隠蔽
一月一日、午前零時五分。
王都ゲルゲン。
パーラ湾、ワグス湾の損害状況を伝える魔法通信の内容が、カレッサの下に届けられる。
「なんだと…!?
間違いではないのか!?」
人払いを済ませた自室で副官のギザミから手渡された文章を何度も読み返し、状況を理解するにつれて顔色が青ざめていく。
前日の朝にもたらされた、パーラ湾とワグス港が攻撃を受けたという急報。
緊急出動させた直属の精鋭部隊がパーラ湾に急行した頃には敵攻撃部隊は撤退、ワグス港も占領されていた。
おまけに捕えていたセストリアも行方不明。
「将軍、いかがしますか!?」
精査された情報に頭を抱えるカレッサ。
「このことを知っているのは?」
現場に急行した部隊と、通信兵と私たちだけです。
「よし、まずは緘口令を敷こう。
陛下はもちろん、ヴァルディアの使節にこのことを知られたら外交関係の破綻もあり得る。
我々どころか、一族郎党極刑もおかしくない」
「しかし、この被害状況は…」
どう見ても隠し切れない惨状に、場の空気が重く沈み込む。
「…今日中に家族を連れて王都を出てくれ。
これまでご苦労だった」
「…お世話になりました」
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午前八時、王城では盛大な戦勝パレードが開かれた。
パレードの先頭を進むアレクサンドル国王。
王国一の名馬に乗り、その後ろをカレッサ率いる精鋭兵が続く。
さらにその後ろには各部隊を指揮した将軍や軍師、そしてヴァルディアからゲストとしてやってきたザラードとゲーベンが国民たちの歓声を受けながら、英雄広場への道のりをゆっくりと、威風堂々と進む。
「.......」
パーラ湾とワグス港の現状を知らない国民達。
一目見ただけでも数万人が見物に訪れており、それがいつ怒りに代わるのかカレッサは気が気でない。
行進を続けること三時間。
一団は英雄広場に到達する。
湧き上がる歓声に包まれながら、下馬した王は特設の演説台にのぼり、国民たちに向けて演説を開始する。
「わが親愛なるガンダルの民たちよ!
此度の戦はついに我々の勝利に終わった。
レイリアはわが軍の勇猛さに屈し、豊穣の大地はわが王国のものとなった。
これで我が国は飢餓の危機を脱し、永久に栄えることになるだろう!」
両手を左右に開き、大仰な手ぶりで戦果を強調するアレクサンドル。
割れんばかりの歓声と王をたたえる声が四方八方から響き渡る。
「さて、それでは此度の戦における英雄を称えよう。
カレッサ、前へ!」
「は!」
内に燻る絶望を無理やり抑えながら、段を上がって王の前へ出ると、胸に太陽を象った勲章、太陽章が掛けられる。
「ついで、ブルータス!」
「は!」
掃討戦で名をあげた武将、ブルータスが登壇する。
かつてカンナを捕らえようと追いかけた男。
相手には逃げられてしまったが、それ以外の武勲が評価され受勲に至った。
それに続いて軍師アリウス、海軍提督キャンサー、竜騎士団長ドレイク。
そのすべてが胸に宝石付きの勲章が煌めいている。
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日の落ちたゲルゲン。
王城の舞踏会場や広大な庭園で新年と戦勝を祝う晩餐会が盛大に開かれる。
テーブルには豪華な料理が大量に盛り付けられ、特設のステージには大陸一の劇団を招いて豪華絢爛な演劇が披露される。
「いやはや、素晴らしいショーですね」
ワイングラス片手に演劇を観覧するオルラン。
今年の商売のプランを描きながら、高級な座席に座り、ブラウと第一夫人のローズに挟まれながらグラスを傾ける。
ふと、顔を向けると遠くに部下と会話するゴルドバーグの姿。
手紙を受けとるなり、慌てた様子で会場から出てゆく。
「…」
「どうされましたか?」
隣席するブラウが、オルランの様子を気に掛ける。
「ブラウ、付いて来なさい」
陽気な様子から一転、真剣な表情で離席する。
「ローズ、あなたはパーティを楽しんでいなさい。
ここからはお仕事の時間です」
「え、ええ。行ってらっしゃい」
困惑するローズを背に、オルランは海上を抜け出すと今動かせる飛空艇に乗り、空へと飛び立ってゆく。




