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78 最初の授業で顔と名が一致するようになった学生

 ノーウェとの心に残る思い出の数々。

 鮮明に覚えていることはたくさんある。


 例えば。


 四年前。

 ノーウェに出会った最初の授業。

 教室の最前列に座っていた二年生のノーウェ。

 その第一印象。

 大胆な花柄のワンピースの胸元を大きく開け、愛らしいとしか言いようのない笑顔で待ち構えていた。

 その最初の授業で顔と名が一致するようになった学生はノーウェだけ。


 三年前。

 四限の授業後、大学の正門脇、守衛室の横で待ってくれていた。

 誰かとではなく、一人で。

 周りの目も気にすることなく。


 二年半前。

 彼女がサークルに入部し、初めて連れて来た京都競馬場。

 馬券を買うことより、お茶をしたり、大型遊具の奥の林を散策したり。

 そういや、あの頃はまだ団体行動だった。何レースかパスし、遊んだりもした。フワフワドームで滑りっこして警備員に叱られたこともあった。


 二年前、学食で。

 定食のプレートを持って席探し。

 大きく手を振って、隣に座るよう誘ってくれた。

 アジフライと唐揚げを半分こ。そんなシェア、後にも先にもノーウェだけ。


 一年半前。

 卒業謝恩会。ドレスアップしたノーウェ。

 一緒に写真を撮ろうと付きまとわれた。

 壇上で集合写真を撮るときには、私をステージにエスコートして、と腕を絡ませてきた。

 思い出の学園生活のムービー放映、涙ぐむノーウェと白ワインで乾杯。



 そんなノーウェが死んだ……。



 またあの日のことを思い出した。


 あの事故の直前、俺は現場のごく近くにいた。


 昼食前の散歩に、普段あまり足を向けることのない競馬場北端部に広がる厩舎群を眺めに行ったのだ。

 その帰り、人けのないエレベーターを使った。

 二階でエレベーターを降り、スタンドの客席に向かったのだが、その時、小さな悲鳴を聞いたような気がした。


 振り返ってみたと思う。が、誰もいなかったと思う。

 エレベーター横に置かれたベルト式伸縮柵にスタッフオンリーの札が揺れているだけ、だったと思う。


 その数分後に知ったこと。

 そこがまさにノーウェが転落死した現場だった。

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