07. イヴ・クリーヴランド/後
さて、ここからは今世の、つまりいずれ聖女になるイヴの話である。
前世のイヴが好んでいたのは児童文学だとか王道のハイファンタジーばかりだったので、いわゆる通俗小説に多い異世界転生だとかいうのは知らなかった。けれど同時に現実ではない世界に空想を遊ばせることはよくあったので、イヴは自分の状況が判らないながらも、なんとなく理解したのである。
イヴは前世の記憶があることを、誰にも言わなかった。前世の知識を目的に悪い人たちに狙われたりだとか、逆に信じて貰えなくて頭のおかしい人であると判断されるだとか、他にも色々な悪い想像ができたからだ。
イヴはピンク髪の、肌の白い、自分でもぎょっとするような美少女だった。
まるで漫画やアニメのキャラクターのようだ、とイヴは思った。実際のところは乙女ゲームのキャラクターだったので、イヴの想像は当たらずとも遠からぬものであった。
イヴは目立たないようになるべく周囲の子どもたちと同じような態度で過ごしたし、実際のところそれは苦にならなかった。結局は前世の記憶があるといっても、感情や感覚は今世の記憶の比重が大きいのである。
けれどやはり、周囲の子どもからは浮いてしまっていたらしい。ほんの幼い頃から絵本をスラスラと読み進めるイヴを見て、イヴの母親がイヴを抱き上げて大喜びした。
「この子は天才だわ!」
それは美しいイヴの母親であることが一目で判るような、ピンク髪の、それはそれは美しい女性だった。その隣に立つイヴの父親も、貴公子と舞台俳優の良いとこ取りをしたように理想的に美しい。
「将来この子は、大学まで進んで研究者になるかも知れないね」
そんな調子の良いことを言いながら、美しい相好を崩して、父親はイヴの頭をそっと撫でたのである。
それは前世で『透明人間』であったイヴにとって、それだけで人生の優先順位が変わってしまうような、大きな衝撃だった。ただ無償の愛情だけを湛えて見つめられるということが、イヴの前世ではただの一度もなかったのだ。
ものは試しだというように、父親は小さな小さなイヴの手にペンをそっと握らせた。
イヴはきょとんとして、そっと両親を見上げた。両親はワクワクとした表情で、楽しげにイヴを見下ろしている。
だからイヴは、ただ両親を喜ばせたい一心で、絵本の文字を真似してノートに文字を書いて見せたのである。
「――本物だ! 凄いぞ、この子は天才だ!」
そう大喜びして、父親はイヴに頬ずりをして、何度もキスしたのだった。
「この子を良い学校に行かせてあげないと」
「頑張って仕事をして、お金を貯めなくちゃいけないわね」
両親は口々にそんなことを言って、イヴを抱きしめた。
たとえ五年後や十年後にどうなるのだとしても、そのときその瞬間、たしかに彼らは理想の家族だった。
イヴの眠る小さなベッドを、やはり小さな男の子が覗き込んでいる。その男の子に、母親が優しく声をかけた。
「あなたはお兄ちゃんなのだから、イヴちゃんを守ってあげるのよ」
「うん!」
そうやって、四人は笑い合っていたのだ。
イヴの家庭は裕福で、家は広かった。前世では生まれたときから狭いワンルームで暮らしていたイヴは、広い家や庭を思う存分に駆け回ることができた。
そんなイヴは、我ながらびっくりするほど鈍くさかったので、よく転んだ。そうやって転んで大泣きしたイヴを、優しい幼馴染みのジャンが、呆れながらも優しく立たせてくれるのである。
「ありがと、ジャン」
そんな二人を、イヴとジャンの家族が、優しく見守っていた。
あの時代、イヴは幸せだった。間違いなく、たしかに、幸せだったのだ。
あの頃の記憶に、しがみついてしまうくらいに。
イヴは賢かった。これは単に前世の記憶があるからというだけではなくて、イヴは前世から今世でも、純粋に賢かったのだ。
頭を使うようなことでは、イヴはいつでも一番だった。父親が面白がったので、イヴには貴族につけられるような家庭教師までつけられた。
こと勉学において、イヴに挫折はなかった。新しいことを覚えるのも、理解の幅を増やすことも、両親の期待に応えることも、ただ楽しかった。
そんなイヴの幸せが少しずつ陰っていったのは、すぐ下の妹のリタが生まれてからだった。
「イヴちゃん、わたしたちはお仕事が忙しいから、イヴちゃんがリタちゃんをよくお世話してあげてね」
