幕間「美人のメイク動画はすっぴんを見せつけるのが目的」
マンモスうれピー奈と申します!
学業との両立を目指し『毎日投稿』を目標に掲げているので、応援の程よろしくお願いします〜〜!
※本作はカクヨム様にも重複投稿しております。
ピンポーンと来訪を告げるインターホンの音を耳にし、「はーい!」と玄関まで赴く江南。
少ししてから「ごめーん、お金用意してなかった!」と壁越しに声が聞こえて、東雲が「はいはい」と財布片手に甲斐甲斐しく向かう。
「……で、結局ピザになったと」
「いいじゃないピザ。金曜はやっぱり、ジャンクフードを食べながら映画鑑賞よね」
コンビニ派の江南が折れて、デリバリーサービスを使うことまではすんなりと進んだのだが、どの店にするかはまた一悶着あった。
家計に余裕がないことから一つの店舗に絞るのが好ましく、韓国料理が食べたい江南の言い分も考慮した結果、サイドにヤンニョムチキンがあるピザ屋に至った。
「それにしても、今日はやけに抵抗を見せたな北上。そんなに薬膳粥が食べたかったのか?」
店選びではピザを提案した東雲と、それに早くから乗っかった西宮。北上は最後まで薬膳粥なる食べ物の主張を曲げなかった。
そんな疑問を受けて、北上は玄関の方をチラリと見遣る。
「食べさせたい相手がいたからねぇ。あたしが食べたいっていうのもあったけど」
西宮は──あぁ、江南のことか──と勘づくと同時に、北上に食べたい気持ちがあったことに唖然とする。
「そういうミヤちゃんも、なんだかんだ最後はシノちゃんの肩を持つわよねぇ」
「うっせ。わたしもピザが食べたかっただけだよ」
強情な西宮を北上は微笑ましそうに眺めながら、ふと先ほど気になったことを問いかける。
「それで、ミヤちゃんが『頑張ったこと』って一体なんなの?」
「あー、内緒だよ内緒。ま、そのうちな」
「ふーん」
北上は、はっきりとしない西宮の態度に釈然としないものを感じる。けれども、満面の笑みでピザの箱を抱える江南の姿を目に映すとその疑問は風化していくのだった。
♢
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♢
翌朝、土曜日の七時。
生活サイクルが異なるコンパスハウスの面々の中でも、東雲は一番にアラームの音を消していた。
朝食を一人で済ませ、洗顔を終えた後、自室に籠って化粧を施す。好きなアイドルのメイク動画を流すことで、これから待ち受ける労働への胃痛をなんとか軽減しようと目論む東雲。
オフィスカジュアルを心がけながらアイメイクに到達したところで、出し抜けにドアが開く。
突然の物音に驚いた東雲は、来訪者の姿を認めると更に目を白黒させることとなった。
「めずらしいじゃん、西宮がこんな早くから起きてるなんて」
「まぁな。この時間なら、北上も江南も起きてないと思ってさ」
「なんで? 江南さんは講義あるのか知らないけど、少なくとも北上さんは仕事で起きてるんじゃない?」
「……? あーまぁいいや。ちょっと話したいことあってよ」
そう言いながらちょこんと隣に座った西宮を見て、東雲は動画を止めた。
「昨日さ、バイトの面接してきたんだよ。スーパーの」
「うん」
「でも、その場で不採用って言われた」
「……うん」
話を聞く東雲の顔は卓上ミラーを向いていて、西宮はそれを有難く思った。
「やっぱり昨日、コロッケにしてあげればよかったね」
「いいって。今更だけど、受かったお祝いならともかく落ちたのにそんな……」
「はいはい、そんなこと言わないの」
「でもさ、」
「結果はともかく、一歩踏み出したことがすごいなって私は思うけど」
「……あっそ」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、次は東雲の番」
突然、話の矛先を向けられて困惑する東雲。
「え、私?」
「会社でなにかあったんだろ?」
「えーっとね……。これ聞いても嫌いにならないでほしいんだけど」
「なるかよ」
「後輩、泣かせちゃった」
西宮は口を挟むことなく、ただ黙って聞いている。
「私の言い方がきつかったんだと思う。そんな、大して怒るようなことじゃなかったのに。そのせいであの子の人生が無茶苦茶になっちゃったらって考えたら、わたし……」
「あーもう泣くなよめんどくせーな」
西宮は頭を掻きながら、机の上に置かれたティッシュケースから二、三枚ほど取って渡す。
「東雲がその後輩を泣かせたのは事実だけど、お前もその後輩を想って泣いてる。だったら会社で泣くか家で泣くかの違いだろ」
東雲はぐずりながらも、小さく頷く。
「無職のわたしを見てみろよ。後輩がこんなのになったら初めて心配してやれ。……お前の優しさ、わたしが誰よりもわかってるよ」
「──落ち着いたか?」
西宮は、東雲が泣き止むのを待ってから声をかけた。
「うん、ありがとう……。そろそろ会社行かなきゃ」
幸い、アイメイクに着手する前だったこともあり、半端に化粧を施した顔は特段崩れていなかった。目を擦りながら気丈に立ち上がる東雲を見て、西宮は憐憫を含ませながら声をかける。
「休日出勤ってやつか? 大変だな」
「うん、そうなん…………ん? 休日?」
「あぁ、だって今日は土曜日だろ?」
その言葉を皮切りに、泣き腫らした目だけでなく、みるみる顔中を真っ赤にしていく東雲。
「え? まさか今日が平日だと思ってたの? ニートより曜日感覚ないってどういうことだよ」
「……うるさい」
東雲は恥ずかしそうに顔を背け、メイクを落とすため洗面所に向かおうとするが、ドア付近で西宮に腕を掴まれる。
「せっかくかわいくしたんだからさ、ちょっと付き合えよ」
「……どこか行くの?」
「あん? スーパーだよスーパー。わたしにコロッケ作ってくれんだろ? わかったらそんなもん早く脱いじまえ」
西宮はそう言いながら、東雲が羽織っていたグレーのジャケットを脱がし、自ら選び取った服に着替えさせる。東雲はされるがままで、しかし終わり際に文句を放つ。
「私はおめかししてるけど、西宮はすっぴんのままじゃん」
「いいんだよ。わたしは美しいから」
「引きニートのくせに」
その調子、とばかりに西宮は優しく笑ってみせる。
「ほら早くしろよ。もうすぐ朝のタイムセール始まるんだから」
「普段料理どころか買い物もしないくせに、詳しいね」
「昨日見てきたからな」
その言葉に東雲の顔にも笑顔が点ったのを見て、西宮は満足げにドアを開け放つ。
「わたしといる時は、魔法をかけてお前をシンデレラにしてやるよ」
♢
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一方そのころ浴室では、優雅に朝風呂を嗜む北上の姿があった。
水面に映る自身の顔が綻んでいるのを認めて、いそいそと浴槽から出る。
「ふふっ、『お前をシンデレラにしてやる』だなんて。あたしまでのぼせちゃいそう」
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江南は自室でくーっと寝息を立て、寝相の悪さを遺憾なく発揮していた。床には蹴り飛ばされたと目されるウサギのぬいぐるみと毛布。散らかった部屋の様相と乱れた着衣はそのままに、寝言を呟く。
「むにゃむにゃ……お前をシンデレラにしてやる……」
夜の十二時を迎えたところで、東雲にかけられた魔法は解けそうにもなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます✨
少しだけ重ための回でした……! シェアハウスだからこそ、東西の信頼関係が光ります!
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