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空間を越えて  作者: x雅x
3/9

着信03:事件

残酷な描写が少し、入っているので注意してください。




「そんなあだ名、覚えなくていい」


光にそんな呼び方されたら俺は恥ずかしくてたまらない。


「ちぇっ、わかったよ」


つまらなそうに言って彼女は昼食の用意を始める。







「…って彼が見つかったとは言っても、どこに住んでるかわからないじゃないか!?」


主が頭をかきむしる。


「一応、城の兵士と一緒にいましたが」


頭をかきむしるのを主はやめた。


「まぁ向こうから呼んだから多分城に、住んでるはずだけど…」


少し主はうなる。


「とりあえず、この喫茶店を出ようか」


主は立ち上がる。

が、何かに気付いてピクッと止まる。

そして私に向き直った。


「…ごめん、お金貸して」


主は忘れ物が多い。







「さて、残り半日をどう過ごすかな」


光の作った昼食を食べ終えて考える。


「じゃあさ!私と一緒に街の孤児に食べ物配ったり遊びに行かない?」


「え?良いけど…」


今までそんなことをやっていたのか…。


「やったぁ〜!!」


両手を振り上げて、喜んでいる。


「何でそんなことをやり始めたんだ?」


「そんなこととは失礼な………。私は、親に会えない子の気持ちがわかるから、かな?」


……なるほど。


「孤児院はあるんだけど基準が厳しくてなかなか入れないの……。だから、私は孤児院にお金を寄付して援助してるんだけどまだ街には孤児院に入れないの子がたくさんいるの」


元の世界にもそんなところはあった…。


「ま、というわけで出発〜♪」


「え?今すぐかよ」


光はバスケットと俺を持って街へと歩きだした。









「あなたはどうしようもない方ですね」


ため息混じりに私は文句を言う。


「すまないルーア」


苦笑いしながら主は謝る。


「まぁいいでしょう。今日はどちらへ?」


「決まってない」


「帰っていいですか?」


「駄目だよ」

じっと睨みあいになる。









「ついたよ」


そこは噴水のある広場だった。


「子供たちは?」


すると光は見たことのない小さな笛を取り出して旋律を奏でた。どこからともなく子供たちが5人やって来る。


「その笛ってここの楽器?」


何となく俺は聞いてみた。


「そうだよ。難しくて一曲しか出来ないけどね」


光は笛をポケットの中に入れる。


「来てくれたんだ!お姉ちゃん!」


子供の中の一人が言った。子供たちは、みんな7歳くらいだ。光はバスケットの中からパンや果物を取り出し子供たちに渡した。


「ありがと!」


子供たちは勢い良く食べる。


「そっちのお兄ちゃんはだぁれ?」


俺を指差しながら言う。久々にガキ扱いされなかった…。


「俺は雄一だ。何の取り柄も無いがよろしくな」


俺はその子の目の高さに合わせて屈み、自己紹介をする。


「お姉ちゃんと一緒で変わった名前だね」


確かにここの世界ではこんな名前無いだろう。


「食べ終わったみたいだし遊ぼうか!」


「うん!」


光の提案を子供たちは素直に受ける。


「じゃあかくれんぼ!」


誰かが言ってジャンケンを始める。


「何でジャンケン、知ってるんだ?」


電化製品も似たものはあったけど大概、形が違ったりした。だけど今やってる、ジャンケンは元の世界と全部同じだ。



「私が教えたの」


光が答えを言ってくれた。


「ふーん…って、あ!」


