第十三話 初めての仲間
色の閃光が巨大怪物の核を貫いた瞬間、世界から音が消えた。
あまりにも巨大なエネルギーの衝突。
視界が白一色に染まり、次の瞬間、鼓膜を震わせる爆鳴が禁区の空を割った。
――ドォォォォォンッ!!!
爆風が廃墟をなぎ払い、俺たちの体を激しく叩く。
腕で顔を覆い、必死に足を踏ん張った。
どれくらい時間が経っただろうか。
舞い上がった砂塵がゆっくりと地上に降り注ぎ、視界が戻ってくる。
そこには、もうあの巨体はなかった。
黒い霧が、陽炎のように空に溶けていく。
後に残されたのは、抉れた地面と、異様なほどの静寂だけだった。
「……はぁ、はぁ……」
俺は膝を突き、二刀の顕現を解いた。
掌が熱い。
全身の筋肉が悲鳴を上げている。
切り傷もついている。
隣を見ると、ラヴェンツァもメイスを杖のようにして、荒い息を吐きながら立っていた。
「……倒した、のよね?」
「……みたいっすね」
声が震える。
勝った。
あの化け物に。
その実感が、じわじわと指先から広がっていった。
達成感と共に、疲労感も全身に伝わってくる。
「ふぅ……。全く、心臓に悪いわね」
「お見事だったよ」
聞き覚えがある声が聞こえてきた。
背後にはデミラスがいた。
いつの間にか、副学長のラウェイを連れてすぐ後ろまで来ていたらしい。
「学長……」
「キース君、ラヴェンツァ君」
「素晴らしい戦いだった。実力を十分測らせてもらったよ」
「え、キースって異例の飛び級推薦の…!?」
金髪の女性が口を押さえて驚嘆の表情を浮かべる。
デミラスは満足げに頷くと、俺たちを助けてくれた二人の方を向いた。
「さて。君たちも、まずは名乗ったらどうだい?」
金髪の女性が、乱れた髪を払いながら一歩前に出た。
「アリスよ。アリス・グレイブス」
少し息を切らしながらも、彼女はハキハキとした口調で言った。
「“そこの“ラヴェンツァとやらに、首席合格を渡してしまったのは、すごく不愉快だけどね!!!」
「私の計算じゃ、私がトップで合格するはずだんだけど!?」
「あんた、一体どんなズルをしたの? 」
「もしかして、その不気味な紫のオーラで採点官でも脅したんじゃないでしょうね!」
「……ズル? 心外ね」
ラヴェンツァの眉がピクリと動いた。
「私はただ、与えられた試練を完璧にこなしただけよ」
「二位だったのなら、単に貴女の実力が私に及ばなかった。それだけのことでしょう?」
「いちいち癪に触る言い方するな!!」
「 私は生活区の同世代で一番成績良かったんだけど!?」
「学業も最高得点で卒業したのよ!」
「 理論も戦術も、あんたみたいな無愛想な女に負けるはずがないわ!」
アリスが顔を赤くして一歩詰め寄る。
「理論が完璧でも、実戦で怪物を倒せなければ意味がないわ」
「さっきだって、私たちが先に戦っていなければ、貴女も危なかったんじゃないかしら?」
「それは……っ! 」
どうやら言葉が詰まっているようだ。
図星なのだろうか。
「さっきアリスと会った時、怪物に追われて情けない悲鳴あげてなかったっけ?」
座り込んでる男が口を開く。
「黙ってて!!」
「これは戦いなの!!」
一言で付け足しただけなのに叱責が飛んできていた。
かわいそうに。
「それは状況が悪かっただけよ! 空間異常のせいで出力が狂ってたの!」
「 あんたこそ、キースがいなかったら今頃どうなってたか分からないじゃない!」
二人の間にバチバチと火花が散る。
「あの二人とも…」
「今はとりあえず帰るのが先決なんじゃ……」
見かねたキースが間に入ろうとするが、アリスの鋭い視線に射抜かれる。
『あんたは黙ってなさい!!!』
「……私の実力をキースのおかげだと言いたいわけ?」
ラヴェンツァの声の温度がさらに一段階下がった。
「そうよ! 納得いかないわ! 学園に戻ったら、もう一度テストをやり直しなさいよ! 今度は正真正銘、私と一対一で……」
「まぁまぁ落ち着いて」
デミラスが仲裁に入る。
「ほら、デイジーくんの自己紹介がまだだよ」
「……デイジー・バーグだ」
後ろにいた男が、短く答えた。
刃付きの鞭はもう消えている。
彼は特に表情を変えることもなく、ただそこに立っていた。
「とりあえず…」
「…アリスと、デイジーですね」
俺は二人の名前を反芻した。
「俺はキース。こっちはコンビのラヴェンツァです」
「ほんと助かりました」
「礼なんていいよ」
「あと、その敬語なんか気持ち悪いから外して?」
「えぇ…」
なんだか、アリスはラヴェンツァと似たような人種な気がする。
「まぁ、分かったけれど…」
「……それより、早くここから出ましょう」
アリスが禁区の出口を指差した。
「学術院でじっくりとラヴェンツァと“お話“をさせていただきたいからねっ」
「先が思いやられますね…お互い…」
デイジーに話しかける。
「……そうだな」
デイジーも短く同意し、無造作な足取りで歩き出す。
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