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REINCARNATE  作者: 翠星蟲
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第6話 姉の日記④「ケーキの飾り」

2022年8月14日(月)雨

 マッチングアプリを始めた。女性の同性愛者専用のものだ。先週泥酔して初体験を済ませてしまったので、もう勢いで始めてしまえと思って始めた。登録してから初めて気が付いたが、意外と登録者数が多い。こんなに同類の人がたくさんいたのだと思うとかなり気が抜けた。さっそくプロフィールを編集したら、とんでもない量のアプローチが来た。正直な話、顔は整っている自覚がある。が、メイクも自己流だし、学生だし、趣味もあってないようなものなので、真剣な交際というよりは遊び相手を探している人の方が多いのかもしれないと思った。まあでも嬉しいはうれしい。


2022年8月31日(水)晴れ

 マッチングアプリでマッチした人とのメッセージのやり取りに疲れてきた。十数人に絞ってやり取りしているけれど、それでもかなりの頭脳労働である。数枚の写真と断片的な情報で相手を短期間で判断するのは難しい。人事部とかの人はきっとすごいのだろう。今のところ会ってみたい人は数人いて、一応アポイントも取ったが、どうなるのだろうか。不安と期待でそわそわしている。


2022年9月10日(土)晴れ

 マッチングアプリで知り合った人とはじめて会った。私と同じく学生の人で、歳は一つ下だった。男の子にも人気がありそうな感じの可愛らしい小柄な子で、外大でアラビア語専攻だと言っていた。私のことは大人っぽい感じでかっこいいと言っていた。あまり内面を見せないからクールに見えているのかもしれない。カフェで当たり障りのない会話をしたが、特段印象的なことはなかった。付き合いを続けていけば色々な面が見えてきて好きになることもあるかもしれないが…ちょっとまだよくわからない。


2022年9月11日(日)雨

 今日もマッチングアプリでアポを取った人と会った。背が高くてボーイッシュな、いかにも女の子にモテそうな人で、俳優志望だと言っていた。正直顔は好みだった。向こうも多分見た目だと思う。慣れた感じでエスコートしてくれてドキドキした。フォトジェニックなライトアップの展示をしている美術館に行って、オシャレなレストランでディナーを食べた。これまでの人生で一番デートらしいデートをした気がする。また会いたいかもしれない。


2022年9月17日(土)晴れ

 今日会ったのは会社員のお姉さんだった。お堅い感じだったけれど、私も似たような感じなのでお似合いといえばお似合いかもしれない。デートというかお見合いみたいな雰囲気だった。生涯のパートナーを探したいということを言っていたが、それなら学生じゃない方がよいのではないかと思った。たぶんもう会わない。先週一緒に美術館に行った人とはまだメッセージのやり取りをしているが、お金がないという話をしてくるようになったのでブロックしようか迷っている。最初に会った子はずっとお互いに踏み込めない表面的な会話を続けている。ちゃんと踏み込まない私も悪い。というか年上なのだから私がリードすべきなのだろう。私が悪い。明日も初対面の人とアポがあるが、数人しか会っていないのに早くも疲れてきた。一生恋人なんてできないかもしれない。


2022年9月18日(日)晴れ

 今日待ち合わせのカフェに来たのは関西弁の華奢なお姉さんだった。新卒2年目で経理の仕事をしていると言っていた。快活で親しみやすい感じだったけれど、時々私の目をじっと見つめて、私の内面まで見通そうとしているような気がした。口調や見た目は全く異なるけれど、井澄先輩と少し雰囲気が似ていると思った。カフェのあと散歩に誘われた。初対面だったけれど、知り合いのような距離感で話しながら歩いた。たぶん距離の詰め方が上手い人なのだと思う。私は下手だからありがたい。別れ際にもう次の約束も取り付けてしまった。不思議な人だった。


2022年10月2日(日)くもり

 今日はまあやさんと2回目のデートだった。先週は疲れていて誰とも会っていないので、連続でデートに行っていることになる。前に会った時よりもスポーティなファッションだった。今日も散歩とカフェ。メッセージのやり取りは続けていたので気まずくなることもなく、お互いの身の上話なども話すことができた。まあやさんは家出同然に東京へ出てきたらしい。田舎にいたら高校卒業してすぐに見合い結婚させられてしまうそうである。そもそも女の方が好きだし仕事もしたいのにそんなことをされては敵わんと言っていた。私も自分が同性愛者だと誰にも言えていないことなどを話した。こんなに赤裸々に自分のことを話したのは生まれて初めてかもしれない。まあやさん相手だと安心して話すことができる気がする。また会いたい。


