↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS転生? いいえ、元からでした?  作者: 在間 薙
四章 記憶の欠片

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/51

第十三話

 扉を開くと、面白い光景が広がっていた。

 ぐるぐると、縄で縛られているヴォルが床に横たわっている。

 その前でメグが足を組みながら椅子に座っていて、「そろそろ白状したほうがいいんじゃないですか?」と冷たい目でヴォルを見下ろしている。

 その隣にはキュアが立っていて、その手には光り輝く針が見える。

 二人の表情は氷のように冷たく、思わず背筋が寒くなる。


「あ、おかえりなさい!」


 二人がドアの方に視線を向ける。満面の笑みを見せるメグだが、先程の冷たい表情との落差に思わず苦笑する。

 そして、メグはダジルの方を見て目を見開く。


「えっと……」

「ダジルだよ。頭がもとに戻ったから連れてきた」


 すると、ダジルは「なんだその言い方」と呟く。


「ふぅん……」


 メグは目を細める。

 テルには見せなかった反応だ。ただ、なんとなく、その頬が赤くなっているように見える。


(まさか……)


 もしや、ダジルの見た目が気に入ったのだろうか。

 確かに、今のダジルは綺麗になって、それなりの見た目になっている。でも、いくら女性的な側面があるとは言え、どちらかというとイケメン寄りだ。少なくともかわいい顔ではない。

 少し意外だと思いつつ、リンナの話を聞いてかなり嫌そうな反応を示していたから、性格は好みではないだろう。

 これからくるであろう落胆を想像して、なんとなく申し訳ない気持ちになる。


「誰」


 怪訝そうなダジルに、「さっき言った友達だよ」と説明する。


「メグはリバーの街でギルド職員をしていて、キュアは僕を助けてくれて……」

「メグ……、キュア……」


 ダジルは呟いて、二人を怪訝そうな顔で見つめる。


「キュア……?」


 ダジルは瑞希にだけ聞こえるぐらいの小さな声で呟く。


「知り合い?」

「……いや、気のせいだ」


 キュアは不思議そうな顔で首を傾げている。キュアはダジルに心当たりがないようだ。

 ダジルはすぐに二人から視線を外し、ヴォルに向ける。


「無様だな」

「ちっ……」


 ダジルはヴォルを冷たく見つめる。


「お前、よくもこの俺に手を出したな」

「……何のことだ」

 