昔から変わらない優しい声で、母親はそう言った。イヴが生まれたときにだって、母親は長男に同じようなことを言っていたのである。
イヴは両親や長男の愛情を疑っていなかったので、大喜びで頷いた。イヴが長男にされたように、イヴもリタのことをめいっぱい愛してあげようと思った。
そうして、イヴは自分なりに、リタのことを世話し始めたのである。
ここでイヴの運が悪かったのは、本人の想定を超えて、イヴが優秀であったことだ。高校生までとはいえ、前世の記憶があることもそれに拍車をかけた。
つまり大人たちの思惑を超えて、イヴはリタのことを世話できてしまったのである。
ここで、両親は勘違いした。あるいは勘違いではなかったのかも知れないけれど、結果的にはそれは勘違いだった。
つまり、イヴは特別な子どもだから『大丈夫』だと、そう思い込んでしまったのだった。
イヴが小学校に上がれば、いよいよイヴの賢さは眼に見えるようになった。イヴはいつでも学年で一位の成績を取っていたし、何年も先の勉強だって軽々と解いた。
教師や周りの大人たちは、イヴのことをこぞって神童だと褒めそやした。それで両親は、調子に乗ってしまったのだった。
この子は大丈夫。そう思って、次に生まれた次男の面倒も任せた。
この子は大丈夫。そう思って、簡単なお使いを頼むようになった。
この子は大丈夫。そう思って、弟妹たちが汚したテーブルを拭くのを任せるようになった。
そうやって、少しずつ少しずつ、じりじりと、イヴの負担は増えていったのである。
そんな状況でありながらも、イヴは決して成績を落とさなかった。これも、両親が勘違いをした理由だった。
気づけばイヴは、弟妹たちの世話と家庭教師とで、ほとんど自由時間がなくなっていた。これは小学校に上がったばかりの子どもとしては異常なことだったけれど、両親はそのことに気づけなかった。
やがてイヴだって、女の子なので、オシャレに興味を持つようになる。流行りのワンピースを欲しがったイヴを、母親は叱りつけた。
「あなたのような賢い子が、そんな浮かれた格好をしたがるだなんて、はしたない!」
そう叱れば、イヴはショックを受けたような顔をして、けれど諦めたように頷いた。
一方で母親は、イヴを叱ることに、奇妙な充足を感じていた。今まで天才だと思い込んでいた娘が、まるで普通の子どものように落ち込んだのである。
実のところ母親は、見た目こそ飛び抜けて美しかったけれど、頭はそれほど良くなかった。だから飛びきり賢いイヴに対して密かに抱いていた劣等感が、イヴを責め立てることによって、満たされることに気づいてしまったのだった。
それから母親は、イヴから家庭教師を取り上げた。そんなことよりも、家事を手伝わせようと思ったからだ。
「あなたは賢いから、大丈夫よね」
何度も何度も、母親はイヴにそう言い聞かせた。そのたびにイヴは、どこか曖昧に笑って、頷くのだ。
「大丈夫よ、お母さん」
だから母親は、イヴは大丈夫だということにした。イヴ本人が大丈夫だと言ったのだから、大丈夫なのである。
子どもたちの世話を任せた。料理を任せた。掃除を任せた。
もちろん母親だって、何もしていないわけじゃなかった。
きちんと家族経営の商店で働いていたのである。ただ家事であるとか育児であるとか、そういうお金にならない役割を、イヴに任せただけであった。
商店は田舎町ではそれなりに人気で、イヴの家はそれなりに稼いでいた。だから稼ぐことのできないイヴが、なんだか足手まといのように思えてきたのである。
「あなたは本当に役に立たないわね、イヴ」
いつもいつも、母親はそう言ってイヴを貶めた。父親も同調した。
「少しくらい勉強ができたって、何の役にも立たないな」
「えぇ、お勉強が得意だからって、親のことを馬鹿にしているのよ。生意気な子だわ」
イヴの整えた部屋で、イヴの作った料理を食べながら、両親はそうイヴを貶めた。
イヴは、両親を愛していた。家族を愛していた。どうしてもどうしても、嫌うことができなかった。
それはイヴが幼い頃に、たしかにイヴを愛していた家族の記憶が、イヴをそうさせていた。まるで呪いのようだった。
だからどうにかして両親に褒めて欲しくて、イヴは色々なことを学ぶようになった。
その一環で、論文コンテストで大賞を取ったことがある。大賞の賞金は前世で言えば二万円ほどの価値で、小学生に渡される金額としては破格のものだった。
