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防災公園の死闘(後)


 【三人称】


 「加減はせん。始めから本気で行くぞ。ルミエール!」


 アンナは精霊剣を自身の胸の前に構えると、相棒の名を短く叫ぶ。

 剣からポゥッとボーリングの玉ほどの大きさの光の玉が出現した。その正体は光の大精霊ルミエールである。


 「私に力を! 光子霊装(ルミエリオン)!」


 力強い声で彼女は聖句を唱えた。

 ルミエールはまばゆい光を放ちながら、アンナを包み込む鎧へと変化する。その背には溢れだした光が翼へと形を変えていった。


 大天使(アークエンジェル)


 アンナのその二つ名は、まさにその光り輝く鎧と翼に由来する。

 アンナはルミエールと一体化する事でその力を自在に使うことが出来るのだ。


 「輝ける聖光シャイニングホーリーレイ


 剣を一振りする。放たれた光の刃が、まばたきの間にスタークの右腕を根元から切り飛ばした。


 「ぐああああああっ!! 『エリクシール』!」


 スタークは激痛に絶叫しながらも特級回復魔法エリクシールを唱える。次の瞬間には新しい腕が生え、元通りになっていた。


 「部位欠損を即座に治すか。それだけの回復魔法の技があれば多くの人が救えるというのに、何故帝国などに従っている?」


 「人を救うだぁ? 馬鹿な事言うなよ。奪う方が楽しいからに決まってるだろ」


 「下衆が……」


 「余所見してんじゃねえ!」


 カイルの振り下ろした巨大な曲刀がアンナを襲う。光の鎧ごと真っ二つに切り裂きそのまま地面を抉った。

 

 「()っ……なっ?」


 真っ二つになったアンナの体は倒れることなく、陽炎のように揺らめいて跡形もなく消え失せた。


 「虚像だ」


 背後から聞こえた女騎士の声に慌てて振り返り、間一髪の所で横凪ぎに払われた精霊剣を曲刀で受け止める。しかし、光の速さで振るわれた剣の勢いは凄まじく十メートル程吹っ飛ばされた。


 「すごい……。これが大天使(アークエンジェル)の力……」


 ポツリと呟いたT@MAの言葉にアンナは苦笑する。


 「三十路を過ぎて天使などとは嫌味にしか聞こえんがな。さて、止めをさそうか」


 「流石に光の大精霊が相手じゃ叶わねえか。カイル! 退却だ!」


 「おう!」


 カイルは立ち上がり短く返事をすると、スタークのそばへと駆け寄る。


 「逃がさんよ。それに、貴様らが逃げる場所などこちらの世界には存在せん」


 「こっちの世界にはな。勿論帝国に帰るのさ」


 スタークも亜光速で迫ってくるアンナから逃げられるとは思っていない。嫌らしい笑みを浮かべると懐から黒い玉を出して頭上に掲げた。


 「まさか……? あれは暗黒水晶?」


 「ほう、お姫様は知ってんのか。帝国が禁忌を犯して作り出した暗黒水晶さ。何人もの生け贄の魂を捧げて作ったらしいが、こいつでトンズラだ」


 魔力を注ぎ、暗黒水晶を起動させる。禍々しい闇が水晶から立ち込めていく。


 「人工の黄金水晶だと? 異界の扉を開くというのか?」


 「や、やめなさい! それは異界への移動手段なんかじゃない! 帝国に騙されてるのよ!」


 優里が声を張り上げて止めようとする。

 魔力を注げば帝国に戻る事が出来る。軍上層部からそう聞かされ持たされたが、優里の言う通りスタークは騙されている。本当は使用者の魂を食らう禁忌召喚の道具である。しかしもう遅い。既にスイッチは押されてしまった。


 「そんな嘘で引き止めようなんざ……何だ?」


 暗黒水晶から漏れだした闇がスタークとカイルの体を包み込んだ。

 闇は彼らの魂を貪っていく。


 「ぎゃああああ!」


 「痛え! 頭が! 心が! ぐあああ!」


 しばらく絶叫が響いたが、それも直に消えた。

 闇が晴れた後、二人の姿はなく、代わりに地面には半径十メートル程の大穴が空いていた。禍々しい魔力が穴から溢れだしている。

 そして、亡者の声が聞こえてきた。アンナには思い出したくもない、十年前と同じ光景。


 「何だと! 地獄の蓋が開いたと言うのか!」


 人間の魂を生け贄に捧げ、ZZZ級ダンジョン地獄の入り口を召喚する。それが暗黒水晶なのだ。


 「タマ殿! ユーリ様! 自衛官と共に周囲の者達の避難を!」


 「アンナは? 貴女も逃げなきゃ!」


 「そうはいきません。時間を稼がなくては」


 その内に大穴から這い出てくる亡者で公園は溢れかえるだろう。コミケ参加者で大勢の人がいる、彼らを犠牲者にする訳にはいかない。アンナは亡者を迎え撃とうと大穴に近付いていく。

