第二十話
「今年もやったんですね。魂絆選定」
二つの人影が、四人を見守っている。
デミラスと、ラウェイ・パルサーだった。
ラウェイはデミラスより少し背が低い。
短く整えられた髪。
副学長らしい、落ち着いた佇まいだった。
しかし今は、手元に小型の端末を持っていた。
「記録は取れているかい」
デミラスが静かに聞いた。
「はい」
ラウェイが端末を操作しながら答えた。
「魂の反応値、戦闘中の出力変化、魂の形の色の変動、全て記録しています」
「キース君のデータは?」
「異常値が出続けています」
ラウェイが端末の画面をデミラスに向けた。
グラフが表示されていた。
他の三人の数値が一定の範囲内で推移している中、一つだけ明らかに異質な波形があった。
「通常の魂の出力限界を、既に三度超えています」
「戦闘中は特に顕著です」
「しかも本人は、それを自覚していない」
デミラスは端末を見つめた。
「そうか」
「学長」
ラウェイが続けた。
「やはり、あの子は普通じゃない」
「わかっているよ」
「スカウトした時から」
「…どこまで知っているんですか」
「君が知っている以上のことは、まだ言えないな」
デミラスは静かに笑った。
ラウェイは少し間を置いた。
「巨大怪物の出現は、想定していましたか」
「さぁね」
「怪しいですね…」
「生徒たちが危機に陥っている」
「そこに助け舟を出そうともしない」
「…なぜですか」
デミラスは禁区の奥を見た。
四色のオーラが、遠くで瞬いていた。
「あの子たちなら、なんとかするだろうと思ったからだよ」
「根拠はあるんですか?」
「…勘だね」
「…学長らしくない理由ですね」
「ははっ。そうかもしれないね」
ラウェイが再び端末に目を落とした。
「キース君の今の出力値、また上がっています」
「四人が合流してから、数値が安定してきている」
「面白いね」
デミラスが静かに言った。
「一人の時より、誰かと共にいる時の方が力が安定する」
「それも、データとして記録しておきなさい」
「はい」
しばらく沈黙が続いた。
「ラウェイ」
「はい」
「あの子は、いつか全てを知ることになる」
「その時に、ちゃんと受け止められるかどうか」
「それが私には、一番心配だよ」
ラウェイは何も言わなかった。
ただ、端末に視線を落としたまま、静かに頷いた。
掛け声と共に、四人が巨大怪物討伐へと動き出していた。
皆が四方八方へと散らばって行く。
金髪の女性は、注意を引くためか巨大怪物の周囲を走り回っていた。
「私が注意を引く!」
「その間に!どうにか突破口を見つけて!」
「……言われなくても!」
ラヴェンツァが叫び、紫のオーラを纏って高く跳んだ。
「分かってる!」
金髪の女性が放つ白い光が巨大怪物の視界を遮り、注意を逸らす。
その隙を突き、ラヴェンツァのメイスが怪物の背後、脆くなった肉塊を粉砕した。
「グゥォォォ!!!」
物凄い音圧の咆哮が聞こえてくる。
一方、不気味な威圧感を放つ男は、影のように低く構えていた。
「……無駄に動くな」
呟きと共に、青い閃光が地を這う。
刃付きの鞭が巨大怪物の巨大な脚部を締め上げる。
その先端についている鋭い刃が、その機動力を奪うように深く食い込んだ。
「これなら……っ!」
俺は二刀を強く握り直した。
肩で息をしながら、三人の動きに意識を向ける。
名前も知らない二人だが、不思議と動きが予測できた。
彼女が右を攻めれば、男が左を抑え、ラヴェンツァが上から叩く。
計算されたわけじゃない。
魂そのものが、パズルのピースのように噛み合っていく感覚。
「赤いの! 突っ込め!」
鞭を操る男が吠えた。
「了解……っす!」
俺は地面を蹴った。
体の奥から、さっきまでとは比較にならない熱量が溢れ出す。
赤いオーラが濃くなり、視界が熱を帯びて歪む。
巨大怪物が苦し紛れに四本の腕を振り回し、全方位に攻撃を放とうとした。
「させないわよっ!」
金髪の女性が三節棍を連結させ、正面からその衝撃を点で受け流す。
空間が軋む。
その僅かな歪みの中心を、俺は突き抜けた。
「……おおおおお!」
二刀が真っ赤に熱を帯びる。
今、斬った後確かな手応えが先に伝わってきた。
巨大怪物の胸部。
そこにある核のような塊が、赤く透けて見える。
一閃。
振り抜く瞬間に、禁区の空気が爆ぜた。
二刀を交差させ、怪物の胴体を真っ二つにする勢いで駆け抜ける。
ズガァァァァン!!
背後で巨大な爆鳴が響いた。
巨大怪物の巨躯から、どす黒い霧が噴水のように溢れ出す。
「やったか……?」
ラヴェンツァが呟いた。
だが、霧の向こう側。
再生速度が、破壊の速度を上回り始めていた。
肉塊が脈打ち、より醜悪な、より殺意に満ちた形へと変貌しようとしている。
「嘘……まだなの……!?」
ラヴェンツァの声に戦慄が混じる。
「……いいえ、確実に弱っているはず」
金髪の女性がラヴェンツァの問いに答える。
「次で最後よ…!」
「四人同時に、一点に叩き込むわよ! 準備して!」
金髪の女性がこの空間を包み込むように声を上げる。
俺は二刀を構え直した。
魂の出力が、また一段階跳ね上がるのを感じた。
これがトドメの一撃。
「うおぉぉぉぉ!!!!」
「いっけえぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
四色の閃光が、一つ目標へと収束していく。
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