第14話:興味の先
違和感は、まだ小さい。
だが、それは確かに存在している。
気づいた者から、巻き込まれていく。
視線が離れない。
「……チッ」
吐き捨てて、
ルイは、その背を追う。
後ろで、
鎧の女の足音が遅れる。
セレナの指だけが、
最初から同じ方向をなぞっていた。
そのときだった。
空気が、歪んだ。
「……っ?」
気づいた瞬間、
もう遅い。
影が飛び出した。
一直線。
セレナへ。
「危ねえ!」
ルイが踏み込む。
間に合わない。
——はずだった。
セレナの指が動く。
ほんのわずかに。
その瞬間、
影の動きが鈍る。
「……は?」
意味が分からない。
だが、
その一瞬の遅れに、
鎧の女が反応した。
踏み込む。
剣は抜かない。
身体でぶつける。
鈍い音。
影が崩れる。
ルイがそのまま押さえ込む。
「動くな!」
ローブの男。
息が荒い。
目の焦点が合っていない。
「……なんだこいつ」
ただの襲撃じゃない。
動きに、
妙な違和感がある。
「……魔術師よ」
鎧の女が低く言う。
ルイは顔をしかめる。
「……いや」
違う。
「こんな動き、見たことねえ」
速いわけでもない。
正確なわけでもない。
だが、
何かがおかしい。
男がもがく。
「離せ……!」
「うるせえ」
ルイが押さえつける。
そのとき、
九条が近づいてきた。
何も言わない。
ただ、
男の動きを見ている。
気味が悪いほどに。
「……おい」
ルイが声をかける。
反応はない。
九条は、少しだけ頷いた。
「……ちょうどいい」
「は?」
意味が分からない。
九条は視線を外さない。
「どこまで理解しているのか、見てみたい」
空気が変わる。
鎧の女の視線が揺れる。
止めるべきか。
だが、
言葉が出ない。
ルイが吐き捨てる。
「……あんた、何者だよ」
一瞬だけ間。
「……わたしはレオナ」
短く返る。
それだけだった。
九条が言う。
「連れていく」
命令じゃない。
だが、
逆らう気にならなかった。
ルイは舌打ちする。
「……クソが」
それでも、
手を離さない。
セレナの指が動く。
同じ軌跡。
完全に一致している。
九条が歩き出す。
全てが、
その後を追った。
ここから、九条の「好奇心」が物語に干渉し始めます。
まだ本人は何もしていない。
ただ見ているだけです。
それでも、周囲はすでに巻き込まれ始めています。




