南進
「空襲計画を変更する」
翌日の総督府、臨時海軍基地。
交渉の結果を聞いたエルは作戦方針をがらりと変える。
まずは主力を南進させ、旧レイリア領の港をすべて制圧。
そこから各港にて陸軍を揚陸し、レイリア首都サンディアおよび兵站の要地を中心に制圧する。
「ヴァルディアはどうされますか?」
「第一海軍に増援を要請した。
海上での戦闘は彼らに任せ、我々第二海軍はフォセストリア大陸における優位性の確保する」
ガロンの問いにそうはっきりと答えると、隣席していたクロウに顔を向ける。
「クロウ殿、申し訳ないが再び王国との交渉を頼みたい。
内容は『エヴァルカを中立都市として扱い、エヴァルカにおける戦闘行為を一切禁止および我々はエヴァルカを越えて王都に攻め込まないこと、エヴァルカを交渉の拠点とすること、そしていつでも和平交渉を受け入れる用意がある』という旨を伝えてほしい」
「承知いたしました、ではいってまいります」
再びエヴァルカに向かうクロウ。
総督を通して会談を申し入れる。
「―――とのことです」
「そうですか」
目の前に置かれた、『エヴァルカより先には攻め込まない』などの都合のよすぎる内容の外交文書を訝しむハルトマン。
「これを信じるに足る根拠は?」
「現在、当軍は南進に戦略を変更いたしました。
交渉ではなく、武力によって旧レイリア領を奪還いたします。
手始めにセリアをはじめとする港を占領、そこから陸軍を揚陸いたします。
表向きは当国との戦争状態、ヴァルディアの提示する条件もクリアできましょう。
詳しくはこちらに」
すっと、作戦計画書をテーブルの上に差し出す。
「なるほど、ここまで教えていただけるとは…
…内容が事実であれば、信じるに値しましょう。」
「真偽はすぐにでもわかります。
して、結論はいかに?」
「…そうですね…少しお願いを聞いていただけませんか?」
「お願いですか?」
「ええ、実は北方の領土にドラゴンが生息しておりましてね。
レイリアを降した後に我々はそちらの討伐ないし捕獲を行う予定でした。
貴国にそれの御協力をお願いしたい。
もちろん、極秘裏に」
「そのドラゴンとは、これのことですかな?」
すっと差し出される一枚の写真。
パーラ湾で特別航空作戦隊がとらえた、魔龍の姿。
「いえ、これではありませんね。
詳しくは、後日お伝えいたします」




