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空間を越えて  作者: x雅x
5/9

着信05:村




「海なんて久しぶり!」


光が喜んでる。


「遊んでもいいが、目標を忘れるなよ」


ガーズが一つ、注意した。


「わかってるわよ」


俺はハッとした。いつの間にか光は水着に着替えている。


「まっ、私の目標は帰ることなんだけどね」


日焼け止めクリームを塗りながら言う。


「少し脱獄のことが落ち着くまでここにいるぞ」


落ち着くにはどれくらい時間が、かかるんだか…。


「雄一君、テンション低いね」


ビニールボールを膨らまして光が言ってきた。


「犯罪者にされたら誰でもへこむだろ?」


「そうかもね。私もガーズも一応犯罪者になったけど雄一君が一番目立つしね」


光はゴーグルを頭につける……


「…って何、着々と泳ぐ準備してんだよ!!」


「別にいいじゃない。雄一君も泳ごうよ」


元気だな……。


「俺は疲れたから、木陰で休んどくよ」


俺はのそのそと歩いて、木陰で休み始めた。

数m横には白いワンピースを着て麦藁帽子を被った女の子がいた。肌は何故か白い。


「こんにちは〜」


俺は声をかけてみるが、こっちを見たあとすぐに視線を海に戻した。


…一瞬で嫌われた?この子、たぶん俺と同年代くらいだけど雰囲気が大人びてる…


その時、女の子のどこかに俺は共鳴した。ローと同じように。


女の子もそれを感じたようだ。ピクッとしてこっちを見る。


「君…何て名前?」


意外にも今度は女の子の方から話しかけてきた。


「高倉 雄一。君は?」


「あたしは…イヴェルト」


…話題が無くなってまた沈黙。

何なんだ…この重い空気は!


「雄一…君って、変な体験したことない?」


イヴェルトが話しかけてきてビクッとする。


「例えばどんな?」


女の子は考える。


「……例えば、壷を割ってこれが数分前の状態に戻ったら、いいな〜って思ったら本当に戻ったとか」


「へ?」


突拍子の無い話だ。


「今までそんな経験無いなぁー…」


あったら便利なのに………。


「そっか…君なら、何かあると思ったのにな」


何かと言われれば、あるけどな…。


時間が止まったな。だけど、あれはよく思い返してみれば、城の外の人は普通に動いてたな。

空の雲も鳥も。結局あれが何だったのかわからない。


…変人扱いされたくないので言わないでおこう。


「イヴェルトは何かあったの?」


そんなことを聞くなら何かあるのだろう。


「………………、…………………。………………別に」


…何だあの空白は!?


イヴェルトは立ち上がって家に入ってしまった。結構、家は南国風とかは無く一般的な普通の家だ。もちろん砂浜じゃないところに建っている。


「…ローと同じ共鳴感?がしたけど性格は対照的だな」


だけどそれはそれで安心できる。

俺はしばらくイヴェルトが入った家を見ていたのだが…


「光ちゃんスーパースパイク!」


「どはっ!」


光の放った、ビニールボールが顔面に当たった。


「何すんだよ!」


「一人じゃ退屈なの〜!」


なの〜、じゃねえ!そんなこと知るか!


「光が勝手に泳ぎだしたんだろ!?」


「勝手って何よ勝手って!?」


光が両手を上に下に振り回しながら抗議する。


「おーい二人とも。こっちに来い」


ガーズが現れて、俺達を呼んだ。










「村長さんの家の、二階を借りることになった。挨拶しろ」


私は挨拶とか堅苦しいの嫌いだな〜。


やっほ〜!この家にお邪魔することに、なりましたー!!

どうぞよろしく!


って感じがいいな。よし、これでいこう。










「村長さんの家ってここ?」


神谷が私に聞いてきた。


「そうだ…ってお前何するつもり…」


言い終わる前に神谷がドアを勢い良く開けて


「やっほ〜!この家にお邪魔することに、なりましたー!!

どうぞよろしく!」


と言った。

……終わったな。私達は野宿決定だ。

が、村長は大らかで


「カカカッ!威勢がいいのぉ!」


と言って済ましてくれた。


「何かストーリーがどんどん外れた方向に向かってる気がする……」


雄一が意味不明なことを言う。


「何の話だ?」


「いや、こっちの話」


とりあえず村長宅の二階に上がる。


「あ、和室みたい」


神谷は草を編んで作った床板を見て言う。


「何だ?わしつとは?」


「こっちの話」


…二連続で言われたぞ。


「私は通信機を持ってくるから待ってろ」


と言い部屋を出る。









「通信機でローを捜すつもりかよ…」


無理だろ………。


「無理だと思ってるの?」


「うん、図星」


白骨化した兵士の、ことを思い出す。


「時間の進行?」


ふっと俺は呟いた。


「どうしたの?」


「いや、何でもない」


ローの力は時間に作用するのか?

