拝謁
高速魔導列車に乗ること三時間。
列車は終点である首都のエンデュミオンに停車する。
ヴァルディア大陸の中央、上空三千メートルに浮かぶ浮遊島に築かれた都市。
八十万平方キロメートルの島を五十メートルはある城壁要塞で囲み、通行手段は魔導列車か飛空艇などの航空ルートのみ。
住民は特権を持った上級国民のみで構成され、帝国中のあらゆる財産の三割が集中する。
カバンを持ってヴァ―ゼリアと共に列車を降りる。
ホームには帝都にふさわしい姿と佇まいをした紳士淑女たち。
下界で見る貧民の姿はかけらもない。
エスカレータを降り、駅の一階に降り立って改札を出ると、駅前に止まっていたタクシーに乗車。
目的地である皇帝の居城へと走らせる。
帝都の中央にそびえる山の頂に築かれた巨城、ラミリオン。
帝都の核となるエネルギーを供給する超巨大な魔石が城内に納められ、皇帝が直々に管理している。
城自体も厳重な守りが施され、アリゾナや潜水艦とは比べ物にならないほど分厚いマジックシールドに覆われている。
「テーエウ海軍提督のゲーベンです、陛下に謁見を願いたい」
「少々お待ちください」
門番長に待たされることしばらく、門が開き、二人はラミリオンの控室に通される。
「いかん、緊張してきた」
皇帝との謁見を目前に、弱音をポツリと漏らすゲーベン。
対するヴァ―ゼリアはエサルカに、ゲスト用に出されたお菓子を与えている。
それから約一時間後、従者長に案内されて謁見の間に通される。
大きな扉が左右に内側に開き、奥に玉座に座る皇帝エンライト。
白の衣服を身にまとい、高純度の魔石をはめ込んだ杖を持っている。
「皇帝陛下にお目に掛かれて光栄です。
テーエウ海軍基地提督、ゲーベンです」
「くるしゅうない、用件を述べよ」
椅子に座りながら、本題を促す。
「は、先刻ガンダル王国に派遣した魔導艦隊についての、緊急の報告と謝罪に参りました」
そういうと、ファイルを近衛騎士長を通して皇帝に提出する。
「…そうか」
一通り目を通して出た、たった三文字の言葉。
それが、この場のすべてを支配する。
「後任にはヴァーゼリア中将を考えております。
何卒、ご一考をお願い申し上げます」
「わかった。
ゲーベン、今までご苦労だった。
追って沙汰するゆえ、それまで指揮を執り続けろ」
「は、ありがたき幸せでございます」
即日極刑を免れたことに安堵するゲーベン。
後日、ゲーベンは僻地の基地へと左遷され、ヴァ―ゼリアがテーエウ海軍基地の提督に就任する。




