着信04:濡れ衣
「………ん」
どうやら寝てしまったようだ。窓からは朝日が差し込んでいる。気分も落ち着いたから親父にメールでもしておこう。
だが携帯を開くと、向こうからメールがあった。
001
8/2金7:13
親父
件RE:
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昨日そっちで事件に巻き込まれたんだってな…。手助け出来なくてすまない。
自分を見失うなよ。
「……手助け出来ないじゃねーよ。十分手助けになってるよ」
事件の内容に触れないでくれたのが一番嬉しい。
「いつまでも引きずっても仕方ないか」
ベッドから降りて、部屋を出ると
「雄一く〜ん!!」
と、光が突っ込んできた。
「立ち直ったんだね!よかったぁ」
昨日のように俺を、シェイクする。
「や、や、やめろ」
ガクンガクンと首を振りながらも何とか光を止める。
「ご飯食べたら私についてきてね」
見ると確かに朝食が既に用意されていた。
「何で?」
「国王が呼んでるから」
何か嫌な予感がした。
「失礼します」
光はそう言って部屋の扉を開けた。
中には国王がどんと座っている。
「座りなさい」
俺と光は向かいの席に座った。国王は険しい顔をしている。
「昨日の事件について君は犯人を目撃した以外何もしらないんだね?」
やっぱり事件の話か。
「知りません」
ふん、と国王は鼻をならす。
「不自然なんだよ。君だけ気絶しただけだなんてね」
国王は両手を組み、顔の前に立てる。
「国王様…一体何を?」
光が焦って聞く。
「君は何で銃声のした方へは向かわず、時の間に向かったのだね?」
俺は顔を引き締め、ギッと眼光を鋭くする。
「何故、君は昼間に犯人と会っているのだね?偶然にしても都合が良すぎる」
「国王様ッ!?」
光はかなり焦っている。
「君は犯人とどこかで繋がっていたのではないかね?」
国王が俺を睨む。
「全部、偶然です」
「そんなことがあり得るか!!」
机を叩きつける。
「少なくとも、君を捕らえれば何かわかるはずだ」
予想はしていた。
「国王様、何を…」
「黙りなさい神谷。君も何か関係あるのかね?」
国王様は怒りの矛先を光にも向ける。
「光は関係無い…」
俺は国王を止めておく。
「戦争を控えて、このタイミングで最終兵器ともいえるものを盗まれた……。
そして国は危機に陥った……。そして、君はどこかで事件に繋がっている。
高倉 雄一といったかな。君を連行する」
はぁ〜…勘違いも、行き過ぎれば他人に迷惑かけるんだな。
「国王様…!」
「光は黙ってて…。国王様、それで気が済むならどうぞ」
ニヤリと国王が笑う。どこからか兵士が現れて俺を立たせる。
「雄一君…!」
光にはどうしようもないだろう。
「仕方ないんだ」
俺はそう言って、
兵士に連れられ部屋を出る。
「意外と綺麗だな」
俺は独房で呟いた。服は私服のままだ。独房の中は意外に清潔で壁も床も真っ白だ。だが白は喪失感を想わせる色だ。
「窓の位置が高い…別に今は逃げやしないってのに」
まぁ今の状況も全部が最悪なわけではない。少なくともローは俺を容疑者にしたくなかったみたいだから。
「それにしてもちょっとイメージと違うかな」
独房だからか別に、檻にはなっておらず鋼鉄の扉があるだけだ。
閉所恐怖症にはたまらないだろう。
「…何するかな」
「どうしよう…」
あの丸デブ国王が、雄一君を捕まえちゃった……。
「どうすればいいんだろ〜……」
雄一君をどうするつもりだろう……。
先読みの力は怖いから使いたくない。
「はぁ〜……」
「ガーズ、新しい囚人の尋問だ」
看守が書類を渡してきた。私はため息をつく。
「めんどくせぇ…」
だが、書類を見た瞬間驚いた。
「雄一……」
足早に尋問室に足を運ぶ。
私がドアを開けると
「あ、ガーズだ」
などと緊迫感0の、雄一の声が聞こえた。
「どういうことだ……!」
対象的に私は焦っている。
「俺にきかないでくれよ」
雄一は肩をすくめる。
「城に来て3日で、尋問を二回受けるって凄くないか?」
「何の自慢にもならないぞ…しかも、まだ2日だ。雄一が、ここにきたのは夜の12時だったからな」
雄一は笑っている。
「随分と余裕だな」
「まぁ起きたことは仕方ない」
またそれか……。
「どうせ俺は独房にいてもいなくても、やることないし」
雄一が言う。元の世界の帰り方、調べてなかったのか…。
「まったく………。お前には調子を崩される」
ハハッと雄一は笑う。
「尋問を始める……と言っても答えは…」
