豪商人オルラン
王城大会議室。
「そなたたちの言い分はよくわかった、カレッサに対する極刑は見送り、代わりに将軍職のはく奪上で前線指揮官に降格とする」
国王の沙汰が、出席者全員に伝達される。
これまでの功績を認められ、極刑だけは辛うじて免れる判決が下された。
「さて、次の議題に移ろう、アルバーニ」
「はい、まずはこちらをご覧ください」
机の上に広げられる地図。
そこにはガンダル王国領の現状が記されている。
「報告によれば、侵略軍はエヴァルカまで侵攻。
内部に駐屯地を築きあげている様子です」
宰相の発言に、出席者たちが動揺の声を上げる。
「待ってください、エヴァルカは王都防衛の要。
絶対防衛圏です。
それが、もう落ちたというのですか?!」
「報告によればセントリオ商会と手を組んで懐柔したそうです」
アルバーニの報告に絶句する出席者たち。
「どういうことだ!?
これは王国に対する裏切り行為ではないか!?」
激怒する出席者。
「直ちにこの場へ召喚しろ!
事の次第を問いただせ!」
「静粛に!」
響く怒号を一喝で沈めるアレクサンドル。
「オルランを呼べ、それとアルバーニ。
王都を移す用意を」
「承知いたしました」
=====
三日後、大会議室にオルランが喚問される。
三方向には王都の幕僚たちが座っており、全員がオルランを睨んでいる。
「オルラン氏、どういうことか説明いただけますかな?」
宰相であるアルバーニがオルランに詰問する。
「貴商会は我々ガンダル王国軍に対して兵站の支援を行うという契約を締結していたはずです。
にもかかわらず、侵略軍に対して協力するなど、立派な契約違反です!」
バンと、契約書がオルランの目の前にたたきつけられる。
商会と王国の印が記された、正式な書類。
しかし、きょとんとした顔で不思議そうにオルランは言葉を返す。
「これは奇妙なことをおっしゃいます。
貴国との契約は、すでに満了しているはずですが?」
「なに!?」
まさかの返答に、立ち上がるアルバーニ。
「宰相」
「…続けなさい」
隣席していたハゲ髭の副宰相にたしなめられ、コホンと咳払いして着席、続きを促す。
「まず、契約書ですがこれは『戦争が終了するまで』と書かれております」
「それがどうした、今まさに戦時中ではないか!?」
「アルバーニ宰相、国王陛下の宣言をお忘れですかな?」
「…まさか」
「先日のパレードにおいて、陛下はレイリア王国との戦争において勝利宣言を行われました。
すなわち、戦争が終了したということを陛下自らが認めたということでございます」
「だ、だが報告によればあの時にはすでにパーラ湾とワグス港が…っ!!!」
とある事実に気が付き、発言が止まる。
「左様、私が奇襲に気が付いたのは勝利宣言の翌日。
つまり、契約が終了した後にございます。
その後に外国軍と契約を結ぼうとも、問題はありません」
「し、しかし貴商会はこれまでにも当国と―――」
「もちろん、貴国とも取引を続けますよ。
さて、何をお求めですかな?」




