79 一緒にいいですか
雨。
木曜日、大学へ出勤するために降り立つ駅。
阪急電車御影駅前、タクシーは出払っていた。
大学まで急坂を二十分ばかり登らねばならない。
気候のいいこの季節でも、大学に着けば、シャツが搾れるほどの汗をかく。
汗だくの状態で授業に出るわけにもいかず、おのずとタクシーを利用することになる。
雨ならなおさらだ。
少しでも早く行けば授業で使うプリントを大学で用意することもできるが、印刷機の前にはいつも長い列。
結局、自宅兼事務所でコピーして持参することになる。
結果、登校する学生たちと同じような時間帯に正門をくぐるのが常だ。
ようやくやってきたタクシーに乗り込もうとすると、
「先生、おはようございます」
と、いつもの声。
フウカだ。
今日も、華やかなワンピース姿。
「一緒にいいですか」
返事も聞かず、フワフワの裾を気にしながら、乗り込んでくる。
「学生バス、雨でしょ」
学生達は専用の送迎バスを利用して、汗をかくのを回避している。
が、あいにくの雨。バス停まで傘をさす必要がある。それに混む。
お金に余裕のある学生にはタクシーを利用する者も多い。
フウカはその口だが、まれにこういうこともある。
「今日の部活なんですけど」
フウカは、今日の部活はできるだけ参加して欲しいというメッセージを部員に送信していた。
「例の調査、進め方を話し合いたいと思って」
先日の日曜日、ルリイアの部屋で始めたケイキちゃん殺人事件の調査。
残念ながら、自然なことだが、あの夜、進展はなかった。
スタートはまずまず。
メンバーの意気込みも感じられたものの、いざ具体的に情報交換しようにも、互いに遠慮があるのか、発言はまばら。
じゃ作戦は? という話にも、積極的に意見を出す者はいなかった。
フウカは粘り強く、会を実りあるものにしようと努力していたが、半時間も経たぬうちに散会を決めたのだった。




