激震
昼、王都は震撼した。
受勲式を行った英雄広場前に現れた国王が、集まった国民たちに対してパーラ湾とワグス港が、謎の勢力による空襲で壊滅した事実を公表。
戦勝と新年に浮かれていた国民達は思考が一瞬停止する。
全ての時間が停止したと錯覚するほどの静寂。
それはやがて動揺と混乱となり、燎原の火のようにとめどなく広がってゆく。
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「これが、本国からの意思です」
首都に建てられたヴァルディア大使館。
外交官であるエリザベートに代わり、皇族であるザラードが王国の外交官であるマールにファイルを手渡す。
1・ヴァルディア帝国はランデル国及びその同盟国相手に宣戦を布告。
ガンダル王国は戦争終結まで全面協力する。
2・ガンダル王国はヴァルディア帝国に対して十年間、相場の七割の値段で輸出を行う。
3・パーラ湾に対する攻撃を指揮、実行したものをすべて捕らえ、ヴァルディア帝国に引き渡す。
「……」
無理難題ともいえる条項にマールが沈黙する。
これを呑めば貿易赤字は確実なうえ、強国同士の戦争に巻き込まれて国土がすり減っていくのは確実である。
しかし、かといって要求を弾けば敵対状態となり、侵略蹂躙されるのは目に見えている。
「これらの条件を呑まない限り、帝国は今後の貴国との付き合い方を考え直さざるを得ません」
「…国王陛下にお伝えいたします」
一礼して退室するマール。
その表情は死人の様である。
「伯父上様、これでよろしいのですか?」
同席していたローザリアがそう問いかける。
金髪の女性。
魔導騎士長の肩書を持ち、使節団の護衛を任されていた。
「友好国だったとはいえ、さすがにあの損害は目こぼしできませんからね。
奇襲とはいえ、魔導戦艦を沈められた父上のお怒りを鎮めるにはこれが最低限でしょう」
…ゲーベン」
「は、ここに」
「召集に応えるゲーベン」
「帰還の手筈はどうなっておりますか?」
「は、魔導潜水艦の要請を行いました」
「よろしい。王都に戦火が迫る今、さっさと退去したいところですな」
仮面を脱ぎ、ザラードはシルクの布で顔を拭く。




