93 一応はさよなら、と小さく手を振って
こんな時、ふたり同時に終わってくれたらいいのに、と思う。
三人で帰ればいいじゃないか、と。
しかし、決してそうはならない。
意地の張り合いなのだから。
最後まで居残り勝ちした人が俺と帰ることになる、あるいは一緒に帰る権利を得るという、いつしかできてしまったパターンには、いささかうんざりしている。
時間の無駄。
お互いに。
それに、なんとなく不公平。
陰口を叩かれているかもしれないのだ。
ミリッサ先生は気に入った学生を居残らせて、一緒に下校しようとしていると。
そういえば、職員が居残りの様子を見に来たこともあった。
何かいい手はないものか、と思うが妙案はまだ浮かんでこない。
チャイムと同時にプリントを集めればそれで済むのだが、中途半端な出来のものを採点するのも、嫌だった。
案の定、メイメイはかすかにため息をついて、
「できました! すみませんでした! 先生、遅くまで」
と、ランにチクリと嫌味。
そうか。
メイメイのサークル入部はつい数日前。
入部の動機など、なにか話したかったのかもしれない。
それなら、なおさらランと一緒に。だが、誰に対してもこちら方から一緒に帰ろうか、とは絶対に言えることではない。
とうとう教室にはランだけに。
もともと手は動いていない。
メイメイが出て行ってすぐ、ランも一応はさよなら、と小さく手を振って教室を出て行った。