イヴは浮かれた。このお金で、友人たちが着ているような可愛い服を買えると思ったのだ。
だからイヴは、大喜びで両親に報告した。褒めて欲しくて、頭を撫でて欲しくて、大賞の賞状と、賞金を見せに言った。
両親は、イヴから、あっさりと賞金を取り上げた。
「子どもがそんなお金を持っていたって、仕方がないでしょう」
「それよりも、風呂の掃除はまだか? 昨日は汚れが残っていたぞ、しっかりしてくれ」
そういって、賞金を取り上げて、賞状をあっさりとゴミ箱に投げ込んだのである。
それを、イヴは、呆然と見ていた。
イヴは幸せだった。幸せになれるはずだった。イヴは前世から幸せだったけれど、今世でもっと、もっとずっと幸せになれると思っていたのだ。
違う、幸せだった。イヴはずっとずっと、幸せだったのだ。
だって少なくとも、イヴはもう『透明人間』ではない。
イヴは、大丈夫だった。だからイヴは、微笑んだのだ。
「ごめんなさい、お風呂掃除してくるね」
弟妹はどんどん増えて、そのたびにイヴの仕事は増えた。
イヴは勉強は得意中の得意だったけれど、体を動かすことは得意ではなかったし、お世辞にも器用とは言えなかった。だから料理をすれば火傷をしたし、裁縫すれば怪我をしたし、掃除をすれば水の入ったバケツをひっくり返した。
そのたびに、イヴは、両親から鬼のように怒られるのだった。
「何してるんだ、役立たず!」
実のところ、イヴがこれほど不器用だったのは、単純に体格や体力の不足もあった。いつからかイヴは成長が遅れて、同性の同級生たちよりも一回りも二回りも小さくなっていたのだ。
前世でそうだったように、イヴは勉強と読書に逃げ込むようになった。もう家庭教師はつけられていなかったけれど、学校の図書室や、町の図書館に行けば、いくらでも勉強できたし、時間を潰すことができた。
ただ集中して活字と向き合う、その時間だけが、イヴを癒やしてくれた。
イヴは可愛い服が着たかった。オシャレなカフェに入りたかった。友人たちと遊びまわりたかった。
けれどそれは、どうしてだか、年齢を経るごとに難しくなっていったのだ。
幼い頃は仲が良かったはずのジャンは、いつの間にかすごく嫌な男になっていた。
ジャンはイヴを見かければ小突いたし、足を引っかけたし、階段で背中を押した。魔法をぶつけられたこともあった。
イヴは家族から愛されたかった。友人から愛されたかった。誰かから愛されたかった。
だというのに、どうにも、不器用なイヴは何もかも、失敗してしまうのだ。
小学校を卒業して中学校に上がれば、イヴには新しい女友だちができて、少しだけ呼吸がしやすくなった。
その女友だちがとにかく派手で、気の強い子だったので、その子の友人であるイヴを苛める子どもは減った。けれどそれでもしつこくイヴを苛める子どもたちは、そのぶん陰湿で、容赦なくなっていった。
イヴはいつも、服の裾を握り込むのが癖になった。すり切れて破れた裾を隠すためだ。
イヴはいつも、背中を丸めて歩くのが癖になった。迷惑なことにイヴの胸は大きく成長したので、ただ廊下を歩いているだけで、すれ違いざまに胸を掴んでこようとする男子生徒たちがいるからだ。
裾を握り込めば、あかぎれだらけの手は隠せなかった。背中を丸めても、嫌がらせで切られた不揃いな髪は隠せなかった。
イヴは愛されたかった。誰かから愛されたかった。誰かを愛したかった。
だから、誰にでも親切にした。困っている誰かがいたら手を貸した。教師たちの用事を手伝った。結局のところ今世でも、イヴは大人たちからは優等生で通っている。
数少ない友人たちは、イヴのことをお人好しと言った。呆れて、心配してくれることもあった。
けれどイヴは、自分がとても嫌な人間であることを知っていた。結局のところ何もかも、イヴは自分のためだけに動いていた。
中学校に上がってしばらく経ったころに、父親に言われたことがある。
「そういえば、コンテストの類いに入賞したのはあれっきりだったな」
何を言っているのかと思って、いつだかの論文コンテストのことを言っているのだと気づいた。
「勉強しか取り柄がないのに、その勉強ですら結果を残せないだなんて、本当にお前は役立たずだな」
そう言われたから、イヴは、色々なコンテストに出場した。
