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空間を越えて  作者: x雅x
8/9

着信08:心と記憶




「わぉ……」


私は思わず言ってしまう。何と男はアサルトライフルの乱射を避けながらさらに私の銃撃を避けたのだ。


「あ……」


ガーズが顔を歪めている。見るとアサルトライフルの銃口が連射のせいでぐにゃりと曲がっていた。


「万事休す♪笑うしか無いね」


ポジティブに言ってみた。


「笑えるかぁ!」


床に使えなくなったライフルを叩きつける。


「アホだな。お前ら」


男が左の銃を私に、右の銃をガーズに向ける。


「うるさい!あんたが無茶苦茶な所為よ!」


逆ギレしながら引き金を引くが……


「あれ……?」


引いても引いても、弾が出ない。隣でもカチカチという音が聴こえてきた。


「はっはっは!弾切れだな」


「笑い事じゃないわよ!?」


駄目だ…終わった。男は楽しそうに私たちの会話を聞いている。


「大丈夫だ。替えの弾が………」


目が点になる。


「無い……」


男は笑いを堪えている。てか、含み笑い。


「じゃぁ、死ぬか」


男が言った。


─来る!


私は横に跳ぶ。ガーズも直感で避けた。が、足に当たったようだ。


「ぐっ!」


ガーズが倒れる。

大ピンチ!


「外したか……」


男がガーズに向けて二丁の銃を構える。


「…何てな」


バッとガーズは、新しい拳銃を取り出し弾を放つ。


「まだ銃を持っていたのか!」


男は弾を避けたが、頬に細い傷ができている。掠ったようだ。男はガーズの銃に向けて弾を出す。


拳銃は遠くに吹っ飛ばされた。


「…死ね」


男はガーズに銃を向けた。


─今は、私は視界に入ってない!


私はさっきの間に、リロードしたとある弾を放つ。


「なっ…!」


男の目に赤い液体が飛び込む。


─ペイント弾だ。ずっと前に使ったままポーチに入れたままになっていたのだ。

「くそっ!」


男の目潰しは出来た……!