それなら筋は通る。だが、ロー自身が速くなったのは一体…。わかんないな…。


色々思案しながら、部屋を出るとイヴェルトがいた。


「何でここに?」


「あたしが村長の孫だから…」


これは意外だ。


「そうなのか…短い間かも知れないけどよろしくな!」


俺は手を出す。

イヴェルトは少しまごつく。


「よ…よろしく」


そう言って俺の手を握る。ヒョイと光が部屋から顔を出す。


「着替えるから見ちゃだ・め・よ」


そういえば光は水着にタオルを巻いただけの格好だ。

…色気の一つも感じらんない。


「何?その不満そうな顔は!」


「こっちの話」


俺は階段を降りて、一階に行く。イヴェルトもついてきた。一階では村長がテレビを見ていた。何となく、村長に気付かれないように様子を伺う。


【数時間前にエイラス国の城の独房から囚人が脱獄して現在も逃走中。名前は高倉 雄一。年齢は15歳─】


「ッ!!」


やばい…。冷や汗がでてくる。


「安心しなさい、雄一君。わしは子供がそんな大罪を犯すとは思っておらん」


気付かれてた…。

村長はテレビの電源をOFFにする。


「濡れ衣か何かじゃろ?テレビはこの家にしかない。ここで安心して過ごしなさい」


村長は見逃してくれたが……。


「イヴェルト…いいね?」


村長はイヴェルトにも声をかける。

こくりとイヴェルトは頷いた。


「すいません…」


俺は思わず謝る。


「構わんよ。君は…まぁいいだろう」


…?何が言いたかったのだろうか。その時、ガーズが入ってきた。


「村長、ローという少年の情報はありましたか」


「無いのぉ…」


ガーズは残念そうにため息をつく。















「あれ?雄一君、捕まったの?」


主はテレビを見て、驚いた様子だ。


「まぁ脱獄はできたみたいですし、いいでしょう」


「良くないよ……。雄一君も欠片なんだよ?」


主は沈んでいる。


「欠片と言えば……最後の欠片は見つかったのですか?」


私はふと思い出して聞いてみた。


「あぁ…普通にこの世界にいたよ。空間さえ同じなら問題は無いからね」


時計から赤い光の球体が出てきて主の周りを回る。


「イヴェルトさん…だったかな?」













只今、俺は逃走中。森の中を突っ走っている。ガサガサと、後ろから音が聴こえる。


「わっ、わっ!!」


発砲音が聴こえて、俺の足下に弾丸が着弾する。


「くそっ!」


俺は振り返って、弾丸を放つが当たった気配は無い。

発砲音が一つして、俺の胸に赤い液体が付着する。


「負けた……」


俺はガクッと膝を折る。


「当然だ。キャリアが違う」


ガーズが現れる。銃に鮮やかな弾丸をリロードする。


─ペイント弾だ。


「…だけどな、ガーズ」


俺はニヤリと笑いながら立ち上がる。


「チームとしては、俺達の勝ちだ」


木の上から影が飛び降りてきて、ガーズの背中に銃をつきつける。


「囮作戦、一応だけど成功〜♪」


「何だと!」


ガーズが振り向こうとするが背中にペイント弾を発射する。


「ナイスだ、光!」


「イエ〜イ」


パンッとハイタッチ。


「実戦なら囮が死んだぞ…」


「実戦じゃないからこの作戦なのよ」


ガーズが悔しそうにうなる。これは、

数分前にガーズが


「私に二人がかりで銃撃戦で勝てたらかき氷をおごってやる」


と言ったので開始したゲームだ。

かき氷はこの世界にも元からあるらしい。まぁ一つぐらい、かぶるだろう。


「ちっ…仕方ないな」


ガーズは村に向けて歩きだした。


「でも光って金持ちだろ?別にやらなくてもよかったんじゃないのか?」


ふと気付いたことを聞いてみる。


「おごってもらうことに意味があるのよ。おごるのは服従の証でしょ?」


「…何か間違ってると思うのは俺だけなのか?」


涼しい顔して酷いことを言ったな。


「早く来い、お前ら!」


「言われなくても、行きますよ〜」


俺達もガーズのあとを追う。










「あー、くそっ」


ガーズがぐちぐち、しつこく言ってる。


「うるさいなぁ、静かにしろよ」


雄一君が文句を言いかき氷を口に運ぶ。


「一応、ガーズは私達の保護者なんだしさ。大人になってよね」


私も文句を言う。


「私が保護者なら、言うことを聞け」


「一応の部分が最・重・要」


私は強調しながら言った。


「ちっ…私は通信機でローの居場所を捜すから食ったら帰ってこい」


そう言ってガーズは村長の家に帰って言った。


「そんな簡単に見つかる訳無いって」


雄一君はかき氷にスプーンを何度も突き刺しながら言った。多分、シロップと馴染ませるため。


「何でそう思うの?」


私はロー君がどんな動きをしたか知らない。


「とりあえずヤバい」


「それじゃわかんないわよ」


ピシッと指摘する。


「仕方ないだろ?それ以上説明出来ない」


いつもの口癖を雄一君は言った。

私はため息をつく。


「仕方ない、仕方ないって…それだと、前に進めないよ?