会話をしていて俺はずっとグーを出してしまっていたため、負けてしまった。


「じゃあ、60秒だからね!」


子供たちが蜘蛛の子を散らすように走りだす。俺は目を瞑って数えだす。


「1…2…3…」







「57…58…59…60」


俺は目を開ける。


「みんな広場の中に隠れたんだよな…」


違ったら大変だ。

街中走り回らなければならない。


「かくれんぼも光が教えたのかな?」


その時、クスクスと笑う声が耳に入った。


「あそこか…」


そこは広場の隅の、樽が山積みになっている場所。横から覗くと一人目を見つけた。


「よし!一人目!」


自分が隠れそうな、場所を考える。


「じゃぁ、あそこかな」


停めてある自動車の下をのぞき込むと、二人も隠れていた。


「見つかっちゃった!」


二人は楽しそうに言いながら下から出てきた。


「あと三人かぁ…」







「まぁ、適当に歩こうよ」


主がそう言ったので私はそれに付き添っている。


「あ!あれは…」


主は広場を見て思わず言った。


「こんなところにも君はいるんだ」


主は一人の少年を見ている。彼だ。


「欠片はあと一つ…だけどどこにいるんだろう…」


主はうなる。


「捜させればいいのでは?」


一つ提案してみた。


「そうだけど…」


何故か主は悩んでいる。


「まぁいっか!」


主は片手を伸ばして腕時計を出す。

すると赤い光が出てきて球体を形作る。


「行っておいで」


赤い光の球体は空へ飛んでいった。


「ルーア、帰ってもいいよ」


主は突然言った。


「僕も広場で遊んでくるから」


そして主は走り出した。


「…子供ですね」


私は歩き出す。









「これで全員か!」


何とか俺は5人の子供たちと光を見つけれた。


「まさかマンホールの下に隠れるとは」


あれは驚いた。マンホールの蓋がずれていなかったら気付かなかった。


「そこのみなさーん」


どこからか声が聞こえた。振り返ると、俺と同い年くらいの少年が立っていた。


「僕も混ぜて下さいよ〜」


軽い調子で少年は、頼みこむ。


「別にいいよな?」


俺がみんなに聞くと首を縦に振った。


「ありがとう。僕はローといいます。よろしく!」


ローは嬉しそうに自己紹介をした。


俺はローのどこかに共鳴した。

理由はわからない。


「じゃあ、つぎは鬼ごっこ!」


…まぁいいか。


「ジャンケン、ほい!」


「あ!また負けた」


俺だけチョキで、みんなはグー……。


「今度は30秒だよ!」


「はいはい…」


まぁ、鬼ごっこならタッチすれば変わるし大丈夫か。







「…29…30!」

彼が数え終わって、あたりを見渡す。

主を見つけて走り出す。主は足が早くない。欠片としての力を使わなければ。


「よっしゃ!」


彼に主はあっさり、タッチされてしまった。主は孤児たちを追いかけていく。

私は少し微笑む。


「楽しそうな主を見るのは久々だ」


主を横目に私はまた歩き出す。









「雄一は、どこに行ったんだ……」


私は城の中をうろうろしている。


「銃の使い方でも教えてやろうと思ったのに……」


…まぁ雄一はまだ、子供だし焦ることは無いか。…何で私はこんなに雄一を気に入ったのだろう。


「目だと思うが…」


雄一の言うとおり、ロリコ…いや雄一は15歳くらいだ。断じてそんなことはない。


「……ん?」


一枚の貼り紙が目に入る。


内容は戦争は延期。だが、破壊のトラクスを持つ者がこの国につけば即刻、開始。


私は舌打ちをする。

