第十三話
シャワーを浴び終わり、瑞希はベッドに横たわる。
あれから、リンナの泊まっている部屋に声を掛けたものの、返ってきたのは沈黙だった。もう寝てるだけかもしれないが、明日にでも話をしたい。
(でも、なんて言えば良いんだ)
瑞希は頭を悩ませる。
(「メグが言ってたよ、僕のこと、好きなんだって? ごめんね今まで気が付かなくて」)
そんな事を言われたら、瑞希だったら不快感で顔をしかめるだろう。
「はあ」
通信時計を見るが、誰からもメッセージは届いていない。
昨日、キュアと会ってから、キュアからの毎日の連絡も途切れている。
(ストーカー……)
キュアがストーカーだと言われても、そこまでの嫌悪感がない。
女の子だからなのだろうか。実害を受けているわけじゃないというのもあるのだろうか。
「キュアとも話をする必要がある」
仮に、ストーカーだったとしたら、ミズキに何かしらの好意を持っているということなのだろうか。
不意に訪れたモテ期? に困惑しつつ、瑞希はキュアにメッセージを送る。
『一度話をしたい。……』
それから続きに何を書こうと悩んで、書いては消してを繰り返す。
「はぁ……」
怒っているわけじゃない? ストーカーなのは別に気にしてない? 本当か教えてほしい?
どれも、自分の考えていることではない気がする。そもそも自分はキュアと何の会話をしたいのだろうか。
でも、このまま何も言わずに終わるのは嫌だ。
「まあこれでいいか」
『一度話をしたい。三日後に、一度マウントの街に戻る予定だから、それまでに直接会って話をしたい。よかったら空いている日を教えて』
一気に書ききって、そのまま送信する。
少し待つが、返信は来ない。今までは割とすぐに返信が来ていたが、やはり、気まずいのだろうか。
(僕は、気にしてないのに)
キュアが本当にストーカーだったとしても、友達になったんだから、ストーカーをやめてもらえばいいだけだ。
そう考えて、もしこれが男女逆だったら、そうとはいかないかもとなる。
(難しいな)
呑気な考えな気がして、少しリンナの心配する気持ちに共感する。
ふと、もしリンナに好意をぶつけられたら、どうしたらいいのだろうと考える。
「リンナと付き合う?」
想像して首を振る。確かに、一緒に過ごすのは嫌いじゃないし、楽しい。だけど付き合うといえば、一緒にデートをして、……キス、とかもするのだろう。
リンナとキス。ちょっと自分でも気持ち悪い妄想をしている自覚はあるが、その様子を想像して、顔をしかめた。
「無理だ」
リンナのことを恋愛対象には見られない。
性別がどうという話より、小さな頃のリンナを覚えているせいか、どちらかというと家族、兄妹のような感覚だ。
でも、友達じゃなくなるのは嫌だ。恋人にはなれないが、今までと同じ友達としての関係でいたい。
「なるほど、これがメグの言っていたことか」
相反する感情が、頭の中で事故を起こし、煙を上げる。
どっちかを優先すれば、どっちかを失う。どっちも取りなんてできない。難しい選択だ。
でも、まだメグの言っていた事が事実と同じとは限らない。
(リンナの感情が好意じゃなければいいのに)
そう思ってしまうのは、少し傲慢なのだろうか。
「はぁ……」
今日、何度目かわからないため息をついていると、通信時計がピコンと鳴る。
「『明日の夜、会いに行ってもいいですか』ね」
キュアからの返信だ。なぜか敬語になっているが、瑞希はすぐに『分かった、待ってるね』と返信をした。




