着信07:進展
俺が交番の前を通ると指名手配犯の写真が張ってあった。
…俺の写真も。
ガラスケースに入っていないのでバッと手で引き裂く。汚れが大してついていないので張り出されたばかりのようだ。
「危ない危ない…」
どうせ誰も見てないと思うけど……。
不安なので帽子を買って被ることにした。村に来て一週間経つがこれといって、進展無し。イヴェルトがちょっと明るくなったぐらいか。
ローが見つからないことに何故かガーズと光が苛立っている。仕方ないだろ…。見つからないのは。
─数日前の城にて。
「ルーア…部下たちは?」
主が私に聞いてきた。
「すでに待機しております」
部下と言っても、金で集めた国を十数人の敵に回せる度胸のある、殺し屋やごろつきどもだ。だがそれで、充分だろう。この城の腑抜けの護衛相手には。
「じゃ、部下…というか囮を送って」
まったく…主は囮作戦が好きなようだ。
「心は覚醒したけど時の間じゃないと、欠片を呼び出せないなんて……めんどくさいよなぁ」
一息ついて主は続ける。
「邪魔になる城と国王を、制圧開始っと」
─現在の村にて。
「雄一君〜!」
光が俺を呼んだ。
「どうしたんだよ?」
朝刊を手にしている。
「これ、これ!」
指差す先には…。
「城がローに乗っ取られたって……」
どんだけショボいんだ……あの城は。
ガーズが歩いてきた。
「私たちが守ってきた国がこんなに脆かったのか……」
はぁ…とため息をつく。
「城や街からは、住民や国王は近辺の町や村に避難したらしいわよ」
今、戦争をふっかけられたら一瞬で壊滅だな。
「いくら相手がローでもこれは無いだろ……」
本当に情けないな。
「まぁ、ここ二年間は私の予知の力に頼ってたからね。私がいなくなったから、まともな動きが出来なかったのね」
「そんなにお前に頼ってたのか…あの、国王は…」
さらに深いため息をガーズがつく。
「とりあえず、ローの居場所もわかったんだし行こうよ!」
光がハイテンションで言う。が、
「いくら統率力が無かったとは言っても少数で城を落とすなど…そんな化け物を相手にするつもりか?」
ガーズは反対の意を表した。
だが俺の中の何かはここ数日間、城に誘われている。いい加減、耐えれなくなってきた。
「俺は行きたいんだけど……」
「……とうとう、この時がきた。もう誘いを我慢することは出来ない」
イヴェルトが呟く。
「そうか…」
わしはため息をつく。
「打ち勝つのじゃぞ……フェイトに」
イヴェルトがこっちを向く。
「…わかってる」
その時、三人が家に入ってきた。
「…城に行くのじゃな?」
村長が言った。二人は驚くが俺は何となくわかってた。この人がどんな人物か。
「…イヴェルトも来るんだろ?」
俺はイヴェルトを見る。
「…全部、わかったんだ」
俺に近付き光とガーズには聞こえない声でいった。
今は城を目指す車の中。
携帯を開き、親父に確認をとる。
宛先 親父
件名
添付
本文
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親父と母さんのどっちがこっちの世界からそっちの世界に、行った賢者の子孫なんだ?
