21 おはぎを二つ
と、ランがしゃがみこんだ。
見ると、その足元、小さな平石が三叉路に接するように据わっていた。
その上に白い小皿。
ランは、さっき買ったおはぎを二つ置いた。
むっ!
唐突に笹薮の中から、にゅっと黒い手が突き出され、おはぎを掴むやいなや引き込められた。
一瞬の出来事だった。
さすがに、背筋がわなないた。
ランは何食わぬ顔で立ち上がると、さらに解説しようとしてくれる。
「ここはね。なんていうかな。ま、簡単に言うと、妖が作り出した特殊な道」
人間が住む世界とは別に妖が住む世界がある。
一か所だけ。
狭くはないけど、広くもない。
それこそ山もあるし畑もある。海もあるし川もある。
でも、いわゆる開発とか、されてないわけ。
延々と続く森、とか、どこまで行っても山、山、山とかね。
境界っていう概念もないのよね。
困るでしょ、迷ってしまって。
「だから、あいだみちっていう妖が便宜を図ってくれている。一時的に道を作って見せてくれる。さっきのおはぎは、そのお礼」
なんとも珍妙な話になってきたものだ。
「普通、妖は誰でも、お礼さえ持参していれば通れる。別におはぎとかじゃなくてもいい。妖の世界で通じるお金でもね。実際は何でもいいの。お礼という形であればね。距離に応じてたくさんしなくちゃいけないけど」
「あれか。貝殻とか」
「それ、いつの話? 石器時代じゃあるまいし。お金といったら、ちゃんとしたお札とコイン」
「そんなものがあるのか」
「今度、見せてあげる」
「それはそれは。でも、妖怪じゃないオレはどうなる? お金ももちろん持ってないぞ」
「心配なし」
「オマエと一緒だから?」
「それもあるけど、ミリッサは特別な人だから」
うむ?
特別な人?
どこかで聞いたような台詞。
そうだ。
ハルニナだ。いや、メイメイだったか。
あれだ。
PH。
パーフェクト・ヒューマン。
「それって」
「私が何も知らないと思ってる?」
「いや」
「じゃ、そこんところは仲間内で話し合ってもらうとして、私は私の仕事を」
「仕事?」
「今からね」




