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腹が減っても戦はできる!  作者: マンモスうれピー奈


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幕間「皿洗いしない人間は用を足した後に手すら洗わない」

マンモスうれピー奈と申します!

学業との両立を目指し『毎日投稿』を目標に掲げているので、応援の程よろしくお願いします〜〜!


※本作はカクヨム様にも重複投稿しております。

「かんせーい! みんな、席ついてー」


 エプロンに着替えた東雲《しののめ》は、お揃いのプレートを両手に完成を告げる。その後ろから「ひゅーー!」と諸手を高らかに上げた江南《えなみ》が付いてくる。

 北欧風のクロスが掛けられたダイニングテーブルに、風呂上がりでほかほかと湯気を漂わせる西宮《にしみや》と、読書に勤しんでいた北上《きたがみ》がぞろぞろと集う。

 定位置に座った彼女らは、眼前に並んだ料理を見てそれぞれ歓声をあげる。ただ一人を除いて。


「おい東雲、なんでわたしのやつだけ平《ひら》たいんだよ」


 西宮の言う通り、彼女のものだけが丸い球体ではなく薄い形状をしていて、「最後まで反対した当てつけか?」と対面する作り手をキッと睨む。

 東雲は「えーっとね」と恥ずかしげに目線を逸らしたが、隣席の江南が「ののちゃんうぃうぃ」と肘で小突いて茶化してくる。

 それを受けて、「ちょっと待ってて」と東雲は一言残しキッチンまで小走りで駆けて行った。


「……なにかしらねぇ」


 トコトコと機械的な動きで帰ってきた東雲の手には、横に両断されたロールパンと、スライスチーズやレタスなど具材を盛った小皿。


「これでハンバーガーにならないかなって……。専門店には及ばないけどさ」


 ぽかんと口を開けて硬直した西宮を見て、東雲は慌てるように「あんたの分のポーチドエッグは昼食用に残してあるし……」と付け足す。

 顔を赤くするのは、今度は西宮の番だった。


「その、嬉しいよ。わざわざありがとな」


 机を挟んで湿っぽく見つめ合う二人。江南は「ラブソースイート流さんといてっ」とキャッキャと沸き立つ。「あらあら」と頬に手をやる北上。


「冷めないうちにいただきましょうか」


 そうした北上の言葉を皮切りに、四人はいただきますと手を合わせた。




 パン粉の衣が付いた肉塊にナイフの刃を入れると、糸を引くように、とろーりと黄身が溢れた。一同は「おおっ〜!」と色めき立つ。

 食べてみると、ザクっとした衣の食感の後に肉汁が口中に満ちて、くどいほどの脂っこさはまろやかな卵の黄身で中和される。


「うん、揚げ加減は上手くいったかな」

「おいしー! ののちゃんマジてんさい!」

「お肉に下味がついてて美味しいわぁ。揚げてあるし、ハンバーグとは別物ね」

「作りながらネットで調べたんだけど、粒マスタードも合うみたいだよ」


 口々に褒め称える皆を、羨ましそうに眺める西宮《にしみや》。それに目敏《めざと》く気づいた江南《えなみ》が、「みや様、はいあーん」と切り分けたものを西宮に差し出した。

 フォークよりも鋭敏なネイルを向けられて若干、西宮は躊躇したものの、勢いよくかぶりつく。


「ん、うまい」


 北上《きたがみ》はその様子を見て──飼育員に餌を貰うリクガメみたいねぇ──との感想を抱くが、上品に咀嚼《そしゃく》していたため口に出すことはなかった。


 ♢

 ♦︎

 ♢


 ジャーといった水音を、排水溝が余すことなく飲み込む。シンクに伸ばされた四本の腕は、機能美として袖が捲《まく》られている。

 食事を終えた後、東雲《しののめ》と北上《きたがみ》は並んで洗い物をしていた。

 北上の肌は季節の移ろいに動じず年中潤(うるお)っているものの、唯一、指先だけは水仕事のせいかわずかにささくれを見せていた。その手の状態を認めた東雲は、お礼ついでに西宮の怠慢《たいまん》を嘆く。


「北上さん、いつもありがとね。まったく、西宮《にしみや》は家事を手伝わないんだから」

「いいのよ。シノちゃんには美味しいご飯を作ってもらってるんだし」


 北上は、「それにエナちゃんはネイルがねぇ」と自身がやらないといけない理由を淡々と並べる。仕事どころか家事すらまともに手をつけない西宮とは対照的に、江南《えなみ》は洗濯や掃除、他にも細々《こまごま》とした雑事を行っているからか、他の住民の反感を買っていない。


「ミヤちゃんは昔からあんな感じなの?」


 投げかけられた疑問に、東雲は作業を進めながらうんと頷く。


「西宮《あいつ》は昔からあんな感じ。でも二人で住んでた時より、江南さんと北上さんが来てくれたお陰で家事の割合はだいぶ減ったかな」


 北上は「それなら良いんだけど」と呟く。


「たしか二人が住んでたこの家に、エナちゃんが進学を機に越してきたのだっけ。今更だけど、完全に部外者のあたし達って居てもいいのかしら?」

「もちろん。西宮のご両親の勧《すす》めもあってシェアハウスに暮らし始めたんだけど、二人じゃこの広い家は持て余すから。それに、家計をやり繰りするためにも北上さんがいてくれて助かるよ」


「目のやり場に困るから、はだけた服装はやめて欲しいけど……」と控えめに呈《てい》された苦言を、北上は水音で聞こえないフリをした。

 東雲は、テレビに悪態をつく西宮と元気に喚《わめ》く江南、ソファに腰掛ける二人を視界に入れると、ふっと笑みを浮かべた。


「今はこの四人で暮らせて、ほんとに良かったと思ってるよ。これ以外は想像つかない」

「あたしも、毎日楽しませてもらってるわ」


 同意する北上の手には泡立つスポンジ。これからの期待と空想を膨らませるように、もこもこと面積を増やしていく。



 明日は、四人でどんな食卓を囲んでいるのかな。

 コンパスハウスの日常は、波立つことなく過ぎていく。

最後まで読んでいただきありがとうございます✨


コンパスハウス発足前の人間関係が垣間見えるエピソードだったんじゃないかと思います! ポーチドエッグ美味しそう……!


これからの展開に興味を持ってくれた方は、ブックマークや⭐️など応援していただけると嬉しいですっ!

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