「それにしても……城が数日で、負けるなんてどんな力があるんだか…」
ガーズが考えている。
「時間を進行させる力だよ」
俺が言った。その時着信音がなる。
001
8/10土12:05
親父
件RE:
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気付いたか〜。いやフェイトの心が覚醒したのかな?母さんの方だよ。お父さんは話を聞いただけだよ。
緩い雰囲気で書いてあって何故か腹が立つな……。
「雄一、どういうことだ?」
ガーズが聞いてきた。
「兵士が白骨化したのは体の時間を一気に進めたから。ローが速いのはロー自身の時間を早くしたから」
ガーズは理解出来ていないようだ。
光はハッとした。
「時間を操るのは、フェイトと同じ……じゃああの子は…」
「3つに分けられたフェイトの内の1つだな」
何か難しい展開になってきたな〜…。
でも、ローの目的…というかフェイトの目的はわかった。
自分の欠片を集めて復活しようとしてるんだ。
フェイトの力は時間に作用する3つの力。
時間の進行、逆行、最後に停止。ということは…。
「雄一君とイヴェルトも欠片なの?」
イヴェルトがこくりと頷く。
雄一君は弾丸を止めてたし、イヴェルトは海で雄一君の腕の時間を戻した。
「じゃぁ行かないほうがいいんじゃないの?」
私は提案する。
「そうしたいのは、山々なんだけどな…多分、行かなくても時間が経つと無意識に城を目指すようになると思う」
雄一が説明する。
「仕方ないから城に行って、フェイトの心を壊すしかないんだよ」
本当にそれが出来るのだろうか…。
ふと気になることを聞いた。
「時間を操れる範囲の最大ってどれくらいなの?」
「半径100mくらいかな」
それって城に行った瞬間、不必要な私とガーズは白骨化するんじゃ……。
私の心境を見透かしてイヴェルトが説明する。
「…最大まで解放すると疲れて寝たり気絶するからやらないと思う。…あとあたしと雄一の力で相殺出来るから大丈夫」
そういえば城を出る前、雄一君が突然寝たな〜……。最大まで解放したんだ……雄一君。
「あ、街が見えたよ〜」
光の言うとおり、街が見えた。人気が全くない。
─まぁみんな年老いたくないだろうしな。
街に近付くとフェイトの力の使い方とかが何故かわかってきた。…正確にはフェイトの記憶が入ってくる。
「心に近づいたからか……」
俺はポツッと呟く。イヴェルトはより一層、無口になっている。
車が城門をくぐり、停車する。
「何か本当に誰もいないねぇー」
思わず私は漏らす。
「まぁ、その方が好都合だ……行くぞ」
ガーズが原付バイクを取り出す。
「…行くぞって、あんただけバイクで疾走するつもり?」
小さなバイクなのでそんなに乗れない。
「これは…………」
ガーズが停止する。
「くそっ…久々に使おうと思ったのに」
そう言ってバイクを積み直す。
─馬鹿だ…。大型二輪でも4人は無茶があるというのに…。
「新ためて…行くぞ」
カッコ悪い……。
あれ?何か背中に、背負ってる……。
ア、アサルトライフル!
「ちょっと!そんなものを城の中で乱射するつもり!?」
これは危ないと思う。アサルトライフルと言えば連射だし。
「安心しろ。アサルトライフルは単射と連射、両方出来るから」
へぇ〜……なら、少しは安心かな。
とりあえず、城の中に侵入─
─した瞬間、銃声が幾つも上がった。
「キャァっ!!」
私は伏せる。伏せても普通は当たる。でも、弾が当たった痛みはない。
「ローに仲間がいるとは……」
雄一君の声がして、目を開ける。と、
弾丸が当たる直前で止まっていた。
「これ、なんてマトリッ○ス?」
「言っておくが、これは一時的に停止するだけでまた動くから避けとけよ」
そうだった!
私やガーズが当たらない場所に行くと、また弾丸が動き出し雄一の近くを通る。危ないってそれ!!
「早く反撃しろよ…」
雄一君が拳銃を構えて撃つが敵は遠くて当たらない。
「そうだな」
ガーズがアサルトライフルの弾丸を放つ。物陰に隠れていない敵の足に命中する。痛いどころの騒ぎじゃないよ…あれ。
「殺したら駄目だ」
ガーズが言った。そんなつもり鼻から無いけど………。
イヴェルトはずっと隠れている。頭上の窓から誰か…ていうか敵が一人。飛び降りて来た。
拳銃を乱射させるが何故かどこにも当たらない。止まっているわけでもない。
イヴェルトが全部、弾を戻しているみたいだ。突然、敵が体をだらんとして銃を落とした。
「な、何これ?」
「脳の時間を止めた」
えっと…つまりこれは脳が指示を全身に出せなくて体が倒れようとするが脳が、止まっているから吊られてる状態なのね………。
「って、それって血とかが送れなくて死ぬじゃないの!」
「止まった時間が、動いている時間に作用することは無い。逆も同じだ」
良かった…死なないんだ。雄一君がぶら下がってるそいつに近付く。するとそいつが動き出した。
指をカチカチするけど銃は手に無い。
「なっ!?」
そいつが焦っていると雄一君が蹴り倒して片足を乗せ、銃を構える。
頭に向けて。
「雄一君っ!?」
私が名前を呼ぶけど遅かった。火薬が炸裂して紅い液体が花を咲かす。その一発で死んだはずなのに雄一君は数発、弾を放つ。
「何やってるの!?雄一君!」
私が叫ぶと雄一君はこっちを向いた。血が点々と顔についている。目に光が灯っていなかった。
「え……?」
雄一君の目に光が戻る。
「何か記憶が抜けた感じだな〜」
「しらけないでよ!」
雄一君がビクッとする。
「な…何がだよ?」
その目は嘘をついてる目ではなかった。一体─
「ぐっ…うぅ」
死んだはずの敵が、立ち上がった。
そして雄一君を見ると怯えて逃げ出した。
「何だ?あいつ…」
雄一君は逃げていった奴を眺めてる。
顔についた血もいつの間にか無くなっている。
私の見間違いだったのかな……?
