「正論すぎて何も言えないわ…」


「私は嬉しいけどね」

アリスが肩をすくめた。

「講義より体動かす方が性に合ってるし」

「デイジーは?」

「…まぁ」

「どっちでも」


「そっか」


訓練場の扉を開けると、空気が変わった。

広い。

天井が高く、床には魂の武器(ソウルアーマメント)で刻まれた無数の傷跡が残っている。

先客がいた。

上級生だろうか。

一年生のフロアでは見たことがない。


二人組のコンビが、こちらを一瞥した。


小柄な女子だった。

オレンジのツインテールが、肩の上で揺れている。

その隣に立つのは、紫の髪の女子。

うさぎの髪飾りが、妙に目を引いた。

二人とも、まだ何もしていない。

それでも纏う空気が、明らかに違った。

目つき、体制、何もかもが違う。


「一年生?」

オレンジの女子が口を開いた。

値踏みするような目だった。

「そうです」

ラヴェンツァが静かに答えた。

「ヴァンガード・フェスティバルの出場組ね」

「聞いてるよ」

「一年生で出るなんて、なかなか度胸あるね」


「私はシャオ・ミン」

「二年よ」

紫の髪の女子が続いた。

「ルカ・J・セイン」

「同じく二年」

短く、それだけだった。


バルガが訓練場に入ってきた。

「お、揃ってるな」

全員を見回した。

「さて、早速だが」

「今日からはフェスティバルに向けた実践訓練だ」

「もちろん、魂の武器(ソウルアーマメント)の使用も認められている」


「しかし、そのまま実践形式でやりあうと確実に死傷者が出る」

「そんな時に、こんな装備をフェスティバル期間では使っている」

その場にいる六人の手に、バルガから直接手渡された。

腰につけるベルトのような物だ。

中心には光り輝く石がはまっており、自ら光を発している。

「これは、救急生命防御装置」

「簡潔に言うと、生命の危機に迫る攻撃を受けても、一度だけその攻撃を無効化するといった代物だ」

「動力とか詳しい説明は…」

「まぁ、魂刻工学の先生にでも聞いてくれ」

「とりあえず、それを腰につけてくれ」

全員が静かにそれを装着した。


「さて、準備は整ったようだな」

「皆も知っている通り、今日はフェスティバルの試合に向けた対面実践訓練だ」


「早速だが、今日の相手は決まっている」

「まずは、キースとラヴェンツァ」

「シャオとルカのコンビと当たってもらおう」


「っと、その前に」

「この設備について説明しよう」

バルガがそう言うと、手元にあるボタンを押した。


ウィーン。

機械の起動音のような音が空間に走ると、突然部屋の形状が変わった。

木々や川がある森のような場所に変化した。

「すげ…!」

思わず声を漏らす。

「平面で戦っても意味がない」

「だからこそ、この設備で戦ってもらう」

「どのフィールドが出るかは完全ランダムだ」

「コンビで合流し、戦略を練るのも手。相棒を信じ、戦いに行くのもありだ」


「制限時間は15分」

「これくらい時間があれば雌雄も決するはずだ」

「勝敗条件は、どちらかのコンビの救急生命防御装置が両方とも作動した時点で、そのコンビの負けだ」

「制限時間内に決まらなかった場合、俺が互いのダメージの具合で審査する」


「質問は?」

誰も口を開かなかった。

「よし」

「じゃあ、互いに散れ」

全員が均等に散っていった。


木々の間から、シャオが見えている。

軽く首を回している。

メリケンサックが、両手に顕現した。

オレンジのオーラが、じわりと滲み出る。

「楽しみにしてたよ」

「飛び級の一年生がどんなもんか、ね」


ルカも木々の間から見えていた。

しかし、その場から動く気配はない。

ダガーを一本、指先でくるりと回している。

薄いピンクのオーラが、静かに広がっていた。

一言も発しない。

ただ、こちらを見ていた。


ラヴェンツァがメイスを顕現させた。

紫のオーラが滲み出る。

「キース」

「うん」

二刀を顕現させた。

赤いオーラが、森の中に広がった。


「始めっ!」


次の瞬間、その場が別の場面へと変わった。

しかし、大部分はあまり変わらない。

木が生い茂り、ツタも生えている。

「やっぱすごいな…!」


「感心してる場合じゃないわ、集中して」

ラヴェンツァが静かに言った。

「左右に散るわよ」

「私が右、あなたが左」

「合流は…」

「あの岩肌ね」

ラヴェンツァは木々の間にある岩を指差した。

「わかった」


二人が反対方向に走り出した。


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