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96/559

96 木通とも書いてある

 守衛のライトウェイ、初老の男性。

 立派な体躯を持ち、いかにも門番という風貌。

 少々、腹は出かかっているが、それも貫禄というもの。


 正門前で起きる様々ないざこざに対応してきた。

 学内に入ろうとする警察を追い返し、マスコミにも門前払いを食らわせ、日々訪れる営業マンをその訪問理由も聞かずに追い払う。


 彼女ハントの、あるいは彼女を待つ若者たちの車を整列させ、学生たちにできるだけ声をかけて挨拶を促す。

 時には宿直もこなすし、植栽の手入れもこの男の手による。



 守衛は数人いるが、特にこのライトウェイと親しかった。

 この男は植物好き。キャンバスの木々の様子やメンテナンスのことなど、挨拶代わりの話題にする仲だ。

 今日も、裏山で撮影した写真を見せてくれるという。

 珍しいものがあれば聞いておいて損はない。今から見に行くのも一興。



「先生、ほら、これ」


 守衛が立ち上げたPCに、たわわに実ったアケビが映し出された。

「ほう」

「珍しいものじゃないが。とはいえ、こんなもの、今の子たちは知らないでしょう」


 守衛は俺がこの時期、裏山に学生たちを連れて行くのを知っている。


「どこら辺に?」

 こう問うのも予測していたのだろう。

 壁に張り出された大学敷地全体図の上の端の方に、すでに赤い印が打たれてあった。木通とも書いてある。


「なるほど。そこまでは足を延ばさないなあ」


 印は小滝のさらに上部にある。

 残念ながら、学生たちにアケビの白いどろりとした果肉を見せたり、舐めさせてみたりするアトラクションは難しい。時間的にも行程的にも。


「そうですか。じゃ、ここは?」

 守衛の太い指が地図を這った。


「確かこの辺にも」

 あるという。

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