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REINCARNATE  作者: 翠星蟲
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第6話 姉の日記①「映画の半券」

2018年4月9日(月)晴れ

 今日は学部の新歓があった。新入生ほぼ全員が参加するようだったので、私も参加した。学部の先輩の話を聞くことができたし、入学してから話したことのない子たちとも話すことができて意外と楽しかった。

 二次会に行く気はなかったけれど、仲良くしている子たちがどうしても行きたいというので参加した。お酒も少しだけ飲んだ。悪いことだけれど、私だけ飲まないわけにもいかない。お酒はまずかったけれど、二次会は結構盛り上がって楽しかった。


2018年4月14日(土)くもり

 今日は家で一人で過ごした。誰もいない空間で誰の目も気にせずのんびりできるなんて幸せすぎる。一人暮らし最高。先日の新歓の二次会でご当地ラーメン(ウニラーメン)を配っている変な先輩がいて、そのときもらったラーメンを食べた。ウニの風味は少し感じるが、だいたい普通のラーメンだった。少しがっかりした。


2018年4月27日(金)くもり

 入学直後から散々迷ってようやくサークルを決めた。散歩サークル「余白」。街歩きや猫の保護活動などをやっているらしい。結局学部の子とは別のサークルに入ることにしたのだが、先日ウニラーメンをくれた先輩がいた。変な縁もあるものだ。先輩も私のことを覚えてくれていたようで、気安く声をかけてくれた。ウニラーメンはどうだったかと聞かれて美味しかったと言ったら、絶対嘘じゃんと言われた。


2018年5月3日(木)晴れ

 今日はサークルに入って初めての活動日だった。数人のグループに分かれて大学の近くを散策した。同じグループに井澄先輩もいた。新歓のカラオケのときにも感じたが、先輩がいると場が盛り上がる。変なことをするし、変なことを言う。今日はパセリラーメンを配っていた。そういう芸風なのかと思ったけれど、面白そうなことは人と共有したいのだと言っていた。


2018年5月19日(土)くもり

 サークルの活動日だったので顔を出したところ、井澄先輩が一人だけいた。メンバーはそれなりにいるはずなのだが、珍しいこともある。先輩は研究室から脱走してきたと言っていた。せっかくだから歩きに行こうと誘われたので、学外をぶらぶらした。二人きりだといつもと少し雰囲気が違って、真面目に研究の話とか聞かせてもらった。あと意外と近くに住んでいることが分かってちょっとテンションが上がった。


2018年6月30日(土)くもり/雨

 サークルに行くと、スーツの井澄先輩がいた。髪もポニテにまとめて、きれいに化粧もしていた。大学院で研究室を変えるつもりで、先方に挨拶をしに行っていたらしい。最近は院試の勉強や研究室が忙しくて中々サークルに出られないと言っていた。私が研究室に入るころには先輩は大学院も卒業しているけれど、同じ研究室に行けたらいいなと思っているので、こっそり確認しておきたい。


2018年7月2日(月)晴れ

 学食でたまたま井澄先輩を見かけた。声をかけようと思ったが、同期らしい人と一緒だったのでできなかった。もしかして彼氏だったりするのだろうか。先輩から恋人の話は聞いたことがない。気になる。どちらにせよ私には関係のない話だけれど。


2018年8月31日(金)晴れ

サークルに顔を出すと、久しぶりに井澄先輩がいた。姿はちょくちょく学内で見かけていたのでそんなに久しぶりな気もしないけれど、話すのはかなり久しぶりだ。院試が終わったらしい。てっきりうちの大学のほかの研究室に行くのかと思っていたけれど、北海道の大学に進学したいと言っていた。院試も終わったので、すっきりして遊びまわっているらしい。北海道ミルクラーメンをもらった。やっぱりそういう芸風だと思う。あと、散歩帰りに思い切って映画に誘ってみたらOKをもらった。緊張したけど誘ってよかった。


2018年9月1日(土)くもり

 服を買いに行った。大人っぽいコーデにしようと思って結局一式そろえてしまった。こんなに浮かれているのは自分でも気持ち悪い。先輩からすれば何回か話したサークルの後輩と映画を見に行くだけなのだろうけれど、私からすれば人生で初めてのデートなのだから仕方ない。


2018年9月4日(火)晴れ

 今日は本当に最高だった。会ったときに服可愛いねって褒めてくれた。先輩も髪を編んでいていつもと雰囲気が違って可愛かった。映画の内容は正直微妙だったけれど、一緒にポップコーンを食べたし、晩ご飯も一緒に食べた。しかも帰りに「デートみたいだね」と言って腕を組んでくれた。心臓が爆発しそうだったし、顔もニヤニヤしていたかもしれない。バレていなかったか心配すぎる。ただ、何も知らない先輩を騙しているようで少し心苦しかった。


2018年9月15日(土)晴れ

 サークルで井澄先輩と会った。行きたかった大学の院試に合格していたらしい。3月には引っ越すと言っていた。嬉しいけれど悲しかった。気が付いたら先輩のことばかり目で追っていて気づかれていなかったか不安になった。どうせ叶わない想いなのにこんな気持ちになるなんて本当に無駄だ。


2018年12月22日(土)くもり

 サークルのクリスマスパーティに参加した。サンタ服のコスチュームを着た。着てほしいと言われて普通に嫌だったけれど、井澄先輩が可愛いと言ってくれるかもしれないと思って着た。それなのに井澄先輩は急用で来られなくなってしまったらしい。男子たちの視線が気持ち悪かった。井澄先輩は誰かと出かけていたのかが気になってパーティの内容はあまり覚えていない。お酒も少し飲んだ。


