御前会議
ゲーベンが左遷された一週間後、ラミリオン御前会議室。
提出された報告書を基に、定例の会議が行われる。
「では、これより御前会議を行う」
玉座に座りながら、皇帝エンライトが会議の始まりを告げる。
「まず、余から伝えることがある。
先月、ガンダル王国に親善に向かわせた第一魔導艦隊及び第四十五魔道巡洋艦隊がすべて撃沈された」
「な!?」
エンライトの発言に、出席していた皇族や各行政機関を率いる大臣が驚く。
「このことはまだ極秘だ。
一言でも口外したものは三族極刑に処す」
皇帝の厳罰発言に、場の空気がさらに重くなる。
「ホレーショ、説明を」
「は!」
海軍大臣であるホレーショが起立する。
勲章を身にまとった、立派な姿の男。
「ゲーベンの報告書によりますれば、去年の十二月三十一日の朝、三百機を超える航空機を使用した奇襲攻撃に遭遇。
アリゾナ以下、停泊していた魔道艦隊は全て撃沈されました」
「はかを言え!重鈍な飛空艇に新型戦艦が沈められたというのか!?」
自分たちの常識を超えた報告に、思わず立ち上がり声を荒らげる出席者達。
「静粛に、騒がしいだけの者はこの場には不要だ」
「....失礼致しました」
皇帝の叱責に出席者が座り込む。
「収集した情報によりますれば、鳥のような形状の航空機が飛竜よりも速いスピードで襲来、装備していた爆弾を次々に投下して行ったとの事です」
「一体、どこの勢力だ?」
「それも調べがついております。
ランデル国、新世界の国家です」
「どんな国だ?」
外務大臣であるイットケルが反応する。
「...詳細は不明です。
しかし、現在フォセストリア大陸のワグス港がかの勢力によって占領されており、諜報員を派遣して調査させております。
近々ご報告できるかと」
「そうか、ご苦労」
「わかっているとは思うが、これは明確な敵対行為だ。
誇りある、偉大で神聖なヴァルディア帝国に対する、これ以上ない侮辱である」
「は!直ちに兵を動員し報復攻撃の準備を行います!」
海軍大臣ホレーショ、陸軍大臣グランドが皇帝に対して宣告する。
そういうと、今度はザラードに目を向ける。
「ザラード、ガンダル王国に対しての報告を」
「承知致しました」
父の言葉に従い、ザラードが立ち上がる。
「本事案を受け、勝手ながら臨時で外交を担当させていただきました」
各省庁のトップよりも上に立つ皇族。
その特権を使用して行った外交について、報告を行う。
「―――以上のことから、ガンダル王国は当国との要求を全て受け入れ、全面協力するとの事です」
「よろしい。
次にジャスパー、例の件についての報告を」
「仰せのままに」
仰々しい仕草で敬意を払い立ち上がる魔道大臣のジャスパー
悪魔族の若い風貌男であり、角と黒い一対の翼が生えている。
「ではこれより、フォセストリア大陸及びヴァルディア大陸の異世界転移現象について、調査報告を始めさせていただきます。
この度発生いたしました大陸転移現象について、現象が発生したとされる日に観測史上類を見ない魔力の放出をリュムナ諸島にて観測いたしました。
魔力の残滓を調査したところ、信じ難いことではありますが第五段階の魔法が使用されたと結論いたしました」
「ジャスパー、本気でそれをこの場で主張するのか?
撤回するのならば今の内だ」
警告するザラード。
おとぎ話の中でのみ語られる第五段階の魔法。
異世界に干渉できる力を持つとされ、術式こそは五千年前の古文書に記されているものの、あまりにも非現実的な手順を行使する必要があることから、実現不可能とされてきた。
「撤回は致しません。
この場において魔法省として正式に皇帝陛下に上奏いたします」
毅然と答えるジャスパー。
「相分かった、議事録に記せ」
「仰せのままに」
書記官がジャスパーの発言を御前会議の議事録に記すと、ザラードはエンライトに顔を向ける。
「大陸転移現象が第五段階魔法によるものだと分かったとして、父君はどの様に今のヴァルディアを導くべきか、そのお考えを聞かせていただけますか?」
「うむ」
息子に促され、エンライトがゆっくりと立ち上がる。
「余が思うに、今こそが動き出すべき時である」
皇帝の発言に、出席者たちは「おお!」とどよめく。
「新世界に転移した今、帝国の総力をもってその全てを手中に収める。
すなわち、新世界への征服を宣言する」
会議場に響き渡る皇帝エンライトの宣言。
異論を述べられるものはだれ一人なく、そのまま会議はお開きとなる。