「俺は何も知らない、だ」
そうだろうな…。
「犯人と知り合ったのはいつだ?」
「広場で遊んでた時。一緒に遊ぼうって言われた」
…ガキだな。
「本当に何も知らないんだな?」
「本当なんだから仕方ないだろ。知ってたらどんどん教えてやるよ」
これ以上尋問してもそれこそ仕方ないな。
「じゃあ、尋問は終わりだ」
早いな、と雄一が言う。
「聞くことも少ないからな」
私は部屋を出る。
「どうだった?」
看守が私に聞いてきた。
「何もしらないそうだ」
そうか…と看守は少し哀れみの声を出す。
「どうしたんだ?」
看守は躊躇いがちに話した。
「国王がもしあの子が何も言わなかったら拷問をするそうだ」
「そんな馬鹿な!」
相手は未成年だというのに……!
「俺も反対だよ…。でも国王の命令だ」
「拷問……か」
俺は外の話が聞こえてしまった。
「痛いのは嫌だな」
頬杖をついて考える。
何をするんだろう…
背筋が冷たくなってきたから考えるのを止める。
「これは仕方ないじゃ済ませれないな」
私は部屋でずっと、思案を続けている。
「あれをこうしてここを……駄目か」
その時扉が開いた。入ってきたのは……確か、ガーズって人だ。
「雄一の銃と携帯とかいうのを渡せ」
この人に初めて敬語を使われなかった。
「どうしたの?」
いくらなんでも突然過ぎる。ガーズが
言うか悩んでから話してくれた。
「雄一が拷問されそうだから私は雄一を連れて城を出る」
「ッ!!」
この国はあまり拷問をしない。が、よりにもよって未成年相手にやるとは……。あの肉だるま焦りすぎでしょ!
私は雄一君の銃と携帯と自分の銃と携帯も持ってきた。
「私も行く」
ガーズは私の目をじっと見てくる。
そして息を吐き出す。
「異世界の奴らは、みんなそんな目なのか?」
ガーズは私に背を向けて
「ついてこい」
と一言、放った。
「まさか入れられて数時間…いや数十分で拷問が決定するとは………」
国王はどれだけ焦っているのか……。
それは、平和を思ってなのか、兵器を失った怒りなのか…。…高確率で後者。
突然、独房の扉が開いた。思わずビクッとする。やっぱり怖いものは怖い。が、扉から入ってきたのは…
「雄一君…こっちに来て」
と小声で俺を呼ぶ、光だった。
「…新手の拷問?」
「違うわよ」
…よくわからないが助かりそうだ。
外に出るとガーズもいた。
「よし、神谷がついてきたおかげで独房の鍵を盗む手間が省けた」
光が胸を張る。
「えっと…どういう状況?」
説明無しでは飲み込めない。
「お城から脱出!」
「単純だけど凄いこと言ってるな…」
俺は嬉しいが…。
「でも俺の脱出を手伝ったら二人も犯罪者に…」
「いいのいいの!」
ガーズが縦に頷き
「雄一の荷物だ」
俺に拳銃と携帯を渡してくれた。
「おいお前ら!何をしている!」
早くも看守に見つかってしまった。
「急ぐぞ!」
俺達は走り出す。
「右に曲がったら追っ手に会うから左!」
私は先読みの力で、道を選んでいる。
「いたぞ!」
後ろから罵声が聞こえる。予想以上に、近かった。が、既に距離を離している。
「止まらないと撃つぞ!」
何てベタなセリフ…ガーズが振り返って何発か発砲する。
見事に追っ手の銃に当たり攻撃手段を無くす。
「…何でそんなに当たるんだ」
「慣れだ、慣れ」
本当に慣れだけだろうか………。
「この階段は大丈夫!」
私達は地下一階に、いるので上に駆け上がる。
「ハァ…ハァ…」
階段を駆け上がったので息があがる。
「えっと…右!」
私の力は曖昧なことしかわからない。
だから結構不安だ。
「いたぞ!」
後ろからまた追っ手がくる。今度は何も警告せずに撃ってくる。
「うわっ…わわ!」
雄一君の近くを弾丸が通り過ぎる。が、すぐに曲がり角を曲がり少しの間、安全になる。
「この窓は?」
ガーズが聞いてくる。
「大丈夫!」
するとガーズがスタントマンみたいに、窓を突き破る。
「無茶苦茶だ…」
雄一君はそう言いながらガーズが割った窓から出る。私もあとを追う。
「駐車場に行ってくる」
ガーズは離れていく。
「一人で行くつもりかよ!」
俺が叫ぶが行ってしまった。
「多分、大丈夫」
光はそう言うけど、心配だ……。
多分がつくから。
その時、横から射撃があった。
「うわっ!」
射撃は雄一君狙いだ。濡れ衣かかってるのは雄一君だから。
「大丈夫だった?」
大丈夫だから走っているのだろうが、一応聞いてみた。
「何とか……」
私は後ろを振り向いた。すると異常なものがあった。
横向で弾丸が止まってる?