いっつもそれで諦めてさ」


「何故、説教に…」


確かに何で説教に、なったんだろう。


「ま、俺には前にも進まず後ろにも戻らずがお似合いだ」


雄一君は皮肉を言う。


「明るい性格は、過去を振り返らずに前にどんどん進むし、暗い性格は、過去を振り返りすぎるし…どっちつかずが一番いいんだよ」


雄一君なりに考えてはいたみたいだ。


「みんながそうではないでしょ?」


私はかき氷を食べ終わって立ち上がる。


「そうだと思うけど俺自身はそうなると思う。それだけ」


雄一君もかき氷を食べ終えて席を立つ。


「てか、ガーズって誰と通信してるんだろ……」


そういえば確かに…


「ガーズの友達とかだと思うな〜」


私は予想をたてる。










私は通信機をいじっている。通信機と言っているが元々は、敵国の電波を傍受するためのものだ。

もしローというやつが無線で会話していたら傍受できるかもしれない


[明日じゃだめなのか?]


[駄目だめよ。私は─]


こんな会話はどうでも良い。


[わしは─]


[だから─]


[すまない─]


…当てずっぽうじゃ駄目か。まず、あいつが無線を使うとはあまり思えないな。










「…電波を傍受してたのか」


それって犯罪だよな。ガーズが俺達に、気がつく。


「やはり傍受だけでは無理だな」


「結論にいたるのが早かったな。まあ、仕方ないけど」


あいつは無線なんて使わないだろう。


「…時が満ちれば呼ばれる。それまで、何もしなくていい」


俺は何かに導かれるように呟いた。


「雄一君…どうしたの?」


…別にあんなこと、言うつもりはなかったんだけどな。


「何でもない」












外はもう真っ暗だ。…夜の海って怖いな。何か出そうだ。

でも、俺は外に出た。


昼間とは一転して、海はこっちを呑み込もうとしているような印象を与えてきた。


「花火があれば楽しそうだな」


この世界に花火は、あるのだろうか?


後ろに気配を感じる。俺はビクッとする。振り向くと白く、ぼんやり浮き上がった……


「怖っ!!止めろよ、イヴェルト!」


白く浮き上がって見えたのは月明かりに照らされた、白いワンピースだった。

しかも肌も白い。


「こんな時間に何してるの…?」


麦わら帽子を被っていない。


「特に何もしてない」


正直に言うとそうなる。


「イヴェルトは?」


波の音が耳に入る。


「君がいたから、出てきた……」


見てたのか!?ちょっと怖いぞ、それ!


「あと数日で…呼ばれるから…」


何のことだ?


「誰にだよ?」


イヴェルトは顔を上げる。


「……気付いてないの?」


「……?」


何でハッキリ言ってくれないのだろう。


「…時が経てばわかる」


彼女は家に帰って行った。


「時が経てば…か」


ぐっと体を伸ばしたらあくびが出た。


「そろそろ寝るか」


俺も家に入ることにした。















「でやぁっ!!」


「どわぁっ!?」


俺が部屋に入ると、光が枕を投げてきた。見事、枕は俺の腹に命中した。


「…何で今日はこういうことが多いんだ…」


畳に似た床にドサッと倒れる。


「敵将、打ち取った〜!」


光が手を振り上げて喜ぶ。光の横には、大量の枕があった。


「何でそんなに枕が……」


俺は枕を掴んで立ち上がる。


「村長さんに頼んだの!」


またいらない事を…横を見るともう一つ枕の山があった。


「…何、コレ?」


「ガーズだよ!」


つまり10分後の俺だな……。よくみたら枕の山から手が出ている。


「くらえ〜!」


光が枕を投げてくる。俺は片手で枕を掴んで投げ返す。


「それっ!」


光が足下の枕を指差すと手の動きに合わせて枕が一つ浮かび盾となる。


「トラクスを甘くみないでね」


「そんなこともできるのか……」


無駄使いしやがって……。


「持ち上げれるのは距離は半径1m重さは1kgまでならいくらでもオッケー!」

指を振ると枕が三個宙を飛びこっちにきた!


「うわっ!」


枕を振り回して叩き落とす。


「むっ、やるわね」


俺は落ちた枕を拾い投げ返す。


「それっ!」


光が枕を浮かせて、盾にするが衝撃に耐えきれずに落ちる。


「そこだ!」


俺は最後の枕を空いた隙間に投げ込む。


「きゃぁっ!」


衝突音がして浮いていた枕が全部落ちる。それは光の上に、山を築いた。


「ぐぅ……負けた」


枕の山の中から顔を覗かせて悔しそうに言った。


「さて、寝るか」


光が枕の山から這い出てきて、枕の山を浮かす。


「まだやるつもりか?」


「違う、違う」


枕はガーズのところにドサッと置かれた。光が電気を消す。

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