転換
十二月二十一日。
副艦長による今日の教練を終えたカンナは、へとへとになりながらも食堂へと向かう。
ラオ料理長お手製の艦内料理。
食材自体は限られてはいるが、一流の調理技術で食事を作ってくれる。
「えっと、サラダ定食をお願いします」
菜食メインのエルフ族。
セイレーンのクルーになって食事を選べるようになってからも、カンナも例に漏れず菜食メインのメニューをオーダーする。
「野菜だけでなく肉を食え!
お前は草食動物か!?」
カンナの偏食に怒るジャック。
「え、いや、私たちエルフは生き物との共生を重んじ―――」
「ごちゃごちゃうるせぇ、強くなりたきゃ肉を食え!」
「は、はい!」
教育の末、ジャックがトラウマになったカンナ。
自然との共生を重んじるエルフ族の生きざまを無理やり捻じ曲げて、適当に肉料理をオーダー。
五分ほどでステーキが並べられる。
「い、いただきます」
エルフ族において禁忌とされる肉食。
ナイフとフォークを使って上品に切り分ける。
「ここは晩餐会の会場じゃねぇ、誰もマナーなんか気にしねぇ!」
そう言って優雅さの欠片もない荒い手つきでステーキをフォークで刺すと、そのまま持ち上げて食いちぎる。
肉汁がテーブルに飛び散り、対面のカンナが引く。
「早く食え、ぼさっとするな」
「は、はい!」
焦った手つきで肉を切り分けると、口元を汚しながらも食事を口に運ぶ。
「…美味しい」
初めて食べる牛肉の味。
禁忌とわかっていながらも、二口三口と食べ進めていく。
「ちゃんと食えるじゃねぇか」
カンナの食事を見ながら、ジャックはジョッキに入れた炭酸飲料を口に入れる。
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「艦長、これが今回のリストです」
主計科長のイシュワルが、取引のリストをまとめて提出する。
商船から略奪した物品の数々。
その中にカンナの名前は無い。
「よし、戻るぞ、舵を切れ」
ラミアの指示に舵が大きく回り、セイレーンは進路を転換。
ヴァルディア領北方から、大陸間にあるリュムナ諸島を超え、ランデル国のあるアルガーノ大陸へと向かう。