「ガーズ!」


私が名前を呼ぶと、ガーズは足を押さえながら飛ばされた拳銃を拾いに行った。


男は銃を乱射し始めた。右の銃から、二発。左の銃から三発放たれたがどれも掠りもしない。


男が液体を拭き終わった。


「手間を取らせやがって!」


バッと男が銃を構える。が、先にガーズが足に一発だけ弾を撃ち込んだ。


「ぐぁっ!」


男が膝をつく。


「終ったな…」


ガーズが服を裂いて包帯代わりにする。


「え?あいつ、まだ銃持ってるよ?」


私が指摘する。


「…女の言う通りだ!」


男がバッと二丁の、拳銃を構えて引き金を引く。


「キャァッ!」
















「…イヴェルト、足速すぎだって」


俺は時の間の、扉の前に立っている。

何故か体が高揚する。


「多分…もう準備は完了したんだろうな」


はぁ、とため息を思わずつく。


「この世界の命運が俺にかかってるのかよ……」


ん?と考え直しさらに深いため息をつく。


「元の世界も…か」


俺は扉を開ける。
























「……あれ?」


私は塞いでいた目と耳を開ける。


そこには呆然とする男と当たり前といった顔をするガーズがいた。


「…どゆこと?」


全く状況が理解出来ない。


「弾切れだ」


ガーズが言った。


「こいつが使ってる拳銃は六発しか弾を込めれない。拳銃は大概そうだ」


男の銃を指差しながら言う。


「自分の撃った弾数も数えてなかったんだよ」


「いや、あんたもでしょ?」


ガーズは咳払いをして続ける。


「私の前で弾を込めてもいいが…その隙に撃つぞ?」


ガーズが拳銃を構える。男は首を横に振る。


「まさか、負けるとはね……」


拳銃を二丁とも投げ捨てる。


「抵抗はしない。だからフェイト様の復活に立ち会わせてくれないか?」


ふん、とガーズが鼻を鳴らす。


「好きにしろ…。ただしフェイトは復活しないだろうが…」


私とガーズは歩き出した。
















「遅かったね!雄一君!」


ローが話しかけてきた。部屋のすみではボンヤリとした様子のイヴェルトが立っていた。


「あとは雄一君だけだよ?この高揚感に身をまかせてよ」


笑顔を作り言った。


「黙れ、フェイト」


俺が言うと先程の笑顔とは違う歪んだ笑みを浮かべた。


「半分は僕だけどね」


クスクスと笑う。


「何も面白く無いな」


俺は銃を向けて引き金を引く。


「そんな武器では、僕に勝てないよ」


ローが人では有り得ない速さで動いて避ける。


「じゃあ、これならどうだ?」


耳鳴りがしてローが驚く。ローの動きが普通に戻る。


「何でそこまでフェイトの力に頼っておきながら身を委ねないの?」


今度はつまらなそうに言った。


「力を使うのはお前を倒すには都合が、いいからだ」


もう一度、弾を放つ。が、空中に茶色い何かが舞いローには何も起こらない。


「時間を進めたのか……」


一瞬で進められては自分自身以外は守れない。…もし光とガーズがここに来たら時間を前もって止めとくしかないな。


「これなら君の方が不利だね」


ニヤッと笑いナイフを取り出す。確かに俺の力はものを壊したりは形を変えたりは出来ない。ローの時間は止めれないしナイフの時間を止めてもすぐに動かすだろう。


「…仕方ないな」


部屋に飾ってある、剣を一本持つ。


「君に剣が使えるの?」


ローが俺に向かって走ってきた。


「たぶん無理だな」


ナイフでの攻撃を剣で防ぐ。


「じゃあ、どうするの?」


もう一度、ローが斬撃を繰り出してきた。


「こうするんだよ」


俺は頭以外の時間を一瞬停止させる。

刃が当たっても傷はできない。


「何っ!」


ローが驚いている。その隙に頭へ剣を斬りつける。というより飾りの剣なので斬れないので叩きつけた。


ガンっと鈍い音がする。血がポタッと、床に落ちる。


「…前もって、君の力を相殺させとけばよかったね」


ギッとローが俺を睨む。普通の人には、わからないが時間が変化しかけている。


俺は舌打ちをして、それを相殺する。

いや相殺し続けている。


「結局、大した対策は出来て無いんだね……」


「どうかな?」


拳銃を突きつける。


「それは意味が無い……」


「やってみろよ」


俺は引き金を引く。出てくるのは弾丸、ではない。青白い光の球。野球ボールほどの速さだが高威力を持つもの。


ローはハッとして、光の球を避ける。それは壁にぶつかりそれを中心に小さなクレーターのようなものができる。


「…アーティファクト。古代の兵器か…」


ローが苛立ちを見せる。


「実体が無いから、時間を進めても意味が無い」


バッとローが離れる。


「フェイトの記憶の中からみつけたのか…。いつの間に作り替えたんだよ」


ローはナイフを突き出す。と、ナイフの刀身が少しの間だけ青白く光る。


「真似するなよ」


俺が苦笑しながら言った。


「それでも君の方が有利じゃないか」


ローはふっと微笑んで突っ込んでくる。やっぱり、足は速くない。


「さっさと受け入れてくれよ」


「絶対に、嫌だ」


俺は横に走りながら拳銃の引き金を引く。


「受け入れないなら心を折るしかないよね」


ローはナイフを突き出し見事に球を真っ二つに斬る。


「やっぱ弾速、遅いな」


相手の瞬発力が高いのもあるがやはり遅いものは遅い。


後ろに下がって球を三発、打ち出す。

ローは三発全てをスレスレで避ける。


「お前だけなんだ…お前が我を受け入れれば、我は蘇る」


声がローの声と男の声が重なって聞こえる。


