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93/559

93 一応はさよなら、と小さく手を振って

 こんな時、ふたり同時に終わってくれたらいいのに、と思う。

 三人で帰ればいいじゃないか、と。

 しかし、決してそうはならない。

 意地の張り合いなのだから。


 最後まで居残り勝ちした人が俺と帰ることになる、あるいは一緒に帰る権利を得るという、いつしかできてしまったパターンには、いささかうんざりしている。


 時間の無駄。

 お互いに。


 それに、なんとなく不公平。

 陰口を叩かれているかもしれないのだ。

 ミリッサ先生は気に入った学生を居残らせて、一緒に下校しようとしていると。

 そういえば、職員が居残りの様子を見に来たこともあった。


 何かいい手はないものか、と思うが妙案はまだ浮かんでこない。

 チャイムと同時にプリントを集めればそれで済むのだが、中途半端な出来のものを採点するのも、嫌だった。



 案の定、メイメイはかすかにため息をついて、

「できました! すみませんでした! 先生、遅くまで」

 と、ランにチクリと嫌味。

 

 そうか。

 メイメイのサークル入部はつい数日前。

 入部の動機など、なにか話したかったのかもしれない。


 それなら、なおさらランと一緒に。だが、誰に対してもこちら方から一緒に帰ろうか、とは絶対に言えることではない。



 とうとう教室にはランだけに。

 もともと手は動いていない。


 メイメイが出て行ってすぐ、ランも一応はさよなら、と小さく手を振って教室を出て行った。

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