 それを止めたのはラヴィだった。

 アンナの肩に手を置いて引き止める。


 「ラヴィ?」


 「無理しちゃダメだよ。アンナ一人の体じゃないんだから。赤ちゃん、いるんでしょ?」


 そっと、優しくアンナのお腹を一撫でしてラヴィは微笑んだ。


 「――! 知っていたのかラヴィ」


 「タマ、ごめんね。私嘘をついてた」


 「え?」


 「日本語、ユーリと一緒にお母さんに教えて貰ったの。本当はね、ちゃんと覚えてるの」


 「お、お姉ちゃん?」


 「ごめんねアンナ。実は途中で全部思い出してたの。エルドラードの事、アンナの事、ユーリの事、お母さんとお父さんの事。でも、怖かったんだ。エルドラード王女としての運命を背負うのが。アレインとアンナと冒険者してるのが楽しくて、つい忘れてる振りをしてたの」

 

 ラヴィはアンナを守るように前に歩み出る。


 「でも、もう逃げない! これ以上奪わせない! タマ、黄金水晶を」


 「あ、ああ。はいラヴィちゃん」


 黄金水晶を受けとると両手を真っ直ぐに伸ばし地獄の入り口へと向けた。


 「ユーリ! 私と一緒に!」


 「う、うん!」


 腰のポーチから取り出した黄金水晶を握り締め、ラヴィの傍らに立つと同じ様に構えた。


 「ごめんねユーリ。ダメなお姉ちゃんで」


 「ううん、そんな事ないよ。会えて嬉しい」


 「今から取り戻そう。いっぱい色んな事話そう!」


 「うん……うん!」


 「その為にもあれを閉じよう。大丈夫、ユーリと一緒なら!」


 「お姉ちゃんと一緒なら!」


 二人は手を繋ぎ、逆の手で黄金水晶を掲げる。


 「我はユーノ・エルドラード」


 「我はユーリ・エルドラード」


 「「黄金郷の血を引くものなり」」


 「時の(ゆが)みを」


 「空の(ひず)みを」


 「「あるべき姿に今還さん」」


 二人の詠唱に合わせて黄金水晶が輝きだす。

 (つい)の黄金水晶は(つい)の王女の声に応じてその力を解放していく。


 「螺旋を(ほど)き真っ直ぐに」


 「こぼれた水を水差しに」


 「「黄金水晶よ、我らに力を!」」 


 黄金水晶から伸びた光が穴を段々と塞いでいく。

 そのまま地獄の蓋は閉じられる、誰もがそう思った。

 だが。


 ピシッ。


 空間がヒビ割れる。裂け目からとてつもない温度の熱気が溢れてくる。


 「な、何っ?」


 裂け目からギョロリと生き物の瞳が覗く。瞳の主は裂け目に爪を立てると一気に引き裂いた。

 

 グォォォォォオオオン!!


 全長二十メートル以上もある三つ首の魔犬。


 ケルベロス。


 地獄の底にいるはずの冥王の番犬が姿を現した。

 

 「な……なんで? 私たちはちゃんとやったはず」


 「暗黒水晶で無理矢理蓋を開けようとしたから……ケルベロスを怒らせちゃった……?」


 「のんきに言ってないで! 糞太郎先生! ラヴィちゃん! 早く逃げるんだよ! ほら、アンナさんも!」


 「私はこいつを足止めする。タマ殿、安全な所まで二人を頼んだ。すまないが自衛隊に装備を整えるように言ってくれ。私一人では多分持たん」


 「アンナ! 貴女も逃げなきゃ!」


 「それは出来ません。私は二人の騎士です。タマ殿!」


 「わ、わかった! ほら、行くよ二人とも」


 タマが二人の手を引っ張り連れていく。それを見届けると、アンナはケルベロスに精霊剣を構えた。


 グォォオオオオオオ!


 三つの頭がそれぞれ業火のブレスをアンナに放つ。

 黒い炎がアンナに迫ってくる。


 「くっ、アレイン! 何をしてるんだ! さっさと助けに来い! 貴様は父親になるんだぞ!」


 炎はアンナの体を飲み込んでいく。覚悟を決め、そっと瞳を閉じたその時。


 「『アイスフロスト』」


 辺り一帯を、肌を刺すような冷気が包み込んだ。

 瞳を開けると炎は消え失せて、代わりに目の前には十年以上連れ添ってきた魔導士がケルベロスから自分を守るように立っていた。


 「アレイン!」 


 天変のアレイン、ここに見参である。


 



 【今回の教訓】


 本作だと優里は一人で参加しているが、最低でも二人以上で行く事をお勧めする。

 特にサークル参加の場合、トイレにも行けないし知り合いに挨拶にも行けない。


 ぼっちでも大丈夫、並んでいる人に話しかけたら大体友達になれる。

 実際、T@MAのモデルである私の後輩氏は初めてコミケに客として参加した時は一人だったが、会場で色んな出会いがあったようだ。今ではたくさんの仲間と楽しそうにコミケに参加している。

 え? 筆者は後輩氏と一緒に行かないのかって?

 私は毎回一人だよバーロー。生粋のぼっちだから。





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