そう思ったとき止まっていた弾丸は動き出し庭木に当たる。
「気のせいかな?」
また射撃がきたら、恐いので走る。
横から車が走る音が聞こえた。
「乗れ!」
ガーズが叫ぶ。
…車持ってたんだ。荷台には無理矢理、原付バイクが放り込んである。
「この世界に車が、あってよかった…」
助手席に座り思わず呟く。
「安心するのはまだ早いぞ」
確かにその通りだ。安心するのは城を出てからだ。
「にしてもそんなに俺の濡れ衣の罪って重いの?」
殺されかけたし…。
「う〜ん…。元の世界で考えると……。核兵器を個人で所有している人の核兵器の調達を手伝ってるくらいかな」
「え?例の北の国よりも俺って罪重いの?」
そんなにか……。
そりゃ逃げようとしたら殺されかける。
「あっ!気をつけて!」
光が注意を呼びかける。城門を見ると、戦車を持ち出していた。
「……そんなにか。そんなになのか」
俺は兵器を持ち出してでも止めなければならない存在なのか?
「…みんな止まっちまえ」
キンと耳鳴りがした気がした。兵士や戦車が止まる。
「あれ?」
よくみたら俺以外、みんな止まってる。光もガーズも含めて。何かチャンスみたいだし、車を出て戦車の中に入ってみる。
「こんにちは〜」
中には兵士がいたけど止まってる。
大砲の球があったから、拳銃で弾丸を撃って
「止まれ」
と言ってみる。 予想通り弾丸は大砲の球に直撃する寸前で止まった。
「えっと…」
このままじゃ兵士が死んじゃうな…。
「体だけ動かせないかな……」
すると兵士がパタッと倒れた。
「おぉっ!」
思わず目をキラキラさせてしまう。
兵士を外に引っ張り出した。
「これで、よし!」
車に戻って席に座る。
「もう動いてもいいぞ〜」
突然、全部動きだした。戦車が爆発して吹っ飛ぶ。兵士は景色が変わって驚いてる。
「な、何よ!?先読みしたのにこんな可能性一つもなかった!」
すっげー面白い!!だけど疲れがどっと溢れてきた。
「あとは頑張ってな…」
睡魔が襲ってきた。
「寝ちゃった…!?」
「さっきから【!?】が多いな」
私はガーズに突っ込まれ
「何で声なのにわかるの!?」
と言った。
「いや、上げ調子とか大きさで……」
車はそんな会話をしているうちに城の外に出た。
「最後はよくわからなかったけど、どうにか脱出、出来たね」
最後のことはわからない。が、思いあたることがないわけではない。
止まっていた弾丸のことを思い浮かべる。
「雄一君…君は何をやったの?」
私は寝ている雄一君の顔を覗きながら、言った。
車は街を突っ走って街の外にでた。
「そろそろ起きてよ雄一君〜」
ペシペシと顔を叩く。
「……んぁ?」
雄一君が間抜けな声を出して起きた。
「んー、おはよう。そしておやすみ」
何て呑気な……。
「眠気覚ましの往復ビンタ!」
「ぶっぶっぶは!」
これでよし!
