金曜の夜でも戦はできる!
マンモスうれピー奈と申します!
学業との両立を目指し『毎日投稿』を目標に掲げているので、応援の程よろしくお願いします〜〜!
※本作はカクヨム様にも重複投稿しております。
東西南北の好きなフルーツ。
東雲──アンズ
西宮──メロン
江南──さくらんぼ
北上──ライチ
金曜の午後七時。それぞれ激動の一週間を過ごした四人の女の子たちは、全員もれなく満身創痍でリビングに集っていた。
膝を抱え消沈模様の東雲、仰向けでヘソを出したまま床に寝転ぶ西宮、だらしなくビーズクッションに体を埋める江南、ソファ上で真っ白に燃え尽きてそうな北上。
三者三様ならぬ四者四様に疲労を表現する彼女たちは、それでも衣食住を欠かさないため夕食会議を行うはず……なのだが、今夜は一向に始まる気配がない。
しばらくそうしていると、誰かのお腹がぐーと可愛らしい音を鳴らしたのをきっかけに、天井を見上げたまま西宮が「空虚だ……」とポツリ呟く。
「わたしたちは貴重な二十代の時間をこうして浪費してもいいのか? このままだと走馬灯がショート動画並みの短さになるぞ」
コンパスハウスで一人だけ十代の江南は、クッションからガバッと顔を上げた。
「そんなのやだ……! 死に際までドパリたくない……!」
「ニートが言うと言葉の重みが違うわね」
西宮への悪態ついでに東雲はよろよろと立ち上がり、話し合いの開始を宣告する。
「でもそうだね、質の良い生活は質の良い食事から! 今日も夕食会議を始めます!」
「ところできたがみはどうしたのこれ。おつかれ?もしくはシカバネ?」
先ほどから反応を示さない北上の膝を、江南はつんつんと突く。北上は「うぅ……」と呻いた後、その長いまつ毛をはためかせた。どうやら生きてはいるみたい。
「エナちゃん、冷蔵庫から『濃縮すっぽん高麗人参ドリンク』を持ってきてくれないかしら……」
「よくわかんないけどわかった! とりま怪しい飲み物もってくればいーんでしょ」
江南はパタパタとスリッパの足音を響かせて、褐色の瓶を掴んで戻ってくる。北上は「ありがとう……」とお礼もそこそこに中身を空にした。
飲み終わった瞬間、北上はスタイルの良さを見せつけるようにしゃんなりと立ってみせる。その拍子に黒のロングワンピースが揺らめいて、スリットからはみ出たしなやかな生足を江南は見逃さない。
「きたがみ足きれー」
「うふふ。見たければ、夜あたしの部屋でいくらでも見せてあげるわよ」
「んーん、エンリョしとく!」
ドリンクを飲んですぐに完全復活を果たした北上に、西宮は「こえーよ、お前もその飲み物も」と戦慄した。
全員の意識が明瞭になったのを確かめて、東雲はわざとらしく咳払いを挟み、会議の再開を告げる。
「それじゃ、まずはみんなの希望を聞こうかな。私としてはデリバリーでいいかなって思うんだけど」
疲労が限界なのか、自炊以外を提案する東雲。
「珍しいわね、シノちゃんが料理を断念するなんて。ならあたしもデリバリーでいいわ」
「デリバリーでいいならコンビニでもよくない? いま韓国フェアやってるからさ、みんなで好きなもん買って食べ比べしよーよ」
功労者の東雲を気遣ってか、自炊以外の案を提示する北上と江南。しかし西宮は。
「この前、東雲がコロッケ作ってくれたよな。久しぶりにあれが食べたい」
空気を読まない一言に、東雲は顔をしかめる。
「コロッケってまた面倒なものを……」
「みや様、コロッケならコンビニでも売ってるよ?」
芳しくない東雲の反応を受けて、西宮は口を尖らせる。
「東雲が作るやつがいいんだよ」
「それは嬉しいけどさ、コロッケ作るには材料足りないし」
「あー? そんなもんわたしが買ってきてやるって」
