魔法帝国
セイバスト海、海底。
深い闇に包まれた深海を、一隻の潜水艦が進む。
周囲にはマジックシールドが展開され、海中にうごめくモンスターの攻撃を難なく弾く。
「いやはや、今回は参りましたね」
皇族専用の部屋で、仮面を外したザラードはチェスを打ちながらゲーベンと会話する。
「笑い事じゃありませんよ、奇襲とはいえ、まさか新型の魔導戦艦をこうもたやすく沈められるとは…」
白のポーンを置き、ため息をつくゲーベン。
報告によれば無数の航空機によって沈められたとか。
もしかしたら、これからの時代は空なのかもしれませんね」
「お戯れを、それなら私たち戦艦屋は廃業ですよ」
大艦巨砲主義者のゲーベンは、苦笑いしながら次の駒を打つ。
ヴァルディア帝国西方、テーエウ港。
帝国民の歓声を背に、フォセストリア大陸へと向かった無数の魔導艦隊。
しかし、一隻たりとも戻ることはなく、かわりにザラードたちを乗せた魔導潜水艦が静かに浮上する。
「おかえりなさいませ殿下、提督。よくぞご無事で」
一行を軍港で出迎える、テーエウ海軍基地の司令長官代理であるヴァーゼリア中将。
サファイアのような青い目をした、女性。
肩には彼女の使い魔である氷龍エサルカが止まっている。
「無事ではないぞ、ヴァ―ゼリア。
魔導艦隊はすべて沈み、クルーもほとんどが戦死した」
「心中、お察しします」
そういうと、ザラードは海軍と別れて皇族専用の護衛隊に守られてテーエウにある駅に向かう。
皇族専用列車、ランドエスぺランド号。
ヴァルディアの象徴であるユニコーンのレリーフが客車に飾られており、皇族を守るべく前後には陸軍特務部隊による五百人の護衛と機関銃や対竜砲などの重装備の付随車が連結されている。
「さて、父上にどう説明いたしましょうか」
ガタンゴトンと音を立てて車両が揺れる中、ガンダルで起きた戦争と派遣した魔導艦隊の顛末が記された報告書を棚に置くと、ザラードは紅茶を啜る。
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「・・・・・」
テーエウ海軍基地の提督室。
主力海軍を統括するゲーベンは今回の件における始末書を書く。
皇帝直々の命の下で設計された新型の魔導戦艦。
帝国の誇りであり、切り札であったはずのそれをクルーごと外国の海に沈め、自分はのうのうと生きて帰ってきた。
厳罰は免れないだろう。
「後任には君を推薦しておく、後を頼んだ」
「承知いたしました」
始末書を書き終えると、皇帝に上奏すべくゲーベンはカバンにしまってヴァーゼリアと共に基地を出て駅へと向かう。
上級国民用の特等列車。
帝都等の主要都市のみを繋ぐ高速魔導列車であり、庶民の使う機関車とは違う専用の路線を通る。
改札を通り、一号車に乗車。
定刻通り、魔導列車は線路を走りだす。




