火事場泥棒
二日の深夜、静寂を取り戻したパーラ湾にセイレーンが浮上する。
周囲に人の姿は無く、軍港や貨物倉庫はほとんどがぶち壊されている。
「派手にやってくれたね」
セイレーンの甲板、望遠鏡で湾の壊滅的な様子を眺めながら、ラミアが感嘆する。
奇襲攻撃の前日となる十二月三十日から湾の海底に潜伏していたセイレーン。
攻撃の一部始終を潜望鏡やソナー等の機器を通して観測、データを収集していた。
「よし、手始めにあの艦を持っていくぞ」
大破したアリゾナへと乗り込むと、艦内の探索を開始。
「ここは、弾薬庫か」
アリゾナに積み込まれた色とりどりの魔鉱石砲弾。
奇しくもセイレーンの副砲と同じ口径の砲弾であり、これ幸いと奪取を試みる。
次いで向かったのは主砲弾の格納庫。
ランデル国最大の艦砲、四十センチ砲の倍の八十センチ砲の爆縮魔石砲弾が百発積み込まれており、弾着時の威力は百万の兵を地上から抹消させるほど。
「よし、工兵を呼べ。
壁に穴をあけてこいつを持ち出す」
機材を使って損傷した装甲を破壊して主砲弾を運び出すクルー。
80センチの砲弾の重量は相当なもので、セイレーンに搭載されている弾薬搬入用の大型クレーンを用いて一発ずつ慎重に運び出すと、主砲である800mmレールキャノンにその一発を装填、残りを専用の弾薬庫に貯蔵する。
その後、ラミアたちは艦長室など主要部を探索。
退艦時の混乱で処分し損なった機密書類を奪取して帰艦すると、セイレーンにアリゾナを牽引させて湾を離れて沖合へと曳航。
十キロメートル分の距離を取ると格納されているレールキャノンを船首からせり出して展開。
新型砲弾の射撃試験と称して直接照準射撃による砲撃体制に移行すると、同時に専用の発電機を稼働させて荷電を開始する。
艦内に響き渡る発電機の大きな駆動音。
荷電割合を示す機械式カウンターの数字が回転し、徐々に大きくなっていく。
七分ほどで荷電率が五十パーセントに到達した段階で安全装置が作動、射撃フェーズに強制的に移行する。
「撃ちー方ーはじめ!」
艦長ラミアの命令が飛ぶと、レールキャノンが砲撃。
海を割るような衝撃波を伴って撃ちだされた七トンの砲弾が音速の三倍で飛翔、十秒足らずで弾着すると、青い閃光を伴った巨大な爆発を引き起こす。
美しさすら感じる、爆発と閃光。
巨大なキノコ雲が立ち上る様子を、カンナは茫然とした様子で眺める。