なおも食い下がる西宮に、つい半笑いを浮かべてしまう東雲。
「わざわざ買いに行ってくれんの? 出不精の西宮が?」
引きこもりの彼女が自分から外出を言い出すのは、東雲が自炊を諦めるよりも珍しいことであり、思わず北上も目を見張る。
「ミヤちゃん、今夜は一段と頑なねぇ」
「いいだろ別に。……今日は頑張ったんだよ」
小声で発された「頑張った」という発言に、一同の耳はぴくりと反応する。
「みや様が『がんばった』って……。まさか、3000ピースのジグゾーパズルついに完成した!?」
「トランプタワーでエッフェル塔でも作ったのかしら」
「どうせスマホのインカメで小松菜奈に見える角度でも模索してたんでしょ」
「全部ちげーよ! お前らわたしをなんだと思ってるんだ!」
フーフーと鼻息を荒くする西宮。
「みんな、わたしを馬鹿にできるほど立派な一日を送ってきたのか? どうなんだよ!」
もはや逆ギレでしかない疑問を、全員にぶちまけた。
♢
♦︎
♢
「うちはちょろっと大学に顔出してー。そのあとは身内と街うろついてた! でもそれにしてはやけに疲れてんだよねー、なんでだろ?」
そのスケジュールを聞いた東雲は『充実してるなぁ』と感想を抱くに留まるが、北上は些細な異変を見逃さない。
「エナちゃん、心なしかいつもより顔赤くない?」
「まじ!? 今日のメイク、多幸感だしすぎ?」
「……ちょっといいかしら」
北上はそう口にするやいなや、吐息が触れ合うほどの距離まで近づいて、江南の額に手を宛てがう。少ししてから、うんと頷いた。
「若干、熱っぽいわね」
「たしかに、きたがみに触られてゾワっとしたかも!」
「ぐすんっ……エナちゃんひどい……」
大げさに涙ぐむ北上をケタケタと笑う江南。
そのやり取りを見て、西宮は「なら体力つくもん食べないとな」と冷静に意見を述べた。
「で、そういう北上はなんであんなに疲れてたんだよ?」
「お仕事で燃え尽きただけよ。みんなほど疲れてはないわ」
ミステリアスお姉さんの北上は、自身の職種を事細かに伝えていない。
皆の中で──北上は自営業を営んでいるらしい──というのが共通認識で、「仕事」というワードにコンプレックスを持つ無職の西宮は、なおさらその話を深掘りしなかった。
「そうか。で、東雲は?」
「私は……今日、仕事でミスしちゃったんだよね。実は、」
「あっそう。ってことはだ」
今まさに語られようとしていた東雲の失敗談を、中断する西宮。
「ちょっと! 話遮らないでよ!」
「あ? 夕食会議に仕事の愚痴を持ち込んでくる方が悪いだろ」
西宮はやれやれと頭を振って、続きを切り出す。
「つまり、わたしもお前らも同じくらい有意義な一日を過ごしたんだ。ならわたしの意見も少しは検討してくれてもいいだろ?」
「有意義な一日って……そういう西宮はなにして過ごしてたの?」
的確な指摘を受けて、西宮は「……言えない」と口を閉ざす。東雲はその様子から疑念が確信に変わり、小馬鹿にするよう笑みを浮かべた。
「ぬいぐるみとお話してたら一日が終わってたとか?」
「期限切れのクロスワードに没頭してたのかしら」
「きたがみ、それじゃまるでジジイじゃん!」
それぞれ楽しそうに笑う三人を見て、西宮は握り拳をプルプルと震わせた。
「お前ら、わたしのこと馬鹿にするんじゃねぇ!」
今夜も騒がしいコンパスハウスの面々は、無事に夕食にありつけるのか。
はたして。
最後まで読んでいただきありがとうございます✨
金曜の夜に揚げ物は面倒ですよね。
はたして、西宮がごねた理由はなんなのか!
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