論文コンテストではまた一位を取ったし、数学コンテストでは四位に入賞した。詩作コンテストでも、一応佳作には入ることができた。
そういう結果を並べて、両親は、また溜め息を吐くのである。
「勉強しか取り柄がないんだから、これくらいできて当たり前だろう。向上心のない女だな」
だからイヴは、刺繍に挑戦することにした。コンテストに出したところで何の賞も貰えなかったけれど、不器用なイヴが、何度も指に針を刺しながら作り上げた刺繍のハンカチだった。
それを、両親は、汚いもののようにゴミ箱に捨てたのだった。
「素人が刺した刺繍だなんて、使えたもんじゃないな」
そうしている間にも、家事や育児がイヴに降りかかった。このところは次男が荒れてしまっていて、学校から呼び出されることも少なくなかった。
「イヴちゃんに来られてもねぇ……」
イヴが頭を下げに向かった小学校で、困惑したように、教師が言うのである。
「お母さんやお父さんは、何をしているの? ちゃんと教育して貰わないと、学校のできることには限りがあるのよ」
「お母さんと、お父さんは……お店をやっていて、忙しいので」
結局のところ、困り果てたイヴと、困り果てた教師で、いつも無意味に顔を見合わせることになるのである。
そんな日々をすごしているときに、突然イヴは聖女候補になった。王宮の使者だという数人に連れられて、王都に足を踏み入れることになったのだ。
イヴに乙女ゲームの知識があれば、それが乙女ゲームの始まりであることに気づけただろう。けれど残念なことにイヴに乙女ゲームの知識はなかったので、ただ困惑して、流されるばかりだった。
聖女候補から聖女になったときにも、何の現実味もなくて、何がなんだか判らなくて、呆然としていたのだ。
そこでイヴは、鮮烈な少女と出会うことになる。
彼女はこの国の王姪で、公爵令嬢だという少女だった。エリノア・クリーヴランドという少女は、イヴの背中を強く叩いて、無理やりイヴの背筋を伸ばして、イヴを光の中に連れ出したのである。
イヴは平民だったので想像することしかできないけれど、公爵令嬢である。きっと、想像もできないような重圧や、責任がかかっているのだろう。
けれどイヴの見たエリノアは、どこまでも強く、しなやかで、鮮やかだった。立場があるのだから決してそんなことはないはずなのに、イヴの眼からはエリノアがひどく軽やかに見えた。
イヴとは正反対に、エリノアは自信に満ちあふれていた。自分が努力をしていて、その努力に意味があったことを知っている人間の自信だった。
イヴは小さな田舎町の娘だったので、王都や王宮の煌びやかさには馴染みがなかった。どうにも場違いな気がして、一歩踏み出すごとに足が震えるような思いだった。
だというのにエリノアは、そんなイヴに構わずに、イヴを引っ張り歩くのである。
ちょっと待って欲しかった。狭い世界に生きてきたイヴにとって、エリノアや、彼女の周りの人びとが生きている世界は眩しすぎて、目まぐるしすぎた。
けれど強引にイヴを連れ出して、エリノアは言うのだ。
「自信を持ちなさい!」
それは、今までのイヴの人生にはなかった言葉だった。背筋を伸ばせ、視線を上げろ、自信を持て。
そしてエリノアは、イヴに美しいドレスを着せた。見た目から侮られることがあってはならないと、まるでドレスが戦闘服であるかのように教えるのである。
イヴは怖かった。何もかもが恐ろしかった。一歩踏み出すたびに、足が震えるようだった。
けれどエリノアは、決して最後まで一緒に歩いてはくれない。途中まではイヴを引っ張り回しているのに、本当に大切な場面では、イヴを一人で前に突き飛ばすのだ。
「あなた、自分を愛しなさい」
会ったばかりのときに、エリノアはそう言った。
「わたしは誰よりも自分を愛しているわよ」
エリノアは自信満々に笑った。それが彼女の美しさの秘密であるように。
大切なことを教えるように、エリノアは言ったのだ。
「自分を愛せない人間は、誰からも愛されないわよ」
イヴは顔を上げた。
イヴは愛されたかった。誰からか愛されたかった。誰からでも良いから、愛されたかった。
転生してこの世界に生まれたばかりのときに、僅かな間だけ愛を手に入れたような気がしていた。だというのにそれはまるで砂でできたオモチャのように、あっという間にイヴの手から滑り落ちていってしまったのだ。
イヴはぽろりと泣いた。美しい少女の涙は美しかったけれど、イヴはそれを知らなかった。
