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REINCARNATE  作者: 翠星蟲
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第6話 姉の日記⑤「論文」

2022年4月1日(金)晴れ

 今日から大学院生。結局学部の時から研究テーマが変わったので心機一転である。細胞も扱ったことがないので培養から教えてもらう予定だ。新しいことを始めるのは、なんであれワクワクする。実質2年もないくらいの間に成果を出す必要があるので、気を引き締めて取り組みたい。


2022年5月3日(火)晴れ

 今日は祝日だというのに研究室に行っていた。細胞が増えるのが数日ずれてしまったので、あとの工程が全部ずれた。最悪。実験は上手くいってそうだったのでぎりぎり許すが、これで発現させたタンパク質の量が少なかったらもう一度初めからやり直しである。もしそうなら、ちょっと計画を見直す必要があるかもしれない。


2022年8月3日(水)くもり

 免疫測定系の構築が完了した。意外といいペースで進んでいると思う。明日から旅行に行く予定なので、しっかり間に合ってよかった。帰ったら学部の時の研究内容を発表する学会のポスターの作成をぼちぼち始めなければならない。論文にはならなさそうだけれど、就活にも使える業績なので無理なくクリアしたい。


2022年9月25日(日)晴れ

 毎週末に知らない人と会うというのは精神的にも体力的にもかなりしんどいことが分かった。なので今週はお休み。平日は研究で忙しいのに、休日まで出ずっぱりだと心身がもたない。と言いつつ、研究の参考になりそうな論文は少し読んだりして過ごしていた。久しぶりにのんびりした休日を過ごした。


2022年11月25日(金)くもり

 真彩さんとの一件を思い出すたびにドキドキして研究に集中できない。溶液の希釈倍率も間違えていたし、手順を一つすっ飛ばしてしまったし、ラボの報告会でもぼんやりしてしまって上手く受け答えできなかった。井澄先輩に夢中だったときでもここまでぼんやりしたことはない。ラボメンから体調が悪いのではないかと心配されたけれど、恋の病である。こんなことを書くなんて私も俗っぽくなったものだ。俗っぽくなかった時期なんてないはずなのだけれど、なんというか普通になれたような気がする。実験を何度もミスするのは困るので、明日からは気を引き締めたい。


2023年1月20日(金)晴れ

 2年の先輩たちは修論の追い込みで大変そうである。私も来年はあんな感じなのだろうか。修論は早めに仕上げて査読付き論文の執筆に取り掛かれているとよいのだが。もうすぐ始まる就活だったり、色々考えることは多い。真彩さんとの時間も大切にしたいし、計画的にこなしていきたい。私ならできる。


2023年3月10日(金)晴れ

 エントリーシートってどうしてこんなに面倒なのだろうか。文章生成AIで作成したという同期もいたので、私も使ってみようと思ってプロンプトを書いてみたが、しっかりしたものを作ろうとすると本文よりプロンプトの方が長くなってしまった。それなら自分で書いた方がまだマシである。さっさとキメてしまいたい。実験も進めながらなので寝る時間を削ってエントリーシートを書いているが、体力的にそんなに長くはもたない。真彩さんも心配してくれていた。今度真彩さんの就活がどんな感じだったか聞いてみたい。


2023年6月15日(木)くもり

 内定が出た。第一志望の製薬会社である。真彩さんに真っ先に報告したら、めちゃくちゃ喜んでくれて褒めてくれた。これで研究室の実験に専念できる。就活のせいで元の計画より遅れていた分を取り戻していきたい。就活の合間に参考文献を読み込んで使えそうなアイデアを計画に落とし込んだので、上手くいってほしい。


2023年8月27日(水)晴れ

 お盆開け早々、めちゃくちゃ良い結果が出た。時間がかかるだろうと思っていた工程が、私の計画した手順であっさり進んでしまった。なんならもう少しで修論を書いてもいいレベルだと思う。教授も見たことないくらい上機嫌だった。真彩さんにも言ったら、週末にお祝いしてくれると言っていた。楽しみにしている。


2023年10月13日(金)くもり

 修論はもうどうにでもなるから、査読付き論文の執筆に専念するように教授に言われた。ありがたい。追加のデータ取りも進めつつ、バリバリ書き進めることにした。英語で書くのは慣れていないが、こういうときAIが頼もしい。文法ミスや論文にふさわしい語彙などを提案してくれる。博士課程の先輩もアドバイスをくれたりして本当に良い研究室だと思う。教授たちから私も博士課程に進まないかと強く勧められたけれど、普通に社会人になりたいので申し訳ないがお断りした。


2024年2月13日(火)晴れ

 修論発表会が終わった。査読論文を執筆し終わった私にとっては消化試合のようなものだった。質疑応答も問題なく終えて、後輩たちから祝ってもらった。あとは修論の微修正だけして提出すればもう大学には行かなくてよい。気になるのは査読してもらっている論文のことだ。11月にサブミットして、順調に通っていると教授は言っていたが、どこでリジェクトを食らうか分からない。できれば在学中にアクセプトしてほしい。


2024年3月21日(木)晴れ

 卒業式だった。真彩さんはわざわざ仕事を休んでまで卒業式に来てくれた。両親は来なかったので、余計な心配をしなくて良いのは助かった。アカデミックガウンを着るのは気恥ずかしかったけれど、人生で今日くらいしか着ないだろうと思って着た。真彩さんは爆笑していた。論文のアクセプトはまだのようだったが、教授が言うには大丈夫そうとのことだった。


2024年4月26日(金)雨

 論文のアクセプトのメールが来た。新入社員研修が終わって家に帰った直後だった。すぐに教授に連絡した。真彩さんにも伝えると、明日私の家でパーティしようと提案してくれた。とても嬉しい。これで私の大学生活が完全に終わった感じがする。新入社員研修は結局最後まで偉い人がマインドをしゃべっているだけでイマイチ実感が沸かなかった。もっと企業の研究の進め方とか商品開発の考え方とかの話をしてほしかった。


2024年6月21日(金)晴れ

 アクセプトされた論文が印刷できるようになっていたので印刷した。ネットで見ることができるのでわざわざ印刷する必要はないのだが、実物として手元に置いておきたいと思ってコンビニで印刷した。実際に見ると、さすがにニヤニヤしてしまう。真彩さんにも自慢したところ、解説してと言われたので解説した。何にも分からんと笑っていたけれど、楽しい時間だった。論文は金庫に入れた。


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