「痛ぇ……」
雄一君が頬をさすってる。
「まぁ危うくもっと痛い目に会うところだったんだしいいじゃない」
私はケラケラ笑う。
「…俺って最悪死刑になったりしたのかな?」
ぶるぶるっと震える。
「しけい?なんだ、それは」
「えっ?」
私は雄一君に
「この世界に死刑はないんだよ。だから死のギリギリにおいやる拷問は恐ろしいことなの」
と教えてあげた。
「だからガーズは、雄一君を助けたんだよ」
「へぇへぇへぇへぇへぇへぇへぇ…」
「古い……」
俺は外の景色に見入っていた。街の文明は、発展していたがまだまだ手付かずの自然が残っていて、道路は舗装されていない土の道だ。
しかも周りは山だったり川だったり平原だったり森だったりとりあえず綺麗だ。
「これってどこ目指してるの?」
光がガーズに聞いてハッとした。そういえばどこに行くつもりか知らない。
「マタリア村だ」
何かマッタリしてそうな村だな。
…いや村はほとんどマッタリしてるか。
「あとどのくらい時間がかかる?」
「3時間だな」
…結構かかるな。
「親父に現状でも、報告するか…」
宛先 親父
件名
添付
本文
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濡れ衣着せられて、拷問くらいそうになったけど友達と共に脱獄、逃走中……。
…送信ボタンを押すに押せないな。
まあいいか。送信っと。
「トランプ持ってきたからやらない?」
「何でトランプがあるんだ……」
ニヒヒと光は笑う。
「この世界に来るときにたまたま持ってたのだ!そして、数少ない元の世界のものだから持ってきたのだ!」
そしてトランプをきりはじめる。
携帯から着メロが流れてくる。
001
8/2金11:17
親父
件大丈夫か!?
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ゆうちゃんに拷問だと!?許さない!!もしそっちに行けたら責任者を殴り倒してやる!!怪我は無いんだな?ゆうちゃんのためなら、お父さんは死ねる。
…予想通り。
まぁ普通の反応と言えばそうなのか…。
「じゃあババ抜きね」
「おい待て。二人だとどっちがババもってるかわかるだろうが」
俺がもっともなことを言うが
「いいじゃない。序盤からスリル満天のバトルじゃない」
と言ってトランプを配る。
「雄一君を助けに行く前にこの車に食料積んだんだけど、その時にお菓子とジュースも入れたから、食べながら楽しんでいこう!」
ガーズがため息をつく。
「…何か荷物が多いと思ったらお前そんなもの入れたのか…遊びに来たんじゃ無いんだぞ」
光がポテチそっくりのスナック菓子を開ける。
「いいのいいの!」
続いてジュースはコーラそっくり…
「何で元の世界と、同じものが…」
「私がお菓子会社と飲料会社に提案しました♪」
…色々やってるな。
「もうすぐ海が見えるぞ」
ガーズが言った。
「えっ、マタリア村って海の近くにある村なのか?」
雄一君がちょっと、嬉しそうにする。
「海、好きなの?」
私は聞いてみた。
「海水浴はあんまり行ったことが無いんだよな」
ふっふっふっ…。
「実は念のために、水着も積んでまーす」
「なっ!お前そんなものまで!」
ガーズが驚く。
「いいじゃない。娯楽の一つや二つぐらい。しかもここの海って遠浅で砂浜海岸だったよね?」
ガーズがため息をつく。
「お前、目的地知ってたんじゃねーのか?」
そんなわけない。
「ところでなんでガーズってそんな喋り方なのに一人称が私なんだ?」
雄一君が私も気になることをいった。
「大人だからだ」
意味不明な理由を返してくる。
「そういえば神谷。お前の拳銃も用意しといたぞ」
ガーズが私に向けて銃を投げてくる。
受け取って一つ聞いてみる。
「村で何するの?」
特に何もない、とガーズは言う。
「もちろん考え無しで村を選んだわけじゃない。村には指名手配のビラがこない。たまにくるが誰も見ないしな」
ガーズなりに考えたみたいだ。
「まぁ、最終目標はローとかいうガキを見つけることだ」
そう、それが達成出来れば雄一君の疑いも晴れるはずなのだ。
「見つからなかったらそれは仕方ない」
雄一君はいつもの口癖を言った。