2022年10月22日(土)晴れ

 真彩さんと3回目のデートだった。今日は映画と食事だった。本名をお互いに言い合った。赤森真彩さんというらしい。毎日メッセージのやり取りをしているけれど、こういうやり取りって、自分から何を言っていいのか分からなくて、まだ私から送ったことはない。真彩さんも多分気にしていると思う。聞いちゃダメなこととか失礼じゃないかとか色々気にしてしまうというのは言い訳なのだが、とにかく慣れないので早く慣れたい。あと今日男性二人組にナンパされたとき、触ってこようとした男の腕を真彩さんが掴んで低い声で「やめろ言うてんのが聞こえへんかったんか?」と言って撃退したのはカッコよかった。真彩さんの地元ではあれくらい普通らしい。同じ日本出身とは思えない…


2022年11月21日(月)晴れ

 昨日は真彩さんと4回目のデートだった。真彩さんの家でおうちデートだった。家具やインテリアの統一感はないけれど、真彩さんの好きなものが集められた真彩さんらしい部屋だった。一緒にゲームをして過ごした。一緒に晩ご飯を作っているときに「凛花ちゃんがお嫁さんやったらこんな感じなんかなあ」と言われてドキドキした。ご飯を食べ終わってからもずっとそわそわしていると、真彩さんが「童貞の男の子みたいやなあ」と言ってからかってきた。で、言い返そうと思って真彩さんに顔を向けたとき、唇にキスされた。遠慮しないでもっと踏み込んでほしい、と言われた。頭が真っ白になって、気が付いたらベッドに真彩さんを押し倒していた。真彩さんが手を引いてくれたような気もするが…。夢中だったのであまりよく覚えていないけれど、刺激的な夜を過ごした。今朝にはお互い普通に出勤と通学で家を出たけれど、私たちは付き合っていることになったのだろうか。


2022年12月10日(土)くもり

 真彩さんと付き合っているのか未だによく分からなかったのだが、大人の恋愛というのはこういう感じなのだろうか。私は付き合っているつもりだったが、今日通話したときに聞いてみたら、めちゃくちゃ笑われた。そのとき私がよほど情けない声を出したのか、真彩さんは慌てて謝っていたが、結局付き合っているのかいないのかはよく分からなかった。もしかして遊ばれているのだろうか。そうだとしたら本当に悲しい。


2022年12月17日(土)晴れ

 先週からずっとモヤモヤしている。真彩さんが私のことをどう思っているのか知りたい。夏にワンナイトした名前も知らない人みたいに、ただの遊びなのか、本気なのか。ここまで仲良くなって素性も晒したあとで遊びだったと言われても困るのだが…。何が起こるかわからない。今日も通話したが、いつも通り過ぎて聞くタイミングを逃してしまった。来週の金曜の夜に会う予定だけれど、もう泣きそう。改めて自分が感情に振り回される単純なタイプだというのを思い知らされた感じである。早く会って抱きしめたいし抱きしめられたい。


2022年12月18日(日)晴れ

 来週真彩さんと会うときはクリスマスなのでプレゼントでも用意しようと思って買い物に出かけた。そういえば想い人に贈り物を渡すのは初めてかもしれない。井澄先輩にもちゃんとしたものを贈った覚えがない。こういうところで非常識さが出てしまう。もっとしっかりした大人になりたい。プレゼントを選ぶのは楽しかった。真彩さんの顔を思い浮かべながら、色々な店を回った。結局マフラーにした。面白みのない女だと自分でも思うが、大きく外すよりは良いと思ってしまう。ゴーヤのキーホルダーを選べる悠樹はやはりセンスがあるのだろうと思う。


2022年12月24日(土)雪

 昨日の夜は会ったときからすごかった。今日は私の家で会ったのだが、来るなり抱きしめられ、不安にさせてごめんと謝られ、全部うちに任してと言われ、一抱えもある大きすぎるケーキを渡された。ケーキには「I♡You!」と書かれた手作りらしい飾りがついていた。もうそのときから泣いてしまって、泣きながらマフラーを渡した。その後もちょっとしたことですぐ泣き出してしまい、泣きながらケーキを食べ、泣きながら風呂に入り、泣きながら寝た。そのたびに頭をなでてもらったけれど、頭がおかしいやつと思われたかもしれない。でもお互いの気持ちを確認出来て良かった。私ももっと感情を出して接していきたい。もっと心のコアな部分で真彩さんとぶつかっていきたい。


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