第一話
「クソが!」
ヴォルは苛立ちを露わに机を叩く。
すると、ヴォルの周りにいた有象無象がちらりとヴォルを見て去っていく。
「クソ!」
何もかもが上手くいかない。冒険者パーティーに落ちこぼれなんて必要ない。そう思ってあの女の言うことを聞いたのに。
まずは邪魔者だと言われたミズキを排除した。ヴォルは「超再生」という能力を持ったミズキを自分のサンドバッグにする予定だったが、あの女がどうしても排除しろと言った。だからそうしたのに、上手くいったのは結局そこまでだ。
ミズキがいなくなってからダジルの幼馴染の女はなぜかパーティーを脱退して、それを知ったダジルはそれから役に立たない。その上、パーティーメンバーは勝手に脱退をしてしまう。
パーティー脱退にはリーダーか副リーダーの許可が必要なのに、なぜこんなことになっているのか。
ダジルの落ち込み具合が女のせいだと思って、ヴォルはダジルに別の女をあてがったりもしたが、断られてしまったし、何もかもが台無しだ。
「あの女にもう一度……」
もう一度ダジルを説得してもらおう。そう考えてヴォルは連絡を取ろうとするが、その手が止まる。
「あの女……? あの女って誰だ……?」
あの女に協力して、今の状況になっているのに、その女のことが上手く思い出せない。
「クソ! どういう事だ!」
ヴォルは苛立ちを露わに、もう一度机を叩く。
ふう、と怒りで震える声を吐いて、ヴォルは思考する。
「ふん、女の協力なんてもう必要ない。それに、リーダーが役立たずになったら、俺が代わりにやればいいだけだ」
女ごときであんな風になるなんて。ヴォルは自分の見る目が間違っていたのだろうかと顔を歪ませる。
「落ちこぼれは、俺達のような優秀な人間に逆らっちゃいけないんだ……」
ヴォルは小さく呟く。その瞳の奥には、薄暗い炎が静かに揺れていた。
◇
「ねえ、マウントの街での一幕は、どうだった?」
暗い部屋の中で、女の柔らかな声が響く。
しかし、その声に反応する声はなく、静寂が部屋を満たした。
「ふふ、ちょっと物足りなかったかしら。でも、面白いとは思わない? ずっと良い能力を持っていただけの愚か者の化けの皮がどんどん剥がれていく……。あの状態が、本来の姿なのよ……」
またもや沈黙が続くが、女は気にすることなく、軽やかな笑い声を響かせた。
「でも、あなたの言う通りちょっと物足りないわね……。もっと破滅してもらわなくちゃ。……そう、もっと、もっとよ」
その声は恍惚としていて、まるで艶やかな夜に響く嬌声のよう。
カツカツと歩く音が響いて、女の前に人影が現れる。
「体も、心も、全部壊れてしまえば良い。あなたがそうされたように、ね……」
歩く音が止まり、女は人影の胸の辺りに手を当てる。
そして女は妖しく笑い、人影の首へ腕を絡める。
「私達で、復讐を成し遂げましょう」
女は低い声で囁く。
「愚か者に、悪の鉄槌を下す……これが私たちのやり方よ」
返答はないが、女は嬉しそうに微笑んだ。
「愛しているわ、私の可愛いイア」
女は楽しげに微笑みながら、絡めた腕をそっと引き寄せた。