 ダジルはヴォルに近づき、その頭を掴む。


「何を企んでるかは知らねえけど、お前とシルヴァが手を組んでることは知ってるんだ。お前は一体、俺に何をした?」


 ダジルが怒るのは今まで何回か見たことがあるが、今日のそれは、かなり感情がこもっている。


「ふん、リーダーのくせして部下に罪をなすりつけようってか? 俺は何もしてねえし、勝手にお前らが混乱を引き起こしただけだ」

「そうかよ」


 ダジルは手を離す。


「こいつ、ミズキさんを殴ったって白状しました!」


 メグがそう言うと、ヴォルは笑う。


「殴ってなんかねえよ。証拠だってねえんだから」


 メグとヴォル、どちらを信じるかと言われたらメグだ。「さっき言ってました!」と顔を真っ赤にするメグの隣で、キュアも眉を顰めて頷いている。

 ヴォルはダジルをじっと見つめる。


「あんたも、ずっと思ってたんだろ? 落ちこぼれがパーティーに寄生してるって。それに、友達だと思ってたなら、俺がその落ちこぼれを殴る前に止めるよなあ?」


 床に寝そべりながらも、ヴォルの表情は邪悪に歪んでいる。


「それに、そこの落ちこぼれを排除するって決めたのは、俺じゃなくてお前じゃないか」


 ヴォルの言葉に、部屋に沈黙が流れる。


「……そうだな。でもそれは俺の本意じゃない」

「はっ、もしかして俺が命令したとでもいうのか?」

「違う。俺にそうさせたのはシルヴァだ。そして、お前はシルヴァと俺を会わせた」

「へえ」

「ヴォル、お前はあの日、俺に何をした?」


 すると、ヴォルは「知るかよ」と吐き捨てる。


「答えろ!」


 ダジルはまた、ヴォルの髪を引っ張り上げる。

 しかし、ヴォルはじろりとダジルを睨みつけるだけで、何も答えない。


「お前、さっきミズキを殴った証拠なんてないって言ったよな」


 ダジルは手を離して、ヴォルを見下ろす。


「何するつもり……」


 すると、ダジルがヴォルの腹を蹴り上げ、鈍い音とともに、「ぐっ」とくぐもった声が響く。


「くそ! 何のつもりだ!」

「安心しろ、後でリンナが治してくれる。そうしたら殴られた証拠なんて無くなるぞ」


 ダジルはもう一度ヴォルの腹を蹴り上げる。


「早く口を割れ」

「だから、俺は何も知らね――」


 ヴォルは焦ったようにまくしたてるが、その前にダジルが再び蹴り上げる。

 鈍い音と、ヴォルの唸り声が響いて、思わず肩を竦める。


「ちょ、ちょっと、あの人は何をやってるんですか!」


 呆然とダジルを眺めていると、いつの間にかメグが近くに来て、袖を引っ張られる。

 キュアも、メグの傍で心配そうに瑞希を見つめる。

 思わずリンナの方を見るが、リンナも呆然とダジルを見つめている。


「えっと、どうしよう」

「どうしようって、頭がもとに戻ったんですよね! 全然おかしいままじゃないですか!」

「いや、さっきまでは普通だったんだよ」


 まさか、ヴォルに会ってまた何か異常が発生したのだろうかと考えるが、流石にそれはなさそうだ。


「リンナ、どう思う?」

「……おかしいわね」


 ダジルはまだ「言え!」と怒鳴りつけ、ヴォルを蹴り上げている。

 怒っているのだろうが、急に変わり過ぎだ。

 すると、テルが近付いてくる。


「あー、やっぱりこうなっちゃいましたね」


 テルは呑気な様子でダジルの方を見て苦笑する。


「えっと、やっぱりダジルはおかしいよね?」


 今まで、あんな様子のダジルは見たことがない。

 そう思ってテルを見つめるが、「おかしくはないと思いますよ」と意外な返答が返ってくる。


「いやいや、どう考えてもおかしいですよ! それとも、冒険者パーティーのリーダーっていうのはこんなにも暴力的っていうんですか!?」


 ダジルが蹴り上げるのを見て、メグは「ひぃ」と声を漏らす。


「怒っているだけですよ」

「……怒ってる?」


 思わず聞き返すと、テルは頭を掻きながら答える。


「はい。リーダーはヴォルに怒り心頭に発しているんです」


 思わずリンナと目を合わせる。

 ダジルが怒っている場面は何度も見たことがあるし、ヴォルに怒っているのは流石に二人にも分かる。

 でも、こんな風にその相手を殴りつけるのは見たことがない。


「こんなに怒っているのは見たことがない」


 すると、テルが苦笑する。


「俺は何回か見たことありますけどね」

「本当?」

「そりゃあ、友達といる時に、本気で怒る事は滅多に無いでしょう」


 困惑していると、テルは「止めますか?」と続ける。


「止めたいけど……」

「俺に任せてください」


 テルはダジルへと近づき、「そろそろ止めてください」と声をかけ、その肩を掴む。


「離せ」

「もう止めてください。副リーダーとミズキさん、二人共戻ってきたじゃないですか。ヴォルに逃げ場はないんですから、そんなことしなくてもすぐに白状します」

「……ふん」


 ダジルは渋々ヴォルから離れる。

 視界に入ったヴォルは、その顔を真っ赤に腫らして、げほっと血が混じった唾をはいている。


「おい、やり返したぞ」


 ダジルは瑞希を見つめて、「ふん」と満足げな表情を見せる。


「お前の代わりに殴り返してやったんだ。不満なら後で俺を殴れ」

「はあ」


 何となく、ダジルの行動が読めてくる。

 ダジルは、ミズキが暴力を振るうのが苦手なことを知っているから、その代わりにヴォルを殴った……。瑞希には理解できない思考だが、そう考えるしかないだろう。


「それで、ヴォルは何か言ったの?」

「知らないの一点張りだ」


 ダジルは「おい!」と叫んでヴォルの顔を引っ張り上げる。


「何をしたか話せ」

「知らねえって言ってるだろ!」


 ヴォルは痛々しい顔で、それでもダジルを睨みつけている。


「あのさ、本当に知らないんじゃない?」


 流石に、ここまで殴られて何も言わないのは不自然だ。


「んなわけあるかよ。しらばっくれてるだけに決まってる」

「でも、ダジルはシルヴァに何かをされてからの記憶が曖昧なんでしょ? ヴォルも同じなんじゃない?」


 次々と判明していく情報を繋ぎ合わせると、恐らくヴォルはシルヴァに協力をしていたわけでなく、シルヴァに命令されていたと考える方が自然だ。

 

「ふん、それでも、こいつの性根が腐りきってるのは変わりない。いいか、こんな図体がデカくなったアホの性根は、力尽くでしか治んねえんだよ」


 ダジルはヴォルを冷たい目で見下ろす。

 流石にこれ以上はやり過ぎだろうとリンナを見るが、リンナも怪訝そうな顔でヴォルを見るだけで、ダジルを止めようとはしない。


(どうしよう)


 瑞希の感覚だと、ここでヴォルにやり返すのは少し気が引ける。

 それに、もうヴォルの顔はボロボロだ。これ以上殴ったら可哀想だ。


「ヴォルは本当にシルヴァの事を知らないの?」


 ヴォルに尋ねると「……知らねえ」とぶっきらぼうな返事が返ってくる。


「若い女だ、黒い髪で、気持ち悪い喋り方をしていた」


 ダジルは補足するように続ける。


「……覚えてねえ」


(あれ?)


 よく考えたら、ダジルはシルヴァのことを覚えているようだ。

 シルヴァを忘れる事と、ミズキが持っている能力(スキル)に関係はないのだろうか。

 思考が脱線していると、ダジルが「ああ?」と唸る。


「覚えてねえ? つまり、女のことを知ってはいるんだな」

「ちっ」


 ダジルは「知っていることを全部白状しろ」とヴォルの頭を強く引き上げる。


「クソ! 分かった、知っていることは全部話すから手を離せ!」


 露になったヴォルの顔は、大きく腫れ上がっていて痛々しい。

 それと同時に、ミズキを殴っていた時のあの醜い表情が頭に浮かぶ。

 殴る時は楽しそうにニヤニヤしていたのに、今は痛々しい表情で「もう殴らないでくれ」と懇願している。

 そして、ヴォルはようやく口を開いて説明を始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。