第13話:一致してるはずのもの
壊れた前提は、
一度では終わらない。
繰り返されたとき、
それは“規則”に変わる。
足音が、遠ざかる。
一定の速さで。
迷いのない歩き方。
ルイは舌打ちした。
「……意味分かんねえ」
理解できない。
だが、
分からないまま終わらせるのも、気持ちが悪かった。
視線が離れない。
「……チッ」
吐き捨てて、
その背を追う。
騎士は、その場に残っていた。
動けない。
命令はない。
守るべき対象も、定義できない。
「……守る……」
言葉が崩れる。
「……何を……守る……」
続かない。
セレナの指が動く。
空をなぞる。
何も掴んでいない。
それでも、
九条の進む方向と同じ軌跡を描いていた。
迷いはない。
理由もない。
ただ、合っている。
縄は、そこにある。
だが、
それを外そうとする者はいなかった。
縛られているという前提だけが、
残っている。
一人が立ち上がる。
一歩、踏み出しかけて——
止まる。
どこへ行けばいいのか、
分からない。
別の一人も動く。
同じように、止まる。
誰も、逃げなかった。
逃げるという行動が、
そこに存在していなかった。
「立て」
商人の声が落ちる。
一人が反応する。
ほんの一瞬、遅れる。
ルイの視線が止まる。
「……まただ」
別の一人が立ち上がる。
同じように、
わずかに遅れる。
「……さっきと同じだろ」
騎士の呼吸が乱れる。
否定できない。
「……違うわよ」
一度、言い切る。
だが、
すぐに言葉が揺れる。
「……違っているはずだ」
セレナの指が動く。
一度、止まる。
もう一度、
同じ軌跡をなぞる。
完全に一致していた。
ルイの表情が変わる。
「ズレてるんじゃない」
「……合ってない」
言い切る。
だが、
すぐに言葉が止まる。
何と、
合っていないのか。
それが分からない。
騎士の手が、剣に触れかけて止まる。
「……守るって……」
その言葉が、わずかに崩れる。
九条は振り返らない。
ただ、
“何がズレているのか”だけを見ていた。
現実は動いている。
だが、
同じ形で、
わずかにずれている。
繰り返されている。
それだけが、
確かだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
繰り返された違和感は、
やがて“偶然”ではなくなります。
それは、すでに起きている現象です。




