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ホワイトコミックマーケット


 【三人称】


 アレインが天変と呼ばれるようになったのはあるダンジョンを攻略した時である。

 空中要塞。

 今ではアレインのせいで空中庭園と名前を変えてしまったが、これも地獄と同じZZZ級の伝説のダンジョンだ。魔導大砲を何基も搭載しており、空中要塞を手に入れた者は世界を制すると言われていた。

 空中要塞は遥か空高くに浮遊しており、辿り着く術が人間には無かった。しかしアレイン一行はトマエ火山の最深部で鍵を手に入れる。

 鍵と共にあった石板には、この鍵は空中要塞のマスターキーであると書いてあった。海底神殿の祭壇にこの鍵を嵌め込めば空中要塞が目覚め意のままにする事が出来るという。

 アレイン達の心は踊った。

 トマエ火山にはとんでもない財宝が眠っている。そんな眉唾物の噂話をあてにやってきたが、まさかの大物が引っ掛かったのだ。逸る気持ちのまま海の底にある海底神殿へと向かった。

 海の主イビルクラーケンを倒し、重力魔法で海を割り海底神殿へと突入。最奥部で海王トリトンを屈服させ祭壇に辿り着いた。

 高鳴る胸を抑え、震える手で祭壇の窪みに鍵を嵌め込む。

 しかし、何も起こらなかった。

 外に出て空を見上げると、いつもと同じ様に空中要塞は浮かんでいた。

 そう言えば、祭壇からはとてつもない程の魔力を感じるが、鍵からは欠片ほどの魔力も感じない。

 鍵は偽物だったのだ。

 アレインはキレた。

 海王トリトンとの戦いは熾烈を極めた。何度死ぬかと思ったか。大体アレインは泳げないのだ。必死の覚悟をして海底神殿にやって来たのに鍵が偽物だと?


 「ふざけるなあああ!」


 ありったけの魔力を込めて重力魔法を行使した。勿論、対象は空中要塞である。

 結果。

 空中要塞は地に墜ちた。

 凄まじい轟音と共に空中要塞は大地に墜ちたのである。

 この様子を隣で見ていたアンナはしばらく開いた口が塞がらなかった。「とんでもない男を拾ってしまった……」と強く思ったと言う。

 意気揚々と空中要塞に乗りこんだが、内部に入る事は出来なかった。表層部には美しい庭園が広がるばかりで、入り口のような物も見当たらない。やはり、マスターキー無しでは起動しないらしい。落胆するアレインだったが、庭園を探索する中、神の産物(アーティファクト)である翻訳の指輪を見つけ、満足するに至ったのである。

 こうして、ただの観光名所になってしまった空中要塞は皮肉たっぷりに空中庭園と呼ばれるようになった。そしてアレインも、天の姿を変えた男、すなわち天変と呼ばれるようになったのである。



 ◇◆◇◆◇



 「アンナ、下がっていろ。あの犬の躾は俺がやる」


 「ああ、任せたぞアレイン」


 「アンナ。終わったら結婚しようか」


 「――! そ、それをフラグというのだ!」


 「俺がお前を幸せにするフラグだよ」


 「くっ、殺せ! 頼んだぞ、パパ」


 アンナはニヤニヤしながらラヴィ達の所へ下がっていった。


 「さて、地獄の番犬ケルベロスか」


 アレインは改めてケルベロスと対峙する。

 その巨体はまるでダンプカーを前にしているようだ。

 ケルベロスから立ち上る黒炎が周囲の温度を上げていく。


 グァァァァアアアア!


 再度放たれる業火のブレス。しかしアレインはレジストをしない。真っ向からブレスを受けた。


 「俺に属性攻撃は効かん。男の娘属性以外はな」


 アレインは無傷。黒龍のローブはいかなる属性攻撃も通さない。


 「おすわりっ! 『ハウンドバインド』」


 アレインの手から伸びた不可視の蔓がケルベロスを拘束し、強制的におすわりをさせる。


 グゥゥゥゥ


 「そうしていれば可愛いじゃないか。飼ってやりたいが生憎うちにはベビーが産まれるからな。ペットを飼う余裕がないんだ」


 クゥゥン……


 敵わないと悟ったのか、ケルベロスは大人しくなった。まるで小型犬のような媚びた鳴き声と共にアレインに尻尾を振る。

 ただの初級拘束魔法でケルベロスを手懐けてしまった。相変わらず無茶苦茶である。


 「可愛く見せても飼えんものは飼えん。しかしこいつを処分してしまえば冥王の怒りを買うか……ラヴィ、糞太郎先生」


 手招きをして二人の王女を呼んだ。トトッと二人はアレインのそばに駆け寄る。


 「時空魔法でこいつを地獄に返すぞ」


 「わ、私たちの魔力じゃこんな化物を異世界の、しかも地獄の底になんて無理よっ!」


 「俺がサポートする。俺の魔力をいくらでも使え」


 「うん! わかった! アレインが手伝ってくれるなら大丈夫だよユーリ!」


 「確かに、アレインがブッ飛んでるのは私が一番よく知ってるわ。わかった、やってみる」


 アレインの両隣に立ち、姉妹は黄金水晶を構える。アレインは二人の背中にそっと手を置いて魔力を注いでいく。


 「「黄金水晶よ! 我らに力を!」」


 黄金水晶から光が溢れ、ケルベロスの巨大な体を包んでいく。


 「ごめんねケルベロス。飼い主さんによろしくね」


 「お姉ちゃん、冥王なんてよろしくしたくないわ」


 「フフッ」


 光の輝きが増していき、眩しい閃光を放つ。光がおさまるとケルベロスの姿は消えていた。時空魔法、成功である。


 「よくやった二人とも」


 アレインはバンッ! と勢いよく二人の背中を叩いて称えた。


 「痛っ!」


 「えへへ、ありがとアレイン」


 「さあ、後はこの地獄のような暑さをなんとかしないとな」


 ケルベロスの出した熱気のせいで、周辺はとんでもない暑さになっていた。汗が噴き出してくる。たまらず氷結魔法を唱えた。


 「『アイスフ』……ん? あれは……」


 さっきまでケルベロスがいた所に瓢箪の形をした水筒が転がっていた。スタークの持っていた『大深林の湧泉』である。拾い上げて栓を抜くと、空高くにぶん投げた。中空に水が勢い良く溢れ出す。


 「『ヒートフレイム』!」


 無限に溢れ出てくる水を、火炎魔法でかたっぱしから蒸発させていく。


 「アレインさん? 何を?」


 「雲を作っているのさ」


 空気を水蒸気で満たし、風魔術で上空へと上げる。そして氷結魔法で上空の温度を下げていく。


 「すごい……! 雲が……!」


 「本番はこれからさ。『アイスフロスト』!」


 更に上空の温度を下げていく。雲は段々と灰色になっていき、やがて、千切れた。


 「嘘……! 雪よ! 雪だわ!」


 「こちらの世界に迷惑をかけた詫びだ」


 真夏に降った季節外れの雪。

 ビックサイトを優しい雪が包み、人々は空を見上げて白い息を吐いた。




 【今回の教訓】


 次話が最終話だ。読んでくれてありがとう。


 帰り道も興奮が冷めないかもしれない。だけどお祭りのテンションはビックサイトに置いていこう。

 家につくまでが遠足だけど、コミケはビックサイトだけがコミケだ!

 くれぐれも帰りの電車で美少女の具がはみ出そうな卑猥な紙袋とか人目につくように持つんじゃないぞ!

 みんな紳士で周りに迷惑をかけない、これを胸に刻んでおいてくれ。



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