「…雄一は、あいつを殺したよ」
イヴェルトが雄一君に聞こえないように言った。
「じゃぁ一体…」
「死んだ直後なら、時間を戻して生き返せる…」
神の領域じゃない…。
「…でも、体の活動が完全に止まったら戻せれ無い…雄一が何回も撃ったのは、あたしが蘇らしたから」
でもおかしいことは残っている。
「何で雄一君は、殺そうとしたの?」
普段の雄一君なら、そんなことしないはずだ。
「…何かの拍子に心に隙ができて、フェイトの心に負けた」
意味不明…だけど、ショッキングなことがあると暴走するのね。
「そっか…血だ!」
私はポンと手を叩く。雄一がおかしくなったのはガーズが、敵の足を撃ったときからだ。
「あの日から大量の血が、怖くなったんだ!」
あの日とは城であった事件の日だ。
ガーズはさっきの、異常事態に気付いてないみたいだ。
「…じゃぁ雄一には血がたくさんある時は見せてはいけない」
イヴェルトが言った。
「いや、それよりも……」
「よし、終わった」
ガーズが物陰から、出る。俺もその後ろにいたので一緒に、出ようとしたら…
「へい!ストーップ」
とか言って光が邪魔してきた。
「何だよ……?」
光の高いテンションにいらっとする。
「たくさん血があるけど雄一君は耐えられる?」
俺は思わずビクッとして退く。
「あの日から怖いんじゃ無いの?」
的確に指摘してくる。
「血が少なければ、大丈夫だけどな…」
躊躇いがちに言う。ガラスが刺さった時の量なら大丈夫だけど…
「結構出てるよ?」
やっぱりそうなのか……。
「じゃぁ目を瞑って……」
「情けないな〜」
な、何だこいつ!!うぜー!!
「自分で言っときながら何だよ!」
「情けないものは、情けないよ」
ニタ〜っと光は笑う。
「もういい!!」
俺は勢いで進む。
「うゎっ……」
本当に血がかなり、出てる……。
「もうギブアップ〜?」
いやらしく光が俺の前に出て言う。
「くそっ…!しつこい!」
俺は一気に走って、やり過ごす。
敵はみんな死んでないけどうめき声をあげている。
「うっ……」
吐き気がする……。だけど後ろから光の足音が聴こえたから進み続けた。
「リハビリ成功♪」
私は笑う。…まわりは凄惨だけど。
「…お見事」
イヴェルトがそう言って何かに集中する。すると敵の怪我が治り血が戻っていく。
「じゃ、皆さんご機嫌よう〜。できれば追ってこないでね」
私とイヴェルトは二人を追って走り出す。
「光め〜……」
雄一がうなっている。
「そんなカリカリするなよ」
「ぐっ…全てが俺の敵にまわるか…」
…何かオーバーなリアクションをとるな……。
「俺が血が嫌いなのを知っててあんなことするなんて…」
結構、ふてている。…さっきのやりとりか。でもあれは…
「さっきのはあれと同じだ。嫌いな野菜を子供に食わせる親と同じだ」
雄一が理解出来ないという顔をする。
「つまりお前の、血に対する恐怖を克服させたんじゃねーのか?」
光にそんな思いやりがあるだろうか…?でもとりあえず、そう受け取っておくとしよう。
「雄いっち君!」
「どわっ!」
ガバッと光が後ろから飛びついてきて、床に押し倒された。
「機嫌よくなった〜?」
それは直接、本人に聞くことか?
