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第十八話

次の講義室は、また別の棟にあった。

刻魂工学こっこんこうがくね」

ラヴェンツァが廊下を歩きながら言った。

魂の武器(ソウルアーマメント)魂の形(ソウルレムナント)に関する学問ね」

「これは気になる」

「珍しく積極的ね」

「自分に直結してる感じがして」

「…まあ、そうね」

教室に入った。


壁に魂の形(ソウルレムナント)の色見本のようなものが貼ってある。

様々な色のオーラが、図解として描かれていた。

教壇に立っていたのは、細身の女性教師だった。

名札にはツァイ・ホンと書いてある。

眼鏡をかけていて、手元に分厚いファイルを持っていた。


「着席してください」

穏やかな声だった。

全員が座った。

刻魂工学こっこんこうがくを担当するツァイです」

「この授業では、魂の武器(ソウルアーマメント)魂の形(ソウルレムナント)について、理論的に理解することを目標とします」

黒板に文字が書かれていく。


『魂の武器ソウルアーマメントの顕現原理』


「まず基本から確認します」

「魂の武器ソウルアーマメントとは何か」

学術院アカデミーに入学した皆さんは日常的に使ってると思いますが」

「その原理や構造を理解している人は少ない」


「まず、基礎知識として」

魂の武器(ソウルアーマメント)は、ソウルを消耗させることで顕現します」

「しかしここで重要なのは、消耗させる量ではなく、消耗させる質です」


「質?」

アリスが小声で呟いた。

「そうです」

ツァイが続けた。

「同じ量のソウルを消耗させても、その人の魂の状態によって顕現する武器の鋭さや耐久性が変わります」

「これを、ソウルの純度と呼びます」

黒板に図が描かれた。

同じ量のソウルから、全く異なる質の武器が生まれる図解だった。


ソウルの純度が高いほど、少ない消耗で強力な武器を顕現できます」

「逆にソウルの純度が低いと、大量に消耗しても不安定な権限しかできない」

「また、顕現できたとしてもその効果時間はすごく少なくなる」

俺は自分の手を見た。

いつも、ソウルをどれだけ消耗しているのか、あまり意識していなかった。


「次に魂の形(ソウルレムナント)について説明します」

ツァイが壁の色見本を指差した。


魂の形(ソウルレムナント)は、魂の武器(ソウルアーマメント)を顕現させた時に滲み出るオーラです」

「色、濃さ、彩度は特に関係ないと言われていますが

「揺らぎ、は意味があります」


「揺らぎは、魂の状態を表します」

「揺らぎが少ないほど、魂が安定しているということです」

「揺らぎが多いほど、魂が不安定だということです」

ツァイが教室を見回した。

「実際に見てみましょう」


「ラヴェンツァ・ヴェイルさん」

「はい」

ラヴェンツァが立ち上がった。

魂の武器(ソウルアーマメント)を顕現させてください」

「わかりました」

ラヴェンツァが静かに目を閉じた。

一秒も経たないうちに、メイスが顕現した。

紫のオーラが滲み出る。

教室が静かになった。

ツァイが眼鏡を直した。

「見てください」

「色は紫。濃さは均一。彩度は非常に高い」

「そして揺らぎが、ほぼない」

「これが、魂の形(ソウルレムナント)の完成された状態です」

「魂の純度が高く、状態が非常に安定している」

「同じ学年の生徒の中では、群を抜いた数値です」

「流石、首席合格なだけはありますね」

ラヴェンツァは深々とお辞儀をする。

「光栄です」


教室がざわめいた。

「すごい…」

「全然揺れてない」

「綺麗…」

ラヴェンツァは表情を変えなかった。

ただ静かに立っていた。


「ありがとう、座ってください」

「はい」


ラヴェンツァが席に戻った。

アリスが小声で言った。

「…相変わらず完璧ね」

「憎たらしいほどに…」


「そう思うなら、自分の力量も磨くことね」

ラヴェンツァが前を向いたまま答えた。

デイジーは何も言わなかった。

ただ、ラヴェンツァの魂の形(ソウルレムナント)が消えた場所を、静かに見ていた。


「では続けます」

ツァイが黒板に向き直った。

魂の形(ソウルレムナント)の揺らぎを抑えるには、どうすればいいか」

俺はノートにペンを走らせた。

揺らぎを抑える。

つまり、魂を安定させる。

今朝の授業でも、俺の魂の形(ソウルレムナント)は揺れていると言われた。

それが、ソウルの高出力による虚脱に繋がっているのかもしれない。


「魂の安定には、三つの要素が必要です」

ツァイが黒板に書いた。

『一、精神の安定』

『二、魂の制御の習熟』

『三、自己の魂への理解』

「特に三つ目が重要です」

「自分の魂がどういうものかを理解していない限り、制御は非常に難しい」

自分の魂への理解。

それが一番足りていない気がした。


「キース」

ラヴェンツァが小声で言った。

「ノートが止まってる」

「あ」

急いでペンを動かした。

窓の外で、午後の日差しが傾き始めていた。


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