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第11話:騎士は何を守るのか

正しさは、疑われた瞬間に揺らぐ。

足音が、止まる。


乾いた音だった。

迷いのない、一直線の歩き方。


「——そこまでだ」


声が落ちる。


振り向く。


そこに立っていたのは、一人の女だった。


装備は簡素だが、隙がない。

無駄のない立ち方。

視線は、まっすぐ男に向いている。


「貴様だな」


「市場を混乱させたのは」


「混乱?」


男はわずかに首を傾ける。


「成立条件を外しただけだ」


「……詭弁だな」


「人を解き放ち、秩序を崩した」


「それを混乱と言う」


「違う」


男は静かに言う。


「元に戻らないだけだ」


空気が、止まる。


「……なら問う」


女は一歩踏み出す。


「騎士とは何だ」


男は、わずかに間を置いた。


「定義を先に置くのか」


「……面白い」


間を置かず、女は言った。


「弱きを守り、秩序を保つ者だ」


揺らぎのない声だった。


「……そうか」


「では——」


「商品を守るのか」


一瞬。


言葉が止まる。


「……違う」


わずかに、声が揺れる。


「彼らは——」


続かない。


喉まで出かかった言葉が、形にならない。


「……非常にいい」


男は小さく呟いた。


女の視線が揺れる。


「それだと、守るものが決まらない」


沈黙。


女の手が、剣にかかる。


「……黙れ」


その声には、初めて感情が混ざっていた。


女の声が、わずかに揺れる。


「……貴様は——」


言葉が、続かない。


「……守っていない」


その言葉は、


自分自身に向いていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


正しさは、疑われたときに初めて形を失います。


揺らいだものが何に変わるのかは、まだ決まっていません。


ただ一つ言えるのは、


——もう、元には戻らないということです。

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