「愛されたい……」
泣きながらイヴは言った。何年も、何年も、前世を含めて三十年以上も、ずっと胸に沈めていた願いだった。
うん、とエリノアは頷く。それに許された気がして、イヴは続けた。
「わたしは、愛されたい。誰かに愛されたい。それに、誰かを愛したい……」
結局のところ、イヴは誰からも愛されていなかったし、誰のことも愛していなかったのだ。
幸せになりたかった。誰かに愛されたかった。誰かを愛してみたかった。
自分が幸せではないこと、自分が誰にも愛されていないこと、自分が誰も愛していないこと。そういうことを認めることは、とてもとても、恐ろしいことだった。
エリノアはイヴを抱きしめた。
「だったら、あなたはあなたを愛するべきだわ。あなたは美しくて、賢い。学校での成績はいつも一番だって聞いているわ。手が傷だらけなのは家事を頑張っていたからでしょう。王宮からつけられた使用人たちにも優しくしてるわね。怪我をした小鳥を見付けて、助けて貰えないかこっそり魔法士に届けたのも知ってるわ」
急に色々なことを言われたので、驚いて、イヴは目を白黒させた。構わずにエリノアが続けた。
「まだ会ってほんの数日のわたくしがこんなにもあなたの良いところを知っているのだから、他にももっといっぱい、あなたの良いところはあるはずよ。そういうあなたを、あなたは愛するべきよ」
「愛……?」
聞いたことのない言葉のように、イヴは首を傾げた。そんなイヴを覗き込んで、にっこりとエリノアは笑った。
「あなたが愛することが下手くそなのであれば、まずはわたくしが愛してあげるわ。それに、わたくしの父と母も」
いきなりエリノアの両親の話が出てきたので、イヴは本当に判らなくてぽかんと口を開けた。エリノアはどこまでも自信ありげに、良いことを思いついたというように、楽しげに言ったのだ。
エリノアこそ、イヴの知る、最も美しい少女だった。
「あなた、わたくしの妹になりなさい!」
短編投稿時点では影も形もなかった次女のリタが思いのほかうまく書けてしまったので、逆に聖女でヒロインの長女イヴに説得力を持たせられるかというのがあんまり自信がありませんでした
ので、どうやって書こうかとちょっと困っていた。結局手癖で書いてしまったのですが、大丈夫でしたでしょうか
ちょっとでもお暇潰しになれば幸いなのだわー
イヴの前世/今世の家庭環境に関しては、めちゃくちゃ明確に虐○とは言い切れないけれども、ちょっとこのままだと幸せになるのは難しいかも?? くらいの塩梅を目指しました
判らない、見当違いなことを言っているかも知れない。どこからどこまでが虐○かそうじゃないかって、たぶんひとによって判断基準が違うと思うので難しいのよね
イヴやリタに対して、『家族なんだからこれくらい我慢しろよ!』って言う人たちもいっぱいいるんでしょうね。わたしはどうしても家族というものに過度な理想を抱いてしまうので、これはわたしの世界観でのお話なんだな、というのをご理解頂ければ幸いでございます
↓ 以下はよたばなしです
いつだかの作品で、『虐○親を擁護しすぎ』という批判を頂いたことがあります。まぁわたしもつい虐○親の表現に『善人』という言葉を使ってしまいがちだという自覚はあるのですが
えーっと、こう、わたしにとって、虐○親というのは、、半歩隣の自分だな、という気持ちがあるので、、ご理解頂けます?? いつでもそうなり得る自分の姿、とでも言うべきか。だから何となく、居丈高に何もかもをめちゃくちゃ非難することを避けてしまいがち、というか
鏡の中に、いつでもそういう最低な自分を幻視する。これは悪いことかも知れないけれど、良いことでもある。こういう感覚があるから、わたしは自分を信じずに律することができる
逆に虐○親を堂々と非難できるひとは凄いですね。自分がそうならないという自信があるということだものね。良いと思います、そのまま健やかにお過ごしくださいませ。これは決して嫌味ではなくて、心身が健康であることは得がたい幸福であると考えております
これが自分の子どもを十人も○して○体を庭に埋めて反省もせずにのうのうと暮らしているとかだったら、『とんでもない悪党やんけ!』って堂々と非難できるのですが、、世の中はそんなに判り易いことばかりではありませんからね。難しいですわよね