ローが距離をつめて横からナイフを振ってきた。俺は屈んでそれを避ける。ナイフは俺の後ろの壁を紙のように斬り裂いてしまう。


「ローじゃない…」


俺はさっと銃を構えて撃つが、先程とはまったく違う人物のような動きで球を全て斬る。


「完全にフェイトなんだ……」


俺は一度、距離を大きく離す。


「そうだ。…ところでお前の目的はなんだ?」


俺は銃をフェイトに向ける。


「正直なところ、自分のためだ」


フェイトが意外そうな顔をする。


「俺は元いた世界に帰る」


銃をやや斜めに構えて球を数発撃つ。


「私が蘇れば、帰してやるぞ?」


フェイトは自分に当たりそうな球を斬りあとは無視してこっちに来る。


「帰ってもあんたは俺のいた世界とこの世界の時間の波を、ぶつけることによって俺のいた世界にも来るだろ?」


俺はフェイトの頭上のシャンデリアのようなものに球を撃ちそれを落とす。


「くくっ…。その通りだ。お前がここに来たのも我に残った僅かな力で繋いだのだよ」


シャンデリアはフェイトに当たる前に砂のような粒になって消え去る。


「俺は元いた世界の生活に手をだされたく無いんだよ」


フェイトの足下を狙い球を出す。


「そうか、残念だ」


風がうなり気付いたらフェイトは俺の前にいた。銀色の煌めきが胴に浅く入る。


「帰るにはあんたの力が必要なんだ」


俺は足を引っ掛けてフェイトを引き倒す。


「だからあんたの、心だけを壊す」


手を突き出すとローの体から宝石のような物が出てきた。俺は銃をそれに向ける。



















「時の間ってこっちだよね?」


少女が男に走りながら不安そうな声で聞く。


「お前…城の地図、頭に浮かばないのか?」


少女はその問いにこくりと頷き、てへ♪と笑う。


「馬鹿だ…こいつ、正真正銘の馬鹿だ」


男はため息をつきながら言った。


「こっちであってる………はずだが」


男も不安になってきたらしい。群集心理だ。


「あの扉だろ?」


私は近くに見える扉を指差していう。


「何でお前ら、城で働いておきながらそうなるんだ?」


不思議でたまらない。少女も男も城に勤務しているはずだ。


「時の間には普段は近づかないからな」


男は扉を開ける。すると主が床に倒されて、彼に銃を向けられている。


あの石は……フェイト様の心!


私は駆け出した。


「あっ、待て!」


男が制止の言葉をかけるがそんなこと、知ったことか。そのまま彼の前に飛び込む。


















俺が引き金を引くと何故か鮮血が飛び散った。


「………え?」


血はサバイバルの時の男のものだった。床に男は伏している。


「まったく……主は……駄目なところが…多すぎですよ」


フェイトに手を伸ばすが届く前にフッと止まり落ちた。


俺が……殺した?


違う!こいつが勝手に飛び込んで来たんだ!


俺のせいじゃ………
















雄一君がふっと倒れた。いや、雄一君だけじゃない。ローとイヴェルトもだ。


フェイトの心が部屋の中心に行く。気付いたら白い衣を纏った男がいた。


「フェイト……」


かつて時間を操り、最強の兵器としてこの国に存在していた伝説の人物。


「我は復活したが…どれが私…いや僕…否、俺?どれが本当の記憶なのだ…」


わけの分からないことを言って考え始めた。


「どういうことだ?」


ガーズも理解出来ずに呟く。


私は思案した結果、ある答えに行き着いた。


「きっと体と力を取り戻す時に一緒に、三人の記憶…心が混じったのよ。どれが本当の記憶か分からないのね」


つまりまだ完全ではない。が、自分の記憶がどれかわかるまで時間はかからないだろう。そうなったら三人の心は壊されてしまう。


「ぐっ……!」


雄一君に誤射された男がうめき声を漏らした。


















俺は真っ白な部屋にいた。部屋に角はなく円形の部屋だ。


「ここは……」


「…フェイトの中」


この声には聞き覚えがある。俺は声のした方を振り向いた。


「イヴェルト…」


そこには白いワンピースを来たいつものイヴェルトがいた。


「何やってるんだよ……雄一君」


ふっとローが現れた。


「元の性格のローか…」


ローは一度微笑んだあと何故かため息をついた。


「君が撃った男……ルーアは死んでないよ。僕が少しだけどナイフで威力を弱めたからね」


俺はさっきのことを思い出し安堵の息を漏らす。


「……安心してる場合じゃない」


イヴェルトが呟く。そうだよ、とローも賛同する。


「ここは言わば精神世界何だけど…君もわかってるだろ?フェイトが自分の記憶がどれかわかったら僕達は消えちゃうよ」


…あ〜、くそだりぃなぁ。でも、記憶…心が無くなるのは嫌だしな。


「フェイトの記憶をぶっ壊さないといけないんだろ?」


二人が頷く。…そんなこと出来るのだろうか。まぁ…


「仕方ないな。で、それはどこにあるんだよ?」


俺が言うとピキッと空間にひびが入って白い部屋が無くなる。あるのはひたすら闇。それと俺とイヴェルトにロー。


「この空間の中にあるはず…」


「待て待て。重力があれば見つけられる可能性はあるが、上下左右動き放題のこの空間で石ころを探せって?」


俺は焦りながら言うが


「探すしかないよ。二人も頑張ってね」


ローはそう言って、闇の中に消えていった。


「仕方ないか…」


俺も闇の中をまさに闇雲に探す。消えたくないわけで…。


「あっ」


何か赤い石が見えた。けどフェイトの心は何色でも無く、オパールのように常に変化していた。何となく手にとってみると色んな景色が浮かんできた。それは確実に誰かの視界から見た景色だった。


