二日後 便利な機械
学校を出た後、摩希は、いつもと同じく、図書館に赴いた。
昨日、借りた、二冊の本を、返却口に返し、階段に向かう。
例によって、心理学関係の本を目当てに、四階まで上がろうとするも、しかし、途中で足を止めた。
なんとなく、今の自分の心境と、人間の無意識に関する内容とは、相性がよくない気がしたのだ。
地に足がついていない精神状態、というより、比喩的な意味ではなく、足取りが、ふらふらとする感覚がある。
むろん、原因は、雫ちゃんの件が、摩希にとって、キャパシティオーバーも甚だしかったことだ。
そのため、気分を紛らわせたい思いもあり、今日は、まったく別の分野の本を借りることにした。
地下一階に降り、以前から興味を持っていた、コンピューターやプログラミング関係の本を、六冊、書架から抜き出した。
それから、一階に戻り、カウンターに向かう。
図書館司書の女性、元木さんは、摩希が持ってきた本を見て、目を丸くした。
「摩希ちゃん、今日は、どういう風の吹き回し? 心理学系から一転、コンピューター的なものに目覚めたの? ネットワーク通信に、オーエス? シー言語? あたしには、まったく付いていけない内容だわぁ……」
「あたしも、詳しくは知らないんですけど、昔は、パソコンやスマートフォンっていう便利な機械があって、そういう機械を使いこなせれば、映像を観たり、逆に、配信したりすることが、できたらしいんです。夢があるなあーって、思いまして!」
摩希は、勢い込んで言った。
「うっ、うーん……。あたし、摩希ちゃんみたいに、頭がよくないから、機械の知識は、ゼロなんだけど、『テレビ』と呼ばれるものに、似てるのかしら?」
「あ、似てるといえば、似てるかもですね……」
「そうなんだあ――。もう、摩希ちゃんと話してると、自分が、図書館司書として、いかに勉強不足であるかを痛感するわ。摩希ちゃんが、ここに就職したら、色々と教えてもらわないとね――。
あと、館長に、摩希ちゃんのことを伝えたら、並々ならぬ期待を寄せてたわよ。一人でも多くの人に、本の素晴らしさを広めるべく、その博識少女に、色んな企画を催してほしい、って」
元木さんは、目を輝かせていた。
「ええーっ! 今から、プレッシャー、大なんですけどぉ――! でも、やりがいはありそう。なんといっても、読書は、人生を作る、大事な大事な栄養素ですもんねっ!」
摩希は、心から、にっこりと笑えた。




