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第十一話

巨大怪物ラヴェジャー


一体の怪物バンキッシャーが長い年月をかけて怨嗟と憎悪を喰らい続けて、とてつもない力を手に入れた個体。


出現頻度は極めて稀。

授業で習ったことがある。


しかし一体で街一つを壊滅させる危険性があるとされている。

魂守り(ソウルガード)の中でも、上位の実力者でなければ単独での討伐は困難。

教本にはそう書いてあった。


「…教本で読んだのと、実物は全然違うっすね」

思わず呟いた。

「そうね」

ラヴェンツァの声が、わずかに緊張していた。

「教本で読んだ時は、大げさだと思っていたけど」

「全然大げさじゃなかったっすね」

「黙りなさい」


話し声に気が付いたのか、巨大怪物ラヴェジャーがこちらを向いていた。

目が、ない。

顔に当たる部分が、歪んだ肉塊のように蠢いている。

手足の比率がおかしい。

腕が四本あるように見えた。

一歩。

地面が轟音を立てて沈んだ。

また一歩。

廃墟の残骸が、足元で爆発のように砕けた。


「どうしますか」

「逃げるに決まっているでしょう!?」

即答だった。

「逃げるんすか」

「当たり前よ!」

ラヴェンツァが静かに言った。

「あんなの、私たちが相手にしていい存在じゃないわ」

それは正しい判断だとわかった。


だが、現実は非情である。

「安全に出れそうな出口、あっちっすよね」

巨大怪物ラヴェジャーが立ちはだかっている方向を指差した。

ラヴェンツァが眉をひそめた。

「…そうね」

最悪だった。


「迂回できますか」

「できるかもしれない」

「できるかもしれない、って」

「やってみないとわからないわ」

「正直っすね」

巨大怪物ラヴェジャーが、また一歩踏み出した。

地面の揺れが大きくなった。

こちらに向かってきている。


「このまま二人で固まっていたら共倒れするわ」

「二手に別れましょう」


「私が囮になる」

「え」

「あなたは迂回して出口を目指しなさい」

「それはできないです」

「感情論はいらないわ」

「感情論じゃないです」

「なら何よ」


「コンビでしょ、俺たち」


ラヴェンツァが、少しだけ黙った。

「…綺麗事よ」

「そうかもしれないですけど」

「でも、一人で行けって言われても行けないっす」

巨大怪物ラヴェジャーがまた一歩踏み出した。

地面が大きく揺れた。

廃墟の壁が、崩れ落ちた。


「…馬鹿正直ね」

ラヴェンツァが小さく呟いた。

「じゃあ、一緒に逃げるわよ」

「はい」

「ただし私の指示に従いなさい」

「了解」

二人が走り出した。


巨大怪物ラヴェジャーが動いた。

思ったより速い。

あの巨体で、信じられない速さだった。

「右!」

ラヴェンツァが叫んだ。

「分かっ…てるっ!」

反射的に右に跳んだ。


腕が空を切った。

風圧だけで、体が吹き飛びそうになった。

「くっ!」

体が抑え付けられるようだ。

「立ち止まらないで!走って!」

廃墟の間を縫うように走る。

巨大怪物ラヴェジャーが追ってきている。

一歩踏み出すたびに、地面が揺れる。


「止まれ!」

ラヴェンツァが叫んだ。

急ブレーキをかけた。

目の前に、巨大怪物ラヴェジャーの腕が振り下ろされた。

間一髪だった。

地面が抉れた。

「くっ…!」

「距離を取って!」

後退した。


しかし巨大怪物ラヴェジャーの有効射程は非常に広い。

廃墟の残骸を踏み越えながら、こちらとの距離を詰めてくる。


「試してみる、価値はありそうね…!」

ラヴェンツァがメイスを顕現させた。

紫のオーラが滲み出る。

「少し、待ってなさい」

正面から踏み込んだ。


ラヴェンツァは自前の素早さを使い、巨大怪物ラヴェジャーの足であろう部分に近づいていく。

一発、また一発とくる攻撃を華奢に躱していく。

瞬く間に巨大怪物ラヴェジャーの巨体を登っていく。


「これでっ!」

ガァァァァン!!!

メイスが巨大怪物ラヴェジャーの頭部に叩きつけられた。

しかし。

「…っ!」

ラヴェンツァが弾き飛ばされた。

メイスを受けた頭部が、みるみる再生していく。


ラヴェンツァが廃墟の壁に背中をぶつけた。

「ラヴェンツァ!」

「…大丈夫よ」

立ち上がった。


しかし顔が歪んでいた。

「どうやら、効いてないみたいですね…!」

「手応えはあった…」

「ならいけるんじゃ?!」

「わからない」


巨大怪物ラヴェジャーが向き直った。

今度はこちらを狙っていた。

二刀を構える。

巨大な手がこちらを目掛けて飛んできた。

「うっ、くっ…!」

とても長時間抑えられるものではない。


体の奥からソウルを引き出す。

赤いオーラが濃くなった。

でも、これが限界に近い。

巨大怪物ラヴェジャーがもう片方の腕を振り上げた。

来る。

全力で踏み込んだ。

両刀で受け止めようとした。

無理だとわかっていた。

それでも、ラヴェンツァの方に向かわせるわけにはいかなかった。

腕が迫ってきた。


その瞬間。

白いオーラが、横から爆発した。

「くっ、なんて強さなの。これ…」

「ごめんね、遅くなった」

三節棍がラヴェジャーの腕を受け止めた。

金髪の女性だった。

小柄な体で、両足を踏ん張って受け止めていた。

白いオーラが全身から滲み出ていた。

「…自己紹介は後ね…」

「感謝も後でいいわ」

歯を食いしばりながら言った。


さらに青い閃光が、空中を走った。

刃付きの鞭が、巨大怪物ラヴェジャーの腕に巻き付いた。


一緒に転移してきた四人が集まった。

彼は無言のまま、鞭を引いた。

巨大怪物ラヴェジャーの腕が、わずかにそれた。

「四人で戦うわよ!」

金髪の女性が叫んだ。

「いくよ!」

四人同時に言葉を放った。


四色のオーラが、禁区に広がった。


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