ふっと景色が消えて会話が聞こえた。




ふっと景色が変わり記憶の持ち主が会話している。相手は…俺だ。ここは街の広場のようだ。

持ち主の感情まで、入ってくる。







そこの皆さ〜ん


僕も混ぜて下さいよ〜



明るく言った。


混ぜてもらえるといいな。



別にいいよな?



彼は言った。


さっきから共鳴感は止まらない。



ありがとう



自分の名前を言おう。



僕はローといいます


よろしく!









俺はふっと微笑んで呟く。


「ローの記憶か…」


俺はそれを持って、また記憶…心を探し始める。






今度は青い石があった。さっきと同じように掴んでみる。記憶が流れ込んできた。







こんにちは〜



少年があたしに話しかけてきた。


…意外と好みで思わず顔を逸らす。


その時、例の共鳴感がした。



君…何て名前?



…名前を聞いたのは共鳴感のせいだけじゃない。


少年は一瞬、驚くが教えてくれた。



高倉 雄一。君は?



どきっとしたがちゃんと答える。


あたしは…イヴェルト







「イヴェルトか〜…こんな気持ちで見てたのか」


俺は青い石も持ってまた石を探しにすっと闇の中に潜っていった。






それにしても何で、心はこの石なのに二人は動いているんだ?俺も含めて二人は心じゃないのか?


少し考えると答えが簡単に出た。


動いている俺達は、心。石は記憶なんだ。だとすれば、フェイトもそうなのか?


考えるとここがフェイトの中だからか、答えがまた簡単に出てしまった。


フェイトに心は無い。人がフェイトの心と呼んでいたのは、記憶だったらしい。心が無い…か。悲しい奴だな。


思案していると、今度は黄色の石があった。確実に俺のだな。景色を一つ見て、確認したらすぐに、持ってひたすら闇の中を動き回る。






この空間は無限なのだろうか?進んでも進んでも終わりが、見えない。……まぁこれ以上考えても、仕方ない。


……仕方ない、か。これを言ってしまえば文明の発展も何も出来なくなるな。でも俺は哲学者じゃない。綺麗に言えば俺は────



今を生きる。



これが最大の目標だろうな。


何かが目に入る。闇しかない空間で何かがあったら嫌でも目立つ。


「記憶…みつけた」


スッと近寄る。色んな色を石は放っている。


「壊すって言ってもなぁ……」


何で壊せばいいのやら…。ここには金槌はおろか、壁や床すらない。


「……これでか?」


俺は3つの石を取り出す。でも、もしこっちが割れてしまったら……。


「じゃぁ3つともで叩こう」


平等にやることにした。手を上にあげ一気に振り下ろす。


…あっさり砕けた。もちろんフェイトの記憶が。


「脆すぎだろ!」


思わず突っ込む。その時、二人が突然、現れた。


「…壊したんだね」


イヴェルトが物静かに言ったあと、俺の手に握られた石に気がつく。直感で、青い石を手に取る。それが何かわかったあと


「どこまで見たの?」


顔を赤く染めて聞いてきた。


「初めて会ったとこだけだよ?」


ほっとイヴェルトは息を吐き出す。ローも赤い石を取る。


「ところで、いつになったら出られるんだ?」


なかなか自分の体に帰れない。結構、不安になってくる。


「もうすぐ……」


ローが言い終わる前にまた空間にひびが入って砕けた。

























「あれ?」


私はフェイトが独り言をやめたので思わず呟く。その時、雄一君が立ち上がった。


「雄一君〜〜!!」


私は雄一君にダイブする。ゴキッて音が聞こえたけど気にしない。


「痛ってー!」


…雄一君は気にしたようだ。関節が首がぁ〜!とか言ってる。


「おかえり!雄一君」


私が立ち上がって言うと雄一君も苦痛に歪んだ顔を直し、立ち上がった。




「ただいま」

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