ろくでなし
「これでが今回のリストだ」
セイレーンに積まれた略奪品と倉庫の物資を運ぶ作業員たちを背に、取引のリストをギオに見せる。
「…魔鉱石か。
例の大陸の代物か?」
聞いた事のない物品が記されているをリストを手に、そう問いかける。
「ああ、そうさ」
そう言って手渡される水色に輝くこぶし大の鉱石。
「不思議な感触だな。
どう使う?」
「カンナ!」
「はい!」
弾薬箱を運んでいたことろを、ラミアに呼ばれて慌てて駆け付けるカンナ。
「こいつの使い方を教えてやってくれ」
「承知いたしました」
ラミアの命令を承諾して弾薬箱を地面に置いて魔鉱石を受け取ると、自身の体内に宿る魔力を流し込み、少量の水を生み出す。
「なるほど、これが魔法という奴か」
目の前の超常現象に動じることなく口を動かすギオ。
試しにカンナから受け取った魔鉱石を握って魔法を使うイメージをしてみるも、魔力を持たない彼では何も起こらない。
「面白い石だ。
ところで、そいつはセイレーンのクルーなのか?」
「もともとは交易船から奪った女なんだが、見込みがありそうでな、ジャックに教育させてる真っ最中だ」
「そうか。まあくじけるな。
潜水艦内では逃げ場がない。覚悟を決めろ」
カンナの目を見て言い放つギオ。
閉鎖的で逃げ場のない艦内。
厳しい教練に耐え切れず、絶望して自決する者がいまだに後を絶たない。
「ところで、最近何か動きはあったか?」
「ああ、大統領がフォセストリア大陸の戦争に軍事介入を決定した。
今月の末日にパーラ湾とワグス港を奇襲する予定らしい」
「なるほどな」
ギオの話から悪だくみをするラミア。
魚雷や食料品を始め、用意された物資の積み込み作業は翌日の深夜まで続いた。
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十二月二十六日
再び潜航を開始したセイレーンはパーラ湾へと向かう。
目的はランデル国のパーラ湾攻撃に便乗して物資を略奪するついでに、先日搭載された新型魚雷のテスト。
資料によれば、音響魚雷と呼ばれる代物であり、従来の直進するだけの魚雷とは違って艦艇などの音を感知、追尾可能な代物らしい。
魚雷発射管室ではグローリーの指揮の下、新型魚雷の装填作業が行われる。
艦内にある大掛かりな装置を作動させ、発射管に慎重に装填する。
「いいぞ、その時まで今の状態を維持しろ」
「はい!」
砲雷長の命令に、カンナを始めとするクルー達の返事が響く。
「カンナ、ちょっといいか?」
唐突にやってきたラミアに振り向くカンナ。
そのまま艦長室に向かい、二人対面する。
「知っての通り、あたしたちはこれからアンタの故郷を滅ぼしたガンダル王国軍を襲撃する。
まあ、襲撃と言っても火事場泥棒みたいな感じで大したことはできないがな」
「……」
攻撃計画に、沈黙するカンナ。
おもむろに口を開く。
「あの、あなた達はいったい何なんですか?
海賊の様でその割には軍の様に統制が取れていて…」
「あー。あたしたちはいわゆる懲罰部隊なんだよ」
「懲罰部隊…」
「あたしは上官に発砲、ジャックは行き過ぎた指導、グローリーはギャンブルに負けてやけになって弾薬庫に火を付けようとして有罪、主計科長のイシュワルは横領とろくでなしばかりさ。
まともなのは料理長とアンタくらいだ」
「…あなた達は、これからもこんなことを続けるのですか?」
「それしか道がねぇからな。
それとも、王女様があたしたちに居場所を提供してくれるかい?」
「それは…」
言葉に詰まるカンナ。
王女とはいえ、国が滅びた今は何の権力もない。




