来訪
十二月二十九日。
パーラ湾レイクスコ城。
朝を告げる鐘の音が、厳かに響き渡る。
「…」
ベッドの上で起床するセストリア。
騎士であった彼女へのカレッサの敬意として、牢屋を城兵に清掃させ「その時」が来るまでちゃんとした生活ができるように、城内に置かれてあった最低限の家具まで用意された。
用意された水で顔を洗い、食事をとると、北方に体を向けて散って言った仲間たちに哀悼の意を捧げる。
(あと二日…)
格子窓から、空を見上げる。
もし、向こうの世界でフォリエ達に会えたら、まずは何て言おうか?
ごめんなさい?私を殴ってくれ?許してくれ?
いろいろな言葉が浮かんでくるが、自分で納得のいくものが出てこない。
王国に無謀な戦いを挑もうとし、拠点を作ろうとしてミノタウロスの縄張りを侵して仲間が殲滅され、挙句の果てに心折れて敵国の、それも新兵の少女に投降を申し出た。
間違いなく、フォリエ達は激怒しているだろう。
水平線の彼方より、巨大な軍艦がこちらに向かってやってくる。
ヴァルディア帝国の艦隊。
見たことのない外見の巨大な艦艇が、第四十五魔導巡洋艦隊を引き連れてアルト軍港に入港する。
「はじめから、私たちに…レイリアに勝ち目はなかったのか…」
革新的な装備に包まれた千軍万馬の大軍、魔龍を従えた竜騎士、第四段階の魔法技術を操る同盟国。
対するレイリア軍は伝統的という名の古い装備。
指揮を執る将軍こそは歴戦ではあったが、それでも装備の絶対的な差を覆すには至らなかった。
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アルト港。
提督のキャンサーをはじめ、副提督のオズワルドや軍楽隊、海軍の将兵が正装を纏ってヴァルディアの海軍を出迎える。
港には両国の国旗が誇らしくはためき、軍楽隊の演奏が港中に鳴り響く。
アリゾナのタラップからザラードとゲーベンを先頭に、側近の海軍士官が降り立つ。
「ようこそいらっしゃいました。
王国海軍の代表として、快く歓迎いたします」
「うむ、苦しゅうない。楽にせよ」
きわめて丁寧に接するキャンサーに対し、楽にしろと返すザラード。
「ザラード将軍のお心遣い、感謝いたします」
キャンサーを先頭に、海軍基地へと向かう一行。
オズワルドにアルト軍港を任せて基地内に停泊させてある飛空艇に乗り込むと、王都へ向かって離陸する。
「いやぁ、壮観ですな」
ゲーベンと一緒にワインを嗜みながら、眼下のパーラ湾を眺めるザラード。
港に停泊するあらゆる艦艇よりも大きく、存在感を放つアリゾナ。
ありったけの国家予算と第四段階の魔法技術をつぎ込んで建造、就役の際には同盟国の要人を招いて盛大な観艦式も行った。
まさに国家の誇りであり、海軍の輝く未来を象徴している。




