20 あいだみち
庭の小径、という印象は正しくはなかった。
いつしか、山中である。
しかも、かなり深い渓谷沿いの径。
土は湿り気を帯び、うっそうと茂る木々の下は背丈を優に超えるクマザサが視界を遮っている。
見上げると、星々が瞬き、かろうじてここが異次元などではないことを示していた。
いや、仮想現実の世界か。
そんなはずはない。直接入り込めるそんな技術はまだ存在しない。
径は草々に埋もれ、消え入りそうなほど頼りないが、それでもしっかり踏み固められてあるようで、歩きにくくはない。
静かだ。
夜だから、だろうか。
鳥の声はおろか、虫の羽音も、葉擦れの音さえもない。
聞こえるのは、己の靴音と息づかいのみ。
前を行くランの足音さえ聞こえない。
顔にかかるクマザサを払い除けつつ歩くこと、十分ほど。
少しだけ視界の開けたところに出た。
三叉路のようだ。
「ここまで来れば一安心」
「安心、って、どこが?」
「ごめん。強引すぎた? ちょっとだけ説明するね」
間径。
あいだみち、なのだという。
妖怪が使う抜け道。
先ほどの一軒家のように、日本中にその出入口はあるという。
「梅田阪急の近くにあるのはあそこだけ。でも、阪神間だけでも百はあるよ。日本全国となればそれこそ何万もある」
ちなみに、とランがニッとした。
「学校の近くにもあるし、京都競馬場の近くにも」
時々、遅刻しそうになった時に使うのだという。
思わず笑った。
全く恐怖感はなかった。
恐怖感のないことが不思議だった。
「いつもあいている口もあるし、さっきみたいに鍵のかかってる口もある」
「へええっ。世の中、知らないこと、だらけ」