2018年12月25日(火)雪

 井澄先輩からメッセージが来た。サンタ服見たかったとのことだったので、着替えるときに一応撮っていた自撮りを送った。めっちゃ可愛いと言ってくれてすごく嬉しかった。自分がこんなに単純な生き物だとは思っていなかった。先輩は何してたんですかと聞こうと思ったけれど、聞けなかった。


2019年2月2日(土)くもり

 春休みに入ったけれど、井澄先輩は卒業研究で忙しくてサークルには来られないらしい。たまに学内ですれ違うとき手を振ってくれたりするのが逆に辛い。もっとお話ししたいし遊びに出かけたいけれど、邪魔をするわけにもいかない。卒業研究が終わったらすぐ引っ越しの準備などがあるだろうし、もう会える機会はあまりないのかもしれない。こんなこと思っても無駄なのに本当に嫌になる。


2019年2月23日(土)晴れ

 井澄先輩の卒論が終わったらしく、サークルに来ていた。今日で最後なのだと言いながら、アボカドラーメンを配っていた。やっぱり変な人だ。それにしても、もう来ないかもと思っていたので嬉しかった。先輩が来るかもしれないという期待だけでサークルにほぼ毎回顔を出していた甲斐がある。そして散歩帰りに先輩を美術館デートに誘った。忙しくて断られるかもと思っていたけれど、あっさりOKをもらった。めちゃくちゃ嬉しかった。


2019年2月25日(月)晴れ

 昨日は帰ってからずっと泣いていて日記が書けなかった。井澄先輩から、私が同性愛者なのかとそれとなく遠回しに聞かれた。そんなわけないじゃないですかって言ってしまった。先輩のことをずっとそういう目で見てきたのに、違うと言ってしまった。せっかく美術館は楽しかったのに、ちょっとした会話で全部が辛くなってしまった。井澄先輩はたぶんそこまで深く考えていなかったと思うのが余計に辛かった。笑顔で別れたけれど、本当はすぐにでも涙があふれそうだった。もう先輩に顔向けできない。しんどい。


2019年3月14日(木)くもり

 井澄先輩からメッセージが来た。今日北海道に発ったという知らせで、また遊びにおいでと言ってくれた。先輩は月末の卒業式にも参加しないようで、会えるとすれば私が北海道に旅行にでも行くときくらいだろう。絶対遊びに行きますなんて返してしまったけれど、会ったらどうなるのか分からなくて怖い。


2019年3月30日(土)くもり

 財布の整理をしていたら、井澄先輩と映画館に行った時のチケットの半券が出てきた。折れ目などもなくきれいなままだったので、カード類に挟んで財布に戻した。捨てられるわけがない。女々しくて結構である。


2020年7月3日(金)晴れ

 井澄先輩からメッセージが来た。ちょうど就活が終わったらしいのだが、なんと来年から東京に戻ってくるらしい。受かった会社の本社が東京にあると言っていた。自分がいるうちに北海道旅行に来なよと言われたので、夏休みに行ってもいいかと聞いたところ、ぜひとのことだった。本当に私も懲りない。卒業してから1年以上経っても、まだ井澄先輩のことが好きだ。半券もずっと財布の中にある。本当に女々しい。


2020年8月3日(月)晴れ

 北海道に来た。井澄先輩は相変わらず魅力的な人だった。一日中付き合ってもらって食べ歩きをした。ずっと先輩といたくて、お腹がいっぱいになっても次行きましょうとか言って無理やり色々食べた。今ホテルだが、お腹が爆発するんじゃないかと思うほど痛くて、さっきまでベッドで横になっていた。会うまではドキドキして緊張していたけれど、会ってからはそんな緊張はどこかへ行ってしまった。嬉しくて楽しくて、せっかく先輩が色々案内してくれていたのに、ずっと私のことばっかりしゃべってしまった。反省しているけれど、本当に最高の時間だった。


2020年8月7日(金)雨

 先日の北海道旅行は楽しかった。いまだに余韻でニヤニヤしてしまう。来年は東京で遊びに行けるね、と言ってもらった。明日から実家に帰省するので、顔に出ないよう気を引き締めなければならない。旅行のお土産で買った六花亭のバターサンドはもう全部食べてしまった。もっと買っておけばよかった。


2021年3月29日(月)晴れ

 東京に戻ってきた井澄先輩とご飯を食べに行った。今日はラーメンはなかった。社会人として準備を整えた先輩は大人っぽくて、自分がひどく幼稚な人間に思われた。でも先輩は青垣も大人っぽくなったと言ってくれた。どのあたりがと聞くと、メイクと言われた。まあでもそうかもしれない。私もあと数日で大学4年生で、もういい大人だ。ごはん中は私が所属する研究室の話や先輩の会社の話などで盛り上がった。幸せな時間だった。


2021年9月4日(土)雨

 井澄先輩とご飯に行ったら、左手の薬指に指輪をしていた。目ざとく見つけたふりをして尋ねると、ニヤリと笑って、今度彼氏と結婚すると言った。学生の時から地元に彼氏がいたという。水でむせたふりをした。いつかこうなると分かっていたのに、本当に私は愚かな人間だ。もちろんおめでたいことなのでしっかり祝った。祝って、私の恋も終わった。結婚式に招待されたので、当然のごとく行くと返事をした。家に帰って、映画の半券を財布から取り出して眺めた。そのあとカード類に挟んでまた財布に戻した。本当に救いようのないバカな人間である。


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