「まぁまぁ…」
「良かった〜!」
光が立ち上がる。
…何なんだこいつ。
その時、異常な程大きな音の耳鳴りと頭痛が襲ってきた。
光は何ともないみたいだ。
─ワレノイシニシタガエ
「ぐっ……?」
変な声がした気がした。
「何だったんだ…」
俺も立ち上がる。
─いや、何かはわかる。多分フェイトの体の一部がこっちを支配しようとしてきたんだろう。
何かが俺と光の間を通り過ぎる。
「イヴェルト!?」
光がハッと叫ぶ。
私たちはイヴェルトを追う。
さっきの雄一君と、同じだ……!
でもいつまで経っても元に戻らない!
私たちがイヴェルトを追っているとイヴェルトと私たちの、間を割るように違う通路から誰かが出てきた。
「お前は……」
ガーズが呟く。
「サバイバルの時は楽しかったですね」
そいつが楽しそうに言う。が、目は楽しそうではない。
「主の指示ですが…君はああならないとは……残念です」
ああなるというのはイヴェルトの状態のことか……。
「あれはフェイトの心と肉体の一部を共鳴させたのです。
ちなみに主は何年か前から、フェイトに負けています。が、性格は保っています。フェイトの性格と主の元の性格が、混じったところでしょうか……」
主とはローのことだろう…。つまり…
「ローはやりたくてやってるわけじゃないのか」
雄一君が言った。
「そういう事だ。」
目の前の男は突然、敬語をやめた。
「私はフェイト様に従っている。あの娘もフェイト様の一部……。邪魔はさせない」
拳銃を二丁構える。
「面倒くさいな…」
雄一君が舌打ちをする。
「あぁ、君は通っても構わない」
男は微笑みながら言った。
「俺がいたほうが、早く終わる……」
雄一君は銃を構えようとする。が、ガーズが押さえる。
「奴はそう言ってるんだ。行け」
ガーズはそう言って拳銃を構える。
雄一君は躊躇っている。
「でも……」
「行って。私たちは心配しなくても大丈夫だから」
まだ、雄一君は行こうとしない。
「フェイトが復活しちゃうよ」
雄一君は拳銃をしまって、一言
「ごめん」
と言って走り出した。男は雄一君が横を通っても邪魔をせずただ背中を見ていた。
「これで欠片は揃った……。後は彼が、フェイトに飲まれるだけ」
こっちを振り返り、ニヤリと笑う。が
「よそ見してると、死ぬぞ?」
ガーズが銃弾を放つ。
「イヴェルトって…意外と……足、早いな」
息を切らしながら、俺は独り言を呟く。
「絶対に…止めないとな」
ひたすらイヴェルトを追って走り続ける。
「危ないな…」
男は笑いながら呟いた。私は思わず舌打ちをする。
「フェイトが連れるくらいだからただ者じゃないと思ったが身体向上化のトラクスの使い手か…」
男は弾丸を反射で避けた。
「私のトラクスは、大して強くない…。反射が異常に高いだけ…それでも貴様等を殺すには充分だ」
「避けて!」
神谷に言われて私は横に跳ぶ。先程までいた石床が砕ける。
「予知の力か……。面倒なやつだ」
右手の銃を神谷に向ける。
「またよそ見か?」
弾丸を放つ。が、先程と同じように器用に避ける。
「わからないか…?無駄なんだよ」
左手の銃を私に向ける。
「また来るよ!」
「それくらいわかる!」
横に避けると風を切る音がして、弾丸が掠る。
「あの時はそんな力、使ってなかった」
私は銃弾を放つが、また避けられる。
「能ある鷹は爪を隠す、だろう?」
「調子に乗らないで!」
神谷が引き金を引き弾丸を放つが、やはり避ける。
「調子になんか乗ってないさ」
神谷は次の攻撃を、予知して避けた。
どうにかしてあの力を止めないと……。反射ってことは、視覚外からの攻撃をしないと……!
「そんなの無理!」
私がバッと避けるが弾丸が足を掠る。
「仕方ない……」
ガーズはアサルトライフルを構える。
「同時に攻撃するぞ!」
…そんな簡単に行くのかな?
男が舌打ちをする。
…簡単に行くんだ。現実ってあっさりしてるよね。
いくつも銃声が上がる。
「連射しないでよ!滅茶苦茶、恐いんだけど〜!」
ガーズがアサルトライフルで連射し始めた。
「いいから撃てよ!」
「…わかったわよ」
私は弾丸を放った。