「魔法使いだかなんだか知らないが私は反対だな……」


とは言っても国王には逆らえない。

ため息を思わずつく。









「そろそろ帰るかな〜」


光は考えながら言う。


「え、もう?」


まだ来て一時間も経っていない。


「私も色々事情があるの」


まぁ楽しかったが、幼稚なのでどことなく恥ずかしかったし…いいか。


「えっと…ローはどうするの?」


ローにも聞いておくとしよう。


「う〜ん…僕も帰るよ」


少し考えて言った。そしてどこかへローは歩きだした。







「どうでしたか?」


私は物陰から出てきて主に聞いた。


「帰ったかと思ってたよ」


主は驚いた顔をして言った。


「久々にああいうのをやって楽しかったけど少し幼稚だったかな」


正直な感想を主は言う。


「じゃあ、残りの欠片の場所はわからないけど完成体の意識をとりにいこうか」


主は城に向けて歩き出す。









「暇だぁ〜…」


俺は一人部屋の中でぼやいていた。

光は仕事に行ってしまった。


「面白い本でも無いかな…」


部屋にある本棚を、漁っていると伝承について書いてある本を見つけた。


「これにするか…」


椅子に座り分厚い、本を開く。


「時の間…あった」


目次に書いてあるページを開く。



かつてこの国の最終兵器だったトラクスの使い手フェイトと言う男がいたらしい。その男の力は絶大だった。が、フェイトは力に溺れたため非常に危険な存在になった。その時の王はフェイトを恐れ、腕のきく三人のトラクスの使い手…賢者を呼んだ。そして一人一人フェイトの力と体を奪い自らの体に封じた。そして最後にフェイトの心を時計の中に入れたそうだ。


…わけわかんない。ページをめくったら続きがあった。

賢者達が自らに封じた力と体は賢者達の子供に受け継がれていって今もあるとかないとか。


「…意味不明。まぁ伝説なんてそんなもんか」


その時、銃声が二発響いた。


「侵入者…?」


俺はどうしようか、迷ったが拳銃を持ち部屋を出た。

城の兵士たちが慌ただしく走り回っている。どこに侵入者がいるかわからないようだ。


俺は何故か時の間が気になった。銃声はまったく別の場所から聴こえたのだが…


誘い込まれるように時の間に向かう。









「見つけた」


僕は時計の中から、宝石のようなものを見つけ出した。


「あとは欠片を集めるだけだね」


僕は宝石を手に取る。突然後ろの扉が、開いた。


「貴様!何をしている!」


8人の兵士が現れた。

…ルーアに囮をしてもらったのによくここがわかったなぁ。


「でも、君たちじゃ僕には勝てないよ」


すると兵士たちは、銃を構えた。


「諦めろ…」


一人が言った。僕はナイフを取り出す。


「ナイフで我々と、戦うつもりか?」


「そうだよ?」


腕時計から赤い光が一瞬、瞬く。


「君たちの一秒は、僕の一時間」


僕はそう言ったけど速すぎて聞き取れていないんだろうな。僕は兵士に向けて走り出す。誰も銃を、撃ってこない。


当然だね。僕の時間が速くなってるんだから。


一番前の兵士の首をナイフで斬る。

血がゆっくり溢れてくる。液体ってスローで見るとネバネバしてるように見える。だけどこのままでは僕は一秒につき一時間分年老いてしまう。さっさと止めよう。


一気に血が溢れ出た。


「なっ!」


兵士たちが驚いてる。


「僕は年老いたく無いから……」


時計がまた瞬く。


「お前らの体の時間を一瞬で一気に進めてあげるよ」


兵士たちが干からびる。というか白骨化した。足音が、聴こえてきた。


また、兵士かな?

面倒くさい。







俺が時の間を覗くとそこには白骨と首を斬られた死体があった。


「な…んだ?これ」


「何だ、雄一君か」


緩い声が聞こえた。声の持ち主は…

ローだ。


「やっぱり欠片同士はお互いを引きつけるんだね」


クスクス笑う。


「これ…ローがやったのか?」


「そうだよ?」


当たり前のような、顔をして言う。


「まだ、意識が覚醒してないのか……。早く完成体の意識を復活させないとね」


宝石のような石を、手の中で転がせながらふーっと息を吐く。


「でも僕がこのままいなくなったら雄一君が疑われるかもしれないなぁ…」


ローの腕時計が赤く瞬く。


「寝ててね」


目の前からローが、消えたと思ったら首に衝撃が走る。







雄一君がぐらっと、前に倒れた。


「これでいいかな」


もう一度時計を瞬かせ廊下を走る。


「ルーアみっけ」


見つけたルーアの手を持ち走る。









時の間で物音がした。私は急いで、時の間に駆けつける。


「ッ!!」


白骨が7つと首が斬られた死体が1つ。それと雄一が倒れている。首を斬られた死体の血の池の中に雄一は倒れていて、怪我をしているかわからない。

脈を確認すると生きていた。


「よかった…」


いや、一つしか良くは無い……。

一人は首を斬られて死んでいるが、残りはどんな死に方をしたかわからない。


「武装していたのに何で………」


武装した兵士が何故刃物で首を斬られたんだ……。

わからないことが、多すぎる。


「……ぅっ」


雄一が目を開けた。


「何があったんだ?」


まだ呆然としているが真相を知らなければ。







「えっと…」


手からヌルッとした感触が伝わる。


「……?」


手を持ち上げて見ようとしたけど


「見るな」


とガーズが目を隠してしまった。

体が嫌に鉄臭い。


「何があった?」


ガーズがまた聞いてきた。


「隠さなくていい。兵士の血が全身に、ついてるんだろ?」


ガーズが一瞬、躊躇ったが目を隠している手を離した。


…血の池地獄みたいだ。


普段ならパニックになるだろうけど、

ローが持っていた石を見てから何かが、変になった。


「何があったか俺もわからない……。ここに来たらもうみんな死んでた」


「そうか……。誰か見たか?」


少し残念そうにガーズは言った。


「……ローっていう俺と同い年くらいの奴がいた。宝石みたいのを持ってた」


ガーズがハッとして時計を見た。


「何てことだ…」


「フェイトの心?」


本に書いてあったことを思い出した。


「恐らくな…」


その時、遠くに人が見えた。


「こっちに来てくれ!」


ガーズがその人達をよんだ。


…だんだん、普段の自分に戻ってきた。吐き気がする。


目を瞑ってやり過ごす一方で少し安心した。


普通の人と同じ感覚に戻って。












「雄一君!大丈夫だった!?」


私が部屋に駆け込んで最初に見たのは─


─血糊でベッタリの雄一君!血を見ないようにしてる。


「キャァァアァ!」


「うわっ!」


雄一君が耳をふさぐ。


「全然、大丈夫じゃないじゃない!?死にかけじゃない!」


私は雄一君の肩を、掴んで揺らす。


「違う…うぇっ!」


雄一君は急いで、トイレに駆け込んだ。嘔吐するエグい音が聴こえて数秒後、

青い顔になって出て来た。


「どうしたの?茄子みたいな色になって……」


「光が俺の体をシェイクしたからだろ!」


あれ?そうなの?


「その血は?」


全身にべっとりついた赤を指差す。


「…俺のじゃない」


雄一君は暗い顔をする。


「寝室で着替えてくるから間違っても、開けるなよ」


顔に作り笑いを張り付けて寝室に入っていった。

机を見ると事件の内容と犯人とおぼしき少年の写真が張ってある書類があった。


「うそ…昼に一緒に遊んだ子じゃない」










俺はガーズに渡された服に着替えて肌についた血は濡れタオルで拭き取った。

携帯が着信音を出す。


「…メールする気分じゃないな」









「雄一君…大丈夫かな…」


結局、雄一君は夕食の時間になっても寝室から出てこなかった。












「意識は手に入った…」


主はボソッと呟く。


「あとはこれを覚醒させて欠片を集めるだけ……」


月明かりが石を照らし出す。


「どうやって覚醒させるのですか?」


私は聞いてみた。


「どれか一つの欠片の中に入れるだけだよ」


理解出来ない。


「入れるとは一体……」


主は石を両手で持った。


「こうするんだよ」


ぐっと腹に石を押し付ける。一瞬、赤い光が溢れて石が消える。


「あと少し……」


月を見上げて主